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第四話 シャーレ・ゾーイ

人の年齢を聞いて目の前で驚くのはとても失礼だということは二人も承知であるが、あまりの年の差とそんなに生きられるのかという驚きのほうが勝ってしまった。


「これだから人と会うのは嫌なんだ」


ゾーイは見た目から子ども扱いされることが多く、いや100%子ども扱いされている。また年齢を言ったら言ったで冗談はいいからとあしらわれてきた。


だが二人は案外あっさりと実年齢を信じたことに対してゾーイはほかの者たちと違う反応をされたことを少し意外だと思っていた。


それは二人が自分のところを訪れたことと何か関係しているはずだと思う。


驚いたままの二人に対して質問した。


「おい、二人ともなぜここを訪れた」


するとカイは鞄にしまっていたジエフから預かっていた手紙を渡し、付け加えて言った。


「実は俺のじいちゃんのジエフ=ロベルスターがあなたを頼れって言われてきたんだ」


ゾーイは黙ったまま手紙を受け取り中身をしばらく呼んでいた。


そして手紙を読むと地面に投げ捨て言った。


「帰れ。私にお前たちを手助けできることはない」


そう言って家に入りドアを閉めた。


「おい、どういうことだよ」


カイはドアを閉めるのを阻止しようとしたが遅かった。


「一体どうしたんだ」

「わからない」


そう言ってカイは投げ捨てられた手紙を拾い上げた。


(いったい何が書かれていたんだ、手紙のせい?)


手紙にはこのようなことが書かれていた。


カイのことをよろしく頼むことそれとシャーレ自身の夢をあきらめてほしくないこと。ざっとこのようなことが書かれていた。


カイは手紙を読むとシエルに渡した。

シエルも続いて手紙を読む。


「なるほどな。だがしかし何があったんだろうな」

「ああ。こればかしは話を聞かないと分かりそうにない」


カイは閉まったドアをノックして言った。


「シャーレさん、話を聞かせてくれないか」

「帰れ......言ったはずだお前たちの助けにはなれないと」


シャーレの意思はとても固かった。しかし意思の固さはカイも負けていない。

カイはこの人の苦しみを何とかしてあげたいと思っていた。


「じゃあ、また気持ちの整理がついたら話してくれよ、また明日も来るからな」


そう言ってカイは家を離れた。


「あの人の過去に何かあったのかもな」

「ああ、でも俺はあの人を助けたい。夢を追うものとして夢をあきらめてほしくない。それにじいちゃんが俺をあの人のところに向かわせたのはそんなに単純な事じゃないと思うんだ」


二人はとりあえず山を下りることにした。


「この町に泊まるところは果たしてあるのかが心配だな」

「来た時には見た感じなかったけど」


山を下りたころには夕暮れになっていた。


町には相変わらず人は歩いていなかったが、夜が近いからか宿の看板がおかれ道がひっそりとした路地裏に続いていた。


道をたどって歩いていくと一軒の宿があった。宿屋チアーズ。


恐る恐る中に入ると受付には紙をくちゃくちゃにしたような肌の老婆が立っていた。店内はずいぶん暗くあたりを確認したがどうやらこの老婆だけのようだ。


「いらっしゃい」かすれた声だった。「お客が来るとは珍しいね」


「二名で予約をお願いしたい」


シエルが言った。


「こんな何もない町に人が来るとは珍しいもんだ。旅のもんかい」

「そういうとこ。ちょっとこの山の上に住んでる人のとこに行ってたんだ。それより部屋空いてる?」

「部屋は空いてるさ、すきに泊まりな。それよりも見た感じどうやら突き放されたらしいね」


人との距離感をつかむのがカイは得意だ。

なぜかは分からないが自然と皆親近感を持つ。話し方がそうさせるのかもしれない。


「なぜそうだと思ったんです?」


シエルが聞いた。


「あたしたちもね何度か説得に行ったのさ。あたしたちともっと話さないかいってね。でも無理だったよ。それと宿のお代はいらないよ、若者からお金を巻き上げるほど悪趣味じゃないからね」

「いやいや、お金払うって、それはさすがに悪いよ」

「老人なんてお金持ってても仕方ないんだよ、若い人のほうが必要だ」

「そういわれてもなー・・・」


話がなかなか進展しない中、老婆はしばらく考えてこういった。


「じゃあゾーイさんを助けるこれがお駄賃てのはどうだい」


そこまで言われるとカイはしぶしぶ受け入れるしかなかった。


どうやら人は自分たち以外泊まっていないようで、部屋は好きなところを選ばせてもらうことができた。せっかくなので一番広い部屋を借りることにした。


二人は部屋の扉を置けると思いきりベットにダイブした。


体がだんだんと沈んでいく。たまった疲れがどっと出た感じがする。


カイがベットに飛び込んだまま寝かけたときシエルが言った。


「あの人、そう簡単に俺たちに心を開いてはくれないだろうな」

「うん。だから毎日呼びかけに行こうと思う」

「そうだな」


今日はとても疲れたためそれ以降は何もせず寝ることにした。


それから二人は毎日のようにシャーレのもとを訪れた。しかしもちろんシャーレは出てこなかった。


カイはドアの前に座り自分の夢や過去の話を一つした。シエルはオカリナを吹き、知ってる曲を聞かせた。そしてまた明日も来ると告げ毎日欠かさずシャーレのもとを訪れた。


そういった生活が半年続いた。そして今日も二人はシャーレのもとを訪れた。


二人は今日あったことを話そうと家の前に座る。


「お前たちが何度来ようと私の気持ちは変わらない」


今まで一向に口を開かなかったシャーレがついに口を開いた。


「あ、やっとしゃべってくれたな」


やっと口を閉ざしてくれていたものが話をしてくれた。それだけでも一歩前進したのかもしれない。


だがこのまま何年もこうしているわけにはいかない。カイとシエルは胸の奥で思っていることを正直に話すことにした。


この機会に畳みかける。


「正直なことを言うとよ、俺たちはこんなところで何年も立ち止まってるわけにもいかない。俺たちにも目的がある、それに若い時の時間は無限じゃない有限だ」


胸の奥にしまっていた気持ちを吐露したことでカイは少しすっきりした気持ちになることができた。


「俺は過去のあんたの話をしたいんじゃない、今のあんたと話がしたいんだ」

「人との関係はその時が重要なんだ、機会を逃したらもう一生話せない、後悔することになる」

シエルも続いていった。


黙ってそれを聞いたシャーレもなにか心を動かされたようだ。シャーレは昔の出来事を思い出していた。頭の中に誰かが話しかけてくる。だんだんと鮮明になる。


「そんなに過去の自分が許せんか」


それはジエフの声だった。シャーレの家の中で会話をしている場面だった。


「どんなに自分を責めても何も変わらん、何なら自分が沈んでいくだけじゃ」


シャーレはだんだんと思い出してきた。これはジエフが家を突然訪ねてきた時だった。ジエフもまだ若いが、相変わらずのおじいちゃん口調だ。


「でもわしはお前はもう一度外の世界に出ると思う」


その言葉にはジエフ自身の願望もこもっているのだろう。


「それはほんのちょっとしたきっかけだ。お前をぐいぐい引っ張ってくれる仲間との出会い。それだけでお前は変われると思う」


なぜかシャーレにはこの言葉が強く鮮明に覚えていた。


シャーレはジエフは預言者かなんかなのかと思った。これがお前の言う仲間というのならば最後のチャンスをこいつらにかけてみよう、そんな気になった。



そして重い家の扉があき、シャーレが出てきた。


「最後の最後にお前たちにかけてみよう、手伝ってやろう」


カイとシエルはお互いを見た。そして津にやったんだと笑顔になった。


「じゃあ、シャーレさんこれからよろしくな」

「シャルでいい。シャルと呼べ」


シャーレも彼らに心を開いたようだ。


「まずはお前たちを鍛えることから始める。内容は明日伝える。今日はぐっすり寝ておけ」


「おっす!!」







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