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第五話 夢

その日宿に帰ると事情を話すことにした。すると老婆はしわくちゃな顔をさらにしわくちゃにしながら笑った。


どうやら老婆はそのことが本当にうれしかったようで、宿もいくらでも泊っていいと言ってくれた。




翌朝、日の出を迎える時にシャルの家に行くともう外でシャルが待っていた。


相変わらず200歳とは思えない華奢な見た目をしている。


日の出がシャルのプラチナブロンドの髪の毛を照らし、まるで女神のように輝いて見えた。


おはようと軽くあいさつを交わす。


昨日言っていた今日から始まることに対しての内容を話す前に自分自身の紹介と知っておいてほしいことがあるとのことだ。


シャルは自分のことを説明し始めた。


「私はお前たちとは違う人種の人間であり、違う文化を持った人間だ」


シャルはガルディアン大陸出身である。ガルディアン大陸は今ここパドキニア大陸から反対側に位置している。


シャルはその内陸に暮らす少数民族らしい。少数民族ながらある国の中に自治区を与えられているそうだ。


自治区と言えば聞こえはいいが、いわば自治区を与えるという名目のもとその国から隔離しているに過ぎない。


事実、民族差別というものがあり、何百年と迫害を受けてきたらしい。


他にもさまざまな民族がいたようだが度重なる民族の違いや領土をめぐって起こった戦争でなくなっていったようだ。


「我々には独自の言語、文化がある」


シャルの民族は独自の言語『フィシャ』を話し、フィシャでは彼らはアルマ人という。


アルマとはフィシャで星の代弁者という意味である。


そのように呼ぶのは彼らの身体的特徴が関係している。


アルマの民はカイやシエルたちよりも脳細胞の数が非常に多く脳が発達しており、IQが非常に高い。


アルマの民たちの平均IQは210以上である。彼らには(おさ)がおり、男女問わず賢者が選ばれる。


長は『トゥフ』と呼ばれ、IQは300を優に超えるといわれている。


また平均寿命は300歳で、長生きをするものは500歳ほどまで生きられるのだという。


見た目は幼い。これは脳の活動や成長に栄養が取られ体の成長に栄養が回らないためである。


これらの理由、特に長寿により星で起こる出来事を長年知っているということから星の代弁者というのだという。


「我々はアルマ人であるが他民族からトイフェル人と呼ばれている。その訳を教える」


シャルは首を左右に振り、腰まで伸びたサラサラな髪を揺らし、髪を耳にかけた。


見てみると耳の形が二人のものと異なっている。耳たぶが小さく、細く下に伸びていた。


「私たちはこれらの身体的特徴からトイフェル人とよばれる。悪魔の民と」


彼らは何百年と受け入れられず、迫害を受け苦しんできた。その思いはどれほどのものだっただろうか。


しかしシャルには夢があるらしい。それはどの民族も平等に暮らせる世界を作ること。差別もなく民族による優劣もなく暮らせる社会を作ることだ。


自分たちと違う民族や文化を理解することは難しい。しかし、認めあうことはできる。シャルはそう信じている。


そのために世界を旅して少しでもその考えを広めたいのだという。


「それなら俺たちと旅しようぜ、三人で。絶対楽しいって」


カイは笑顔でまるで子供のように言った。


シャルは言われたことに驚いた。まさか誘われるとは思ってもいなかった。


シエルもカイがあまりにも無邪気にいうものだから少しひょっとする。


こんだけ素直に頼まれたら断ることはできんなとこぼれた笑顔で答えた。



「それよりもお前たちの旅の目的は何だ」


言われてみれば冒険に出るとは言ったことがあるけれど、具体的な目標は誰にも話したことがなかった。


「俺の目的は——、笑うなよ、すべての大陸真伝を見つけることだ」

「とても大きく出たな」シャルは言ったがあまり驚いてはいなかった。むしろ当たり前のような感じだ。

「大陸真伝?」シエルは何のことか全く見当もつかない様子だ。


シャルは知らないシエルのために説明をすることにした。


大陸真伝とはまだ今のように便利な飛行機やエンジンで動く船などがなかったころに書かれたものである。


この本の存在が明るみに出たのは今から約500年前。人類初の産業革命がおこり、人類の技術が一気に飛躍した頃、冒険家j.j.クックにより発見されたとされる。


その存在が明らかとなったのは彼が晩年に一生涯で見たものを載せたクック見聞録に書かれたとある文章。第6章479ページ、ここはあらゆる本の中で最も有名なページと言っても過言ではない。


(この話は墓までもっていくか悩んだがここに記すことにする。これは間違いなく私の人生で最も大きい功績となるのは確実である。私が五大陸を冒険していた頃、とある大陸で一冊の本を発見した。本の外見、場所など本に関わる詳細は伏せる。この理由は後に説明する。だた一つだけ伝えれること、それは世界のどの言語にも当てはまらない言語が使われていたことだ。私は冒険の傍ら歴史や言語、主に民族に関する研究を行っている。そこでとあることを発見した。その言語がある民族が使う言語に類似していることに気が付いたのだ。そのため私はかろうじて解読することができた。結論から言うと、私はふさわしくないということだけ言っておこう。それともう一つ。ここからは私の予想に過ぎないのだがこの本の兄弟本が他に四冊あり、各大陸にそれぞれ存在すると考える。率直に書くとこの本は途中で終わっている、正確な表現をすると意図的に途中で書くのをやめられている。もう少し正確に書くべきなのだろうがそれがいけないことだと私は知っている。そのため死を前にして後世の人に伝えることにした。偉大になるべき冒険者によって発見され、この本が望む使い方をされることを願いここに記す。)


この本が発売されてからというもの学会は大騒ぎだったらしい。それからというもの冒険者共通の夢が大陸真伝の発見となったと言っても過言ではない。


「500年見つかっていない伝説に挑むのか。今ではもう絵空事のように扱われているおとぎ話に」

「ああ。それも探しながら冒険を楽しむ」


シャルはあきれたかのように笑った。しかしどこか嬉しそうでもあった。

「バカはここにもいたか・・・」

小さくつぶやいた。


「実は私は古代技術を研究していてな、その古代技術が大陸真伝にも書かれているといわれている。私もおとぎ話を信じる馬鹿さ。」


古代技術とははるか昔に実在していた今よりもはるかに高度な文明を持った人たちが扱っていたとされる技術である。我々の生活を一気に飛躍させ豊かにさせるといわれるが、一方我々には大きすぎるものであり扱うことができないと懐疑的な意見を持つ人もいる。


シャルはそのため本当に扱えるものなのか、扱えるものが一部あるならそれを還元し生活に生かそうとそのために研究を続けている。


しかし古代技術はそれだけではなく古代兵器に関する技術も含まれている。そのため各国政府は有利な立ち位置になれるようにと抑止力として古代兵器を持つことを考えている国が多くある。そのためあらゆる国も大陸真伝を追っているのだ。


たった五冊の本が世界を巻き込む渦の中心にあるのだ。


「それでシエルの目的は?」


「俺は…二人みたいに大それたものじゃないが、人を追っている。俺にとって大切な人を追っているんだ。その傍らカイと一緒に冒険って感じだな」


シャルは聞いてそれも大切なことだと微笑み返した。


「それじゃあ、三人で冒険に出かけますか!」カイが元気よく言った。


「ちょっとまて。私は前置きを話しただけでまだ本題に入っていないぞ。前置きが長くなってすまない。これから本題に入る」




前回投稿した第五話の修正版です。物語の大半がとんでいました。発見が遅くなり申し訳ございません。引き続き楽しんでいただけると幸いです。

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