第八話 超絶美人トレーナー
その日、テレビ局の上嶋プロデューサーから電話があった。その内容はマッチョ・ファイトバトルで僕に敗北した富士丘ヒロシが、
「どうしても、リベンジしたいと言っていまして」
「俺は受けて立つよ。今度は、どんな企画なの?」
「それが、大晦日の格闘技大会で、総合格闘技を」
「ええっ、富士丘さんはマジの試合をやるって?」
「そうなんですよ。でも、実現すれば、かなりの」
「盛り上がりになるだろうね。しかし、総合かあ」
僕は、しばらく思案したが結局は、この試合を受けることにした。
『富士丘ヒロシ、対、バズーカ南斗。大晦日に総合格闘技で激突!』
と、テレビで発表されると、世間は騒然となる。
「これは真面目にトレーニングしないと」
僕は都内の格闘技ジムに通うことにした。
そのジムには『超絶美人トレーナー』として有名な舞花が在籍している。だから僕は、このジムを選んだのだ。だが、
「私は厳しいですよ、覚悟はできてる?」
と、フィジカル・トレーナーの舞花は、バズーカ南斗の鍛え上げた肉体を、さらに一回り大きくするために、めちゃくちゃに追い込んできた。
「さあ、こから、もう一回、二回、三回!」
限界を超えてバーベルを挙げる僕を、叱咤激励しながらコーチングする舞花。彼女の引き締まった腹筋を横目に、僕はベンチプレスを挙げる。
しかし、この舞花という女性の肉体は、本当に綺麗だ。僕は何時も、トレーニングウェア姿の彼女に見とれていた。
そんな下心満載の僕だが、総合格闘技の技術は、元プロレスラーの鷹田野武彦からのシゴキを受け、たたき込まれる。
僕は毎日、リング上で鷹田との激しいスパーリングを続けた。鷹田は僕に向かって、こう言う。
「大晦日の試合の相手は、武術の求道者である富士丘ヒロシだ。どれだけトレーニグしても十分ということはない」
僕は漫画家の仕事をこなしながら、できる限りジムに通った。
こうして忙しい日々は、あっという間に過ぎ、大晦日の試合当日。
試合直前に、ちょとしたタイミングがあり控室で舞花と二人きりになる。
「舞花さん、今日まで、ありがとうごさいました」
「え、何、改まって南斗さん、緊張しているの?」
僕は、しばらくの沈黙の後、舞花の目を見つめてから、抱き寄せてキスをした。
「キャッ、な、南斗さん、何をするのよ」
「舞花さんゴメン、だけど愛しているよ」
しかし、その時、大会のスタッフが控室の外から声をかけてくる。
「バズーカ南斗さん。そろそろ試合時間です」
その声を聴いた僕は、クルリと舞花に背を向けて、そのまま彼女に言った。
「じゃ、行ってくる。今夜、勝ったら、その時は舞花さん、俺はホテルの部屋を用意しているから」
僕は、転生する前は病弱で陰キャ120%だった。だが今は、伝説の『AV男優』兼、人気『漫画家』だ。この試合に勝ち、必ず舞花を落としてやる!