根本明音の場合 (7)
四十九日の法要があと一週間後に予定していたころ。
このころから、私に対する両親の雰囲気が変わってきた。
きっかけは以前、鯖の味噌煮を作った日のあとである。
あの日、私がご飯を食べずに部屋に戻ったことが、ある意味メッセージになっていたのかもしれない。
それが両親への無言の圧力になったのかはわからない。
でも、微かな反抗心はあったのかもしれない。
私も二人をもう見ない、と。
それでも、そこで両親の気持ちが変わってきたのか、少しずつ私ともちゃんと話してくれるようになり、私も多少楽になっていた。
だからこそ、外に少しずつ買い物に出たりして、気分転換を行えるようになっていた。
私がずっと家に引き籠もっているなか、友人らが心配して連絡もしてくれた。
嬉しくて友人につき合ってもらった。
そのなかで、恋人からも連絡もあった。
何気ない言葉に心を落ち着かせていた。
そこである居酒屋に誘ってくれていたことを思い出した。
気持ちも落ち着き、前を向こうとしていると、久しぶりに会いたくなったので、私から連絡を入れた。
一つ相談もしたかったので。
結局、彼女にはずっと会えていない。
ずっと気にはしていたのだけれど、これだけ連絡がないのは、私たちを避けているんじゃないか、と不安になっていたので。
迷っていた。
弟のことで話をしたかったけれど、それが彼女にとって重みになってはいけない。
それでも、もう関係はない、と離れることもやはり気持ち悪かった。
わからなかった。
彼女がどちらを望んでいるのかが。
もちろん、彼女の気持ちを尊重しなければいけない。
私はどうすればいいのかを、聞いてみたかった。
すると、彼の返事に少し驚いてしまった。
遠慮しているんじゃないか、と。
優しい顔で言われると、私はハッとした。
またしても知らないうちに彼女を傷つけて疎外していたんじゃないか、と。
彼の助言もあり、彼女を家に呼ぼうと決めた。
それを両親にも提案してみた。
彼女のことをこのまま放っておけないと。
両親も快く頷いてくれた。
そこで自分たちが事故が起きてから、ちゃんと話し合えていないので。
きちんと挨拶をしたいと言っていた。
その表情に決して思い詰めた暗さはなく、私はホッとした。
きっと葬式の日にこのことを相談していたのならば、二人とも上の空で話し合えなかっただろうから。
それだけでも前進していた。
あとはいつにするかが問題であった。
本音を言えば、すぐでもよかったのだが、まだ四十九日の法要が残っていたので、それが終わってからにしようと考えた。
その方が彼女も気が楽かと思えた。
まだ不安は残っていたけれど。
犯人の裁判である。
弟を殺した犯人の裁判はもう始まっていた。
幸い、犯人は自分の罪を認めている。
裁判が長引くことはなさそうだけれど、私はそれでも素直に納得できないでいた。
この感情はどんな判決が下されても、納得はしないだろう。
できれば、それでいいんだ、と思っている。
納得をしてしまえば、弟を私が見捨ててしまう気がするから。
それは忘れるのと一緒なんだ。
でも彼女は違う。
彼女にそんなことを背負ってほしくない。
彼女がどう思っているのか話したかった。




