第六話 大御所漫画家・火事原一揆
バズーカ南斗に転生した僕は、写真週刊誌『FIRE』に、人気女子アナ・佐藤あや子との『大人の関係』をスッパ抜かれた。
世間は『人気女子アナ』と『AV男優兼漫画家』のスキャンダルに騒然となったが、僕は、このスキャンダルを『漢の勲章』だと思っている。
しかし、それを許せない者がいた。大御所・漫画家の『火事原一揆』だ。
その日、僕が少し遅れて午後に漫画スタジオに出勤すると、チーフ・アシスタントが困惑した表情で報告する。
「先程、火事原先生から電話がありまして」
「わかったよ。後で、俺から電話するから」
「それが、なぜか、ご立腹の様子でしたよ」
火事原は以前から佐藤あや子のことを、お気に入りだと公言していた。だから、あや子との関係をスッパ抜かれた僕を許せないのだろう。
「まあ、とりあえず電話するよ」
と、チーフ・アシスタントに言ってから、僕は火事原の携帯電話へ連絡する。
「バズーカ南斗ですが、火事原先生ですか?」
「おう、南斗君か。聞きたいことがあるのだ」
「たぶん週刊誌の佐藤あや子の件でしょう?」
「そうだ。あの週刊誌の記事は事実なのか?」
僕はが正直に答えると、火事原は激怒して、
「このゲス野郎が、俺と決闘しろ!」
「えっ、何で決闘になるんですか?」
「クズを漫画界から排除するためだ」
結局、明日の夜明け前、多摩川の河川敷で、僕と火事原は決闘することになる。
「誰か、木刀を買ってきてくれ」
「先生、資料に使うのですか?」
「いや、明日の決闘用の武器だ」
アシスタントの一人が驚きながらも、僕の指示で木刀を買いに走る。火事原は日本刀の収集家だった。おそらく明日の決闘には、日本刀を携えて来るだろう。
この平成の時代に、日本刀で決闘を挑むとは狂気の沙汰だ。だが、その狂気が火事原の天才性の証でもある。
そして翌日の未明。指定場所へ向かうと、すでに火事原の姿があり、やはり日本刀を持参しているようだ。
僕は木刀を片手に、愛車のカウンタックのガルウイングを上げ、下車する。
「全く、そんなアホみたいな車に乗りおって」
「家事原先生。刀で斬れば刑務所行きですよ」
「うるさいボケカス。お前だけは叩き斬る!」
こうなってしまえば、仕方がない。僕は火事原との決闘に挑んだ。
「うりゃあーッ」
気合一閃。火事原が斬撃を放つ。
ガキンッ。
僕は、その刀を木刀で打ち払い、そのまま火事原の左の脚を、
バシンッ!
思いっきり、木刀で打ち抜いた。
「こ、この野郎が」
「勝負有りですね」
その場に崩れて動けない火事原。おそらくは大腿骨が骨折したのだろう。
「一応、救急車を呼びます」
携帯電話電話で119番に通報した後、僕は、その場からカウンタックで走り去った。