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綺麗事なんかキレイじゃない  作者: ひろゆき


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20/26

 根本秀夫の場合 (6)


 毎日、暗いトンネルのような道を、進み続けなければいけないだろうと諦めていた。

 それでも娘のおかげもあり、前に進もうと思っていた日である。

 初七日も終え、四十九日の法要まで少し日がしばし空いていたとき、私にある好奇心にも似た感情が芽生えていた。

 不謹慎ではあるし、そんなことを考える自分に嫌気が差しながらも、息子が命を奪われた事故現場に向かっていた。



 もちろん、妻や娘には言えなかった。

 事故現場なんて、傷口に塩を塗るようなもの。

 そんなことは言えない。



 向かったのは仕事帰り。

 午後六時半。

 いつもの帰路少し道を外れ、ある交差点に出た。

 何気ない交差点。

 大通りに面した見通しのいい交差点。

 薄暗くなったなか、ヘッドライトを点けた車が行き交い、車通りは多かった。

 感覚としてスピードが出ているように見えた。

 事故が多くなるのも、どこか納得できそうな場所であった。

 どうして息子がこんな場所で、とまた考えてしまった。

 何より、つい数日前に事故が起きていたのに、そうした状況がまったくなかったのも、私の気持ちを逆撫でしていた。

 もうこの場所では、息子の死が遠い日の出来事になっているのが寂しかった。



 どんな無茶な運転をすれば、ここで事故が起きるのか。

 加害者に対しての疑念が沸き上がってくる。

 許せない。

 許したくない。

 そこに立っていると、憤りで狂いそうになった。

 そこで私は深呼吸をした。



 これまでならば、この苦しさに潰されそうであったけれど、これからは違うと信じたかった。


 

 これからは裁判になるのは承知している。

 加害者は憎い。

 許せるわけがない。

 でも、

 私は変わらなければいけない。

 この場所に立ってみて、より強く思えた。

 逃げてはいけない、と。

 ここに立ち、息子の最期を想像したとき、心は揺らいでしまう。

 ここに来なければ、ここを見なければ、こんなに後悔することはなかった。

 私は迷ってしまう。

 このまま上手くいくのかと。

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