根本秀夫の場合 (6)
毎日、暗いトンネルのような道を、進み続けなければいけないだろうと諦めていた。
それでも娘のおかげもあり、前に進もうと思っていた日である。
初七日も終え、四十九日の法要まで少し日がしばし空いていたとき、私にある好奇心にも似た感情が芽生えていた。
不謹慎ではあるし、そんなことを考える自分に嫌気が差しながらも、息子が命を奪われた事故現場に向かっていた。
もちろん、妻や娘には言えなかった。
事故現場なんて、傷口に塩を塗るようなもの。
そんなことは言えない。
向かったのは仕事帰り。
午後六時半。
いつもの帰路少し道を外れ、ある交差点に出た。
何気ない交差点。
大通りに面した見通しのいい交差点。
薄暗くなったなか、ヘッドライトを点けた車が行き交い、車通りは多かった。
感覚としてスピードが出ているように見えた。
事故が多くなるのも、どこか納得できそうな場所であった。
どうして息子がこんな場所で、とまた考えてしまった。
何より、つい数日前に事故が起きていたのに、そうした状況がまったくなかったのも、私の気持ちを逆撫でしていた。
もうこの場所では、息子の死が遠い日の出来事になっているのが寂しかった。
どんな無茶な運転をすれば、ここで事故が起きるのか。
加害者に対しての疑念が沸き上がってくる。
許せない。
許したくない。
そこに立っていると、憤りで狂いそうになった。
そこで私は深呼吸をした。
これまでならば、この苦しさに潰されそうであったけれど、これからは違うと信じたかった。
これからは裁判になるのは承知している。
加害者は憎い。
許せるわけがない。
でも、
私は変わらなければいけない。
この場所に立ってみて、より強く思えた。
逃げてはいけない、と。
ここに立ち、息子の最期を想像したとき、心は揺らいでしまう。
ここに来なければ、ここを見なければ、こんなに後悔することはなかった。
私は迷ってしまう。
このまま上手くいくのかと。




