01.お嬢様のご友人に挨拶します。
「お帰りなさいませ。お嬢様」
「うん。ただいま!」
今は外だから、俺は一花ちゃんの事をお嬢様と呼んでいる。
俺が一花ちゃんの専属メイドになってから一か月。
今日も車で一花ちゃんを学校まで迎えに行っている。
もちろん運転は俺が行っている。
リムジンを運転するなんて最初は緊張したが、もう慣れた。
ちなみに免許は高校生時代に取っていたりする。
定員十人以下で総重量が五トン未満のリムジンなら普通免許証で運転出来るのだ。
この学校の名前は、桜宮学園 未来創造女子小学校。
桜宮学園と言う通り、我が桜宮家が運営する由緒ある学校だ。
広大な敷地に最新設備。
はっきり言ってうらやましい。
当然、金持ちがほとんど。
学費がべらぼうに高いらしい。
一応、入学試験の成績優秀者は学費無料で入れるようになっているから、そういう子もわずかにいる。
……ちなみに、そういう特待生は服を見ればわかる。
なぜなら、未来創造女子小学校は学費も高いが制服も高い。
高級ブランド服らしいから、当然と言えば当然だろう。
で、この学校の特待生は学費はタダだがそれ以外は有料(特待生割引有)だ。
だが、成績優秀者の特待生のほとんどはそんなの買う余裕がないのは当たり前。
この学校の制服は割引料金でもかなり高いのだから。
そんな子の為に、この学校は制服はあるものの着るかは自由となっている。
だから、この学校の生徒の服装は二種類に分かれている。
その一:学校指定制服。
この学校の生徒はほとんどがこれを着ている。
一花ちゃんもこの制服だ。
その二:自由服
指定制服より安い服と高い服に分かれている。
学校指定制服より安い服の場合は、特待生が着ている事がほとんどだ。
制服と言うより、私服に近い。
だが、逆に高い服の場合もある
様々な理由により、指定の制服よりを着てくる生徒が毎年少数だがいるらしい。
指定制服を買える余裕があるのに、だ。
当然お金持ちの家の子供だ。
で、今一花ちゃんの隣りにいる少女は、その自由服で高い服のケースだ。
つまり、一花ちゃん同様のお金持ちの家の子、という事になる。
で、彼女が来ている服だが……服について勉強中の俺でもわかる。
この服、絶対高い。
しかも、かわいい方に全振りするという感じだ。
リボンがあったりフリフリだったり。
もう、超かわいい。
そんな服を着るこの美少女は、長めのショートカットで、一花ちゃんよりも背が高い。
どうやら、胸も少しはあるようだ。
「紹介するね。この子は、百合丘 美華子。私と一緒のクラスで、幼馴染の親友なの」
「は、はじめまして」
美華子様はそう言って頭を下げた。
どうやら緊張しているらしい。
「初めまして、美華子様。私は一花お嬢様の専属メイドをしている……」
「うん、知ってる。あと、わた……僕の事は美華子って呼び捨てにして」
「え?」
自己紹介を遮られた後、いきなり呼び捨てにして、と言われた。
え、いいの?
一応お嬢様でしょ?
「なんだったらお前でもいいから」
「じゃぁ、美華……」
呼び捨てにしようとしたが、一花ちゃんが怒ったような顔をしている。
ひょっとして……
「美華子ちゃんで」
そう言うと、美華子ちゃんは少し不満そうな顔を、一花ちゃんはうれしそうな顔をした。
嫉妬してくれたんだ、嬉しい!
俺は内心そう思いながら、顔には出さずに言葉を続けた。
「では、美華子ちゃん。何か御用ですか」
「敬語もいいよ。今日はお願いがあって来たの」
「なんでしょ……なに?」
「じゃぁ、車の中で。僕の専属とは話がついてるし、桜宮家にも連絡して許可をもらったらしいから。あと、僕の専属メイドは帰らせから、安心していいよ。お話しするのに邪魔だったから」
一花ちゃんを見ると、頷いたからそうなのだろう。
でもいいのかね。
専属メイド帰らせて。
誰がお世話するんだろ。
……あ、俺か。
「じゃぁ、車の中へ」
そうして二人は車の中へ入っていった。
で、俺は運転席へ。
そして、運転を始めてからしばらくして、美華子ちゃんが話し始めた。
「僕、悩みがあるんです」
「へぇ、どんな?」
「僕、男になりたいんです」
「?」
「女なんか嫌、僕は男になりたいんです。最近、胸も膨らんできちゃったし」
そう言って美華子ちゃんは胸にてを当てた。
とても悲しい顔をしている。
「でも、それは……」
性転換手術するしかないのでは?
「でも、お父様もお母様も私に可愛い服を着てもらいたいみたいで、いつも可愛い服ばかりくれるんだ。私の家って兄弟私以外はみんな男だから」
「そうなんだ……」
まぁ、男兄弟の中の女の子って事で、可愛いのだろう。
今着ている可愛い制服だって金がすごく掛かっているだろうし。
男になりたいと言っている割に女口調なのは、家での会話がそうだからだろう。
私ではなく僕と一生懸命言っていることが可愛い、いや、かっこいいと言うべきか。
「もっとかっこいい服着たい。男らしい格好したい」
「うーん……」
「でも、私の家族以外の男の人っていなかったから、相談相手がいなくて」
なるほど、彼女も一花ちゃんと同じ大金持ちのお嬢様。
当然周囲の人は女で囲んでいるんだろう。
「うーん、でも俺に出来る事は……」
「大丈夫。アニキにも出来る事だから」
「……アニキ?」
出来る事ってのも気になるが、なんだ?その呼び方は。
「うん、アニキ。僕のアニキ分だから」
「アニキ分って……」
「お兄ちゃん。美華子ちゃんはね、自分を男として扱ってくれる兄弟が欲しいんだよ」
「兄弟?」
なんじゃそりゃ?
「僕のお兄ちゃん達はみんな可愛い可愛いって僕を可愛がるんだよ。だから、アニキには僕を男として扱って欲しいんだ」
「ああ……なるほど」
つまり、男として扱ってくれるお兄さんが欲しいってわけか。
「つまり。美華子ちゃんは僕の弟になりたいって事?」
「うん。そう!あと、ちゃんじゃなくって、君って。美華子君って呼んで」
「一花からもお願い。お兄ちゃん」
うーん。
一応俺も妹が二人いたけど、仲は多分あまり良くなかった。
いや……なれなかったと思う。
でも、本当はもっと仲良くなりたかった。
でも、だからこそ。
「よろこんで。よろしくね、美華子君」
「よろしくね、アニキ!」
美華子君はそう喜んで言った。
学校の初期名
聖 幼膜破絶頂 女学院
幼ない少女が自らを覆う子どもという
膜を
破り、
絶えず人生と言う山の
頂上を目指す
女学院
せい おまはだち じょがくいん
ふりがなが変なので没。