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綺麗事なんかキレイじゃない  作者: ひろゆき


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 根本由紀子の場合 (2)


 しかし、今の状況は違います。

 葬式の次の日の夜でした。

 いつものように夕食の準備をして、食器棚に手を伸ばしたときです。

 どうしても息子の食器に目が留まってしまいます。

 もう、それらを使うことは二度とありません。

 だからと言って、捨てることなんて絶対にできるはずがありません。



 息子を襲った事故は、私たちからそうした日常すらも奪ってしまったのです。

 私たちは“これから”という時間を奪われたのです。



 もういい、と私は思いました。

 あのころの食事は美味しかった。

 家族で笑いながら。

 小学生のころ、息子が嫌いだった人参を「食べなさい」と怒りながら食べさせていたころ。

 そうした楽しい時間はもう二度と訪れないのだと諦めることにしました。



 無意識だったのか、私は食事を作るときに自然と息子が好む食事を作っていた。

 子供のころから、お肉が好きだったので、油ものを中心に作っていた。

 しかし、作ったところで食卓に息子が座ることなんてない。

 幻でもいいから、現れてほしいと願いながらも。

 それこそ友人らと遊びに行って、帰ってこないんだと、心をごまかしていた。

 迷っているとわかりながらも。



 でも、そんなのが数日続いてしまい、やはり死を認めなければいけない、と半ば諦めていた。

 すると、何事に対しても気力が失せていた。

 すべてにおいて、投げやりになっていた。

 その日もそうです。

 私としては食欲もあまりなく、夕食はどうしようからと悩んでいると、ふと視界に息子の遺影が入ってきました。

 私は導かれるように、仏壇の前に座り込み、呆然と遺影を眺めていました。

 気づくと隣には主人も座りました。

 おそらく、主人も私と気持ちは似ていたのかもしれない。

 息子の死を受け入れがたい、そして犯人を許すことができない。

 このまま時間がすぎればいい、と思っていた。

 少しずつ時間が動くのならば。

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