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新たなる敵その1

「またなのか……」


 数日前から、スライムのような謎の生命体が発生し始めた。

 この生命体は見境なく攻撃を行ってくるため、発見次第殲滅するように伝えてある。しかし日に日にその数は増すばかりで、今では幹部や我自らが出向かなければならなくなった。

 魔物でも魔族でも無い。もちろん人でも無い。発生理由も目的も不明。まさに未知なる侵略者とでも言うべきか。


「せめて発生源さえわかればな」

「おいディアベル不味いぞ。前線が崩壊した」

「なんだって……?」


 大急ぎでやって来たアリサは、前線が崩壊したことを我に伝えた。魔族領外で発生した生命体を内部に入れないために増援を繰り込んでいたはずだが、それが全て倒されたというのか。


「一体何ごとなのだこれは……」



 時を同じくして、人族領最大の街ノカワンタも謎の生命体に襲われていた。


「王様、お逃げください!」

「しかし、逃げると言ってもどこに逃げるのだ。ノカワンタを出ればこの生命体がうじゃうじゃと跋扈しておるのだろう?」


 王の言葉は正しかった。ノカワンタは城壁で囲まれているため、なんとか国内に入り込む生命体の数は抑えられていた。だが国の外では謎の生命体が大量に発生しており、もはや国外へ出ることは自殺行為であった。

 謎の生命体には知能があるのか、城門部分に集中して攻撃を行う。このままでは城門が破壊され、国内に生命体がなだれ込むことは時間の問題であった。


「勇者はいまどこにおるのだ」

「現在このノカワンタに向かっているようです。到着までまだしばらくかかるかと」

「よろしい。ではそれまで持ちこたえればひとまず我らの勝ちだ」


 勇者であれば国内に入ろうとしている生命体に対処するのは容易であろうと判断した王は、勇者の到着まで持ちこたえる方法を取った。

 が、その方法は叶わないものとなる。


「王様! 城門が破壊されました!」

「え、それ本気で言っておるのか!?」

「なんとか王国騎士や冒険者が抑え込んでいますが……それもいつ突破されるかはわかりません」

「ええい、こうしてはおれん! 我が出る!」


 王は杖を持ち、城外へと出ようとする。


「だ、ダメです王様危険すぎます!」

「国民を守るのが我の役目である。そこを通せ」


 制止する兵士をものともせず突き進み、王はその足で城門へと向かった。




「聞け、我が国民よ! 勇者が戻るまでなんとしても城門を死守する! 後に続けぇぇ!!」


 王は広範囲に防壁魔法を展開しながら進軍し、そのまま生命体を押し出した。

 その場の誰もが思ったことだろう。それ出来るなら最初からやってくれと。



「不覚、魔王城内にまで侵入を許すとは……」


 幹部の者には他の重要エリアの防衛を任せている。万が一にも兵器開発エリアを占拠されてしまっては、二次被害どころの騒ぎでは無くなってしまうだろうからな。したがって魔王城の防衛は我のみが行っているのが現状だ。

 

 それも、魔王城自体に自動迎撃装置を始めとした大量の防衛装置があるため何とかなるだろうと思っていたのだ。だがどうやらそれは間違いだったらしい。ヤツらは思っていたよりも数が多く、殲滅しきれなかった残党が場内へと侵入してしまったのだ。


「こうなれば、我が直々に潰していくしかあるまいな」


 城内を駆け回りながら、見つけ次第排除していく。最初の内は城を一周して1、2体いるかどうかであった。しかし遭遇間隔は徐々に短くなっていく。それは侵入して来る数が増えているということに他ならない。

 このまま数が増え続ければ魔王である我と言えど限界が来る。生きとし生けるものである以上、いくら魔王であっても魔力は無限では無いのだ。


「このままでは埒が明かない……なっ!?」


 一瞬の隙をつかれ、背後から組み付かれた。そしてそのまま頭部を覆われてしまう。


「ゴボボボ……ガハッ」


 スライムのような体に頭部全体を包み込まれ、呼吸が出来ない。口から中に入ってこようとするため迂闊に口を開くことも出来ず、詠唱が必要な魔法は使えない。

 それならばと無詠唱の魔法を使い引きはがそうとするも、魔力自体を吸われてしまうためか発動することが出来なかった。かといって流体である体はどれだけ藻掻いても掴むことが出来ず、物理的に引きはがすことも叶わない。


 対処に手間取っている内にヤツらは一体また一体と増えていき、我の体に張り付いてくる。服の中にまで侵入してくる者もおり、ヌルヌルとした感触が肌を包む。気持ち悪い感触に耐えながら身を捩るが、依然として剥がすことは出来ない。

 なんとか意識を保とうとするが、このまま呼吸が出来なければ持ってあと十数秒であることは確かであった。


 途絶えそうな意識の中、ヤツらが内ももを登ってくる感覚にビーチでの最悪な光景がフラッシュバックする。

 なんとか止めようとするが、動けば動くほど苦しくなる。そしてとうとう限界を迎えた我は、そこで意識を手放してしまった。

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