第三話 現代に甦ったヘラクレス
スポーツ・エンターテイメント番組マッチョ・ファイトバトルの準決勝は『懸垂サバイバル』という競技であった。
「先程の砲丸投げでは凄い記録がでましたが、懸垂は得意ですか?」
女子アナの佐藤あや子がマイクを向けたので、僕は素早く、彼女のお尻を触った。
「きゃっ、スケベ!」
あや子は、僕の背中をバシンと叩く。
転生前の令和の世の中なら『大炎上』するセクハラ行為だが、それが許されるのが、この平成時代だ。
「いいぞ〜っ、バズーカ南斗!」
「さすがAV男優。もっとやれ」
バズーカ南斗に転生した僕は、スタンドからの声援に手を振った。
そして準決勝の四名が鉄棒の前に横一列に並ぶ。
・アクション俳優・富士丘ヒロシ
・元野球選手・桑原貞茂
・体力系お笑い芸人・仲夜魔キン弍君
・AV男優兼漫画家・バズーカ南斗
この競技は、一分間の懸垂の回数を競う。
[選ばれし四人の強豪が横一列に並び、サバイバルマッチの準備は整った。これから一分間の地獄が始まる。生き残るのは誰だ]
実況担当の男性アナウンサーが、煽りで大会を盛り上げた。
[いよいよ準決勝。この懸垂サバイバルマッチでの上位二名が決勝へと進出します。つまり半分の二人が脱落]
ピィーッ。
競技開始のホイッスルが鳴り響き、四人が一斉に鉄棒を掴む。
[さあ、始まった。漢たちの意地と意地とのぶつかり合いだ!]
懸垂するだけの競技を男性アナウンサーが、それらしく実況した。
[半数が脱落という過酷な『懸垂サバイバルマッチ』生き残るのは誰なのか]
そんな実況を聞き流し、僕は懸垂を続ける。
[静かなる死闘。己の腕力だけを信じる孤独な戦い。生存率50パーセントの過激なデスマッチだ]
25、26、27、28、29、30、
[おーっと、バズーカ南斗が三十回を超えた。なんというハイペース。これはいい記録が出るか]
懸垂をする一分間は長い。腕が疲労して呼吸も乱れてきた。それでも僕は懸命に懸垂を繰り返す。
71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、
ビィィィーッ!
ここで修了のホイッスルが鳴る。と同時に、
[何ということだ!]
実況のアナウンサーが叫び声をあげだ。
[ここで『ギネス世界記録』が飛び出した!」
「えっ、誰だ?」
と、僕が思った瞬間に、
[バズーカ南斗、80回。今までのギネス世界記録を三回も上回る大大大記録。まるで『現在に甦ったヘラクレス』だーッ!]
「あっ、僕だったのか」
あまり実感はなかったが、スタンドから物凄い歓声が湧き上がる。
「ウオオオォォォォーッ!」
その声援に、僕は高く手を挙げて応えた。




