四話:現実世界の理念は通用しない。
2025/8/1 追記)内容を再考して若干変わっているので、是非第1話から読んでみてください!
「転生者様…?」
無言で頷く。
「私達、死ななくてすむんですか…?」
「あぁ。」
「犯されなくて、すむんですか?」
「勿論、オークは死んだ。」
彼女の瞳から一筋の涙が零れ落ちたのは間もなくのことだった。
彼女たちはお互いに身を寄せ合い、無事であったことを喜び合っている。
俺はただその姿を少し離れた場所から見守っていた。
そう表面上は冷静だった。
内心はバカ焦りだこの野郎。
考えろ全国の読者!
生前、家族を除いてちゃんと話せた女子一人の俺には
この場面はハードル高すぎるんだよ!
うわぁ~!
対処する方法が分からないので俺は泣き終わるまで、オロオロする結果となった。
「すいません。取り乱してしまって…」
「いやいいよ。仕方ないし。」
そりゃあ、ついさっきまで命の危険があったんだから仕方ないよな。
「取り敢えずさ?ここから出ようよ。」
「そう、ですね。」
「早く行きましょう。」
3人で洞窟を後にする。
(オークに殺された女性達は、ちゃんと埋葬しました。)
ちなみに出る最中に何とか聞くことができたが、
あの2人の名前は、姉がスズカで妹がリンネらしい。
──────────────────────
「なぁ、あんな危険な場所にいた理由を聞いてもいいか?」
さっきから思っていた疑問だった。
だって、わざわざ死ぬかもしれない所に普通行かないだろう。
「先ほど、埋葬した人達いましたよね…?」
「あ、あぁ。」
思い出すだけで背筋が凍る様な感覚に襲われる。
死体を埋葬したのも死体を見たのも人生で初めての体験だった。
「あの人達、盗賊だったんです。」
「え?」
盗賊?!
「あの人達は、あそこの洞窟を拠点として行動していて…」
「私達の村によく乗り込んできてたんです。」
彼女達の話をまとめるとこうだ。
あの盗賊団はこの地域に住み着く犯罪集団だったらしく、
近隣の村などに攻め入り、金品などを搔っ攫っていっていたらしい。
彼女達の村にも定期的に攻め入ってきていて、とても危険で迷惑な集団だった。
そんなある日、また盗賊団が攻めてきて大人たちが交戦していた。
彼女らの父親も守るために戦いに出ており、盗賊団を食い止めていたらしい。
しかし、その日の盗賊団は何かがおかしかった。交戦中の村人を殺害したのだ。村のために戦っていた大人たちは抵抗するも虚しく、彼女らの父親含め全員が殺され、家に避難していた大人も全員殺された。
そう、彼女達は多くの村の子供たちと同様に両親を1日でなくしてしまったのだ。
この姉妹は、盗賊に捕虜として連れて行かれ気付いたらこの洞窟にいたらしい。
「どの世界でも盗賊ってのは危険なんだな…」
その話を聞いて俺はゾッとした。
日本では盗賊と言われる者はあまりいなかったが、異世界となると話は変わってくる。
ここは別世界。日本の常識は此方の世界では通用しない事を改めて実感した。
するとリンネが俯く。
「すいません。ヤマトさん。」
「どうか、私たちも旅について行かせてください!私達にはもう....
居場所がないんです!」
「「お願いします!!」」
彼女たちが頭を下げてお願いしてくる。
「えー?!」
どうしよう。困ったことになったぞ...?
読んで頂き、ありがとうございます!
下の星とブクマをしていただけると、
作者の励みに繋がります!
宜しくお願いします!