第九話 因縁の俳優対決
暗い通路を抜けると、眩い光が僕を照らした。
[赤コーナより、バズーカ南斗選手の入場です!]
大晦日の夜。超満員の新横浜ウルトラ・アリーナ。入場曲が流れると、観客席が騒然となった。
[うぁあ、この歓声、UWFのテーマです!]
この曲は、トレーナーの鷹田野武彦の所属していたプロレス団体のメインテーマの曲である。
[Uの遺伝子を引き継ぐ、このUWFのテーマに乗って入場してまいりました!]
その鷹田に先導されてリングへ向かう僕は、漆黒のガウンを纏い、背中には金色に輝く『南十字星』と『バズーカ砲』が刺繍されていた。
「バズーカ!南斗!バズーカ!南斗!」
「バズーカ!南斗!バズーカ!南斗!」
[この会場の熱気。凄まじいまでのバズーカ南斗コールが沸き起こっています]
先にリングに上がった富士丘ヒロシは強い眼力で、僕を見ているようだ。
[おっと、観客席には村二市監督の姿が見えます。その隣には、今年、AV女優として復活した五塔真姫さんもいるようだ]
「そうか、二人も見に来てくれたのか」
そんなこと思いながらもリング下まで、たどり着くと鷹田さんが、
「よし、あとは練習通りにやれば勝てる!」
バシンと、ぼくの背中を叩く。
「はい。やってやりますよ」
僕は鷹田に一礼して、颯爽とリングへ上がった。
[バズーカ南斗、Uの魂を背負い、今、リングに上がります]
「頑張れーっ、南斗!」
「バズーカ、頑張れ!」
観客の声援に応えるように、僕がリング上で右手を挙げると、アリーナ全体から拍手が響き渡る。
[凄まじいまでの拍手と歓声。バズーカ南斗を中心に、会場には、熱狂が渦巻いている!]
なんという盛り上がりだろう。これが大晦日の格闘技イベントというものか。
[皆さん、お待たせしました。本日のセミファイナル。バズーカ南斗、対、富士丘ヒロシの『因縁の俳優対決』が、今、始まろうとしています]
「頑張れ、バズーカ南斗!」
「富士丘ヒロシ、頑張れ!」
観客席からは、両者に対する声援が飛ぶ。
[青コーナー『武術の求道者』富士丘ヒロシ!]
右手を高々と挙げる富士丘は、真っ白な武術の道着を着用している。
[赤コーナ『最強のAV男優』バズーカ南斗!]
僕はガウンを脱ぎ捨て、さらに鍛え上げた肉体を披露した。
[これは、なんという筋肉だ。バズーカ南斗の体は一回り、大きくなっているように見えます]
そして、リング中央で睨み合う、僕と富士丘。レフリーが簡単にルールの注意点を話し、
カーン。
ゴングが鳴る。
[今、試合が始まったーッ!]
「わああああぁぁぁぁぁーっ!」
熱狂する観客。