02.貧困幼女と俺の選択
で、俺が今いるのはその貧困国の超高級ホテル。
貧困の差が激しいとは聞いていたけど……高級ホテルは本当に高級だ。
日本でもありえないくらい高そうな物がいっぱいある。
「一般人はあんなに苦しそうだったのに……」
そう、このホテルに来る前、俺は奥様と一緒に車でいろいろな場所に連れて行ってもらった。
そこで見た貧困国の現実は、それは酷い物だった。
飢えて倒れている人々、お金が欲しいと自らを売る幼女達、そして、当たり前のように転がる死体……
日本人がどれだけ恵まれているか理解してしまった。
そんな中、俺はホテルで奥様が買った少女を待っている。
奥様からは、とりあえず一緒にお風呂に入れ、と言われている。
そして、その後やる内容も指示を受けている。
……その内容は、日本なら両者合意でも犯罪の内容である。
まして、聞くところによると相手は一花ちゃんより年下で、さらに日本人のようにきちんと栄養を取っていない為、実年齢より小さいそうだ。
……奥様は笑って、「あまりにガリガリすぎたから、前金で少しでも太らせて、と彼女の家族に言っておいた」と言っていた。
どうしよう……
そんな事を考えていると。
コンコン。
ドアが叩かれる音がした。
どーぞ、と言いそうになったが、俺はこの国の言葉を知らないし、向こうも当然俺が知っている言葉は話せないだろう。
俺がドアに向かおうとすると、ドアが開いた。
その先にいるのは、ボロボロの服を着ている大人の男性と幼女。
そして、男性が幼女を部屋に入れると、自身は入らずにドアを閉めた。
『パパ~?』
彼女は不思議そうな顔をしている。
この国の言葉が分からないから、俺には彼女が何を言っているかわからない。
急に置いてきぼりにされたので、困惑しているのだろう。
『あ、おかね、いっぱいくれる人~?』
俺は、幼女に近づくと、とりあえず頭を撫でた。
『パパ、これから会う人の言う事よく聞きなさいって言ってたの。そうすればお腹いっぱい食べられるって、パパもママもおにーちゃんおねーちゃんも、みんな幸せって。だから、私、がんばる』
彼女の頭はベタベタしているし、体もかなり臭い。
この後どうするかはいざ知らず、彼女の健康の為にも体を綺麗にした方がいい。
俺は、彼女の手を掴み、歩き出した。
『どこに行くの~?』
脱衣所に着くと、彼女のボロボロの服に手を掛けると、服を脱がした。
もちろん俺も脱いだ。
『なんで脱ぐの~?』
俺は彼女をそのままお風呂場に入ると、まずシャワーを掛けた。
『あたたか~い!なにこれ~?』
彼女は楽しそうにシャワーのお湯と戯れている。
もしかすると、いや間違いなくシャワーを浴びるのは初めてなのだろう。
しばらく浴びた後、俺は彼女の腰を掴んで持ち上げると、そのままお風呂に入った。
『うわー、すごーい。あたたか~い。こんなに水いっぱいあるの初めて~?』
「ちょっ、暴れない、で!」
さすがにお風呂の中で暴れられると困る。
僕は彼女を押さえつけて、後ろから抱きしめる形で、抱きしめた。
『わー、あたたかいね~』
ようやく落ち着いた彼女は、俺に体を預けて気持ちよさそうにしている。
しばらくして、お風呂から出た俺は彼女に服を着せる事にした。
奥様から彼女の服を用意した、と聞かされていたのでその服を手に取ると……
「これ、スモックじゃん」
そう、そこにあった服は、幼稚園児が着るような水色のスモック、黄色い帽子付きだった。
しかもご丁寧に名札付きだった……
しかも、スカート無いし。
パンツがある分、ありがたいと思うべきか……
……しかたない、か。
俺は彼女にパンツを履かせ、スモックを着せた。
ボタンを一つずつはめていく。
『うわ~、こんなきれいな服初めて~』
彼女は楽しそうに笑っている。
俺は、ボタンを全てはめると……
彼女をそのままベッドに連れて行った。
『うわ~、こんなにふかふかなの。はじめて~』
彼女はベッドの上で、楽しそうに笑っている。
俺がとるべき行動は二つに一つ。
このまま彼女と何もせず、というかただ遊ぶ事。
そうすれば、彼女の心身を傷付けずに済む。
俺の良心も傷つかない。
だけど、彼女と彼女の家族の生活は貧しいまま。
さらに、内戦が起これば彼女と彼女の家族は殺されてしまうかもしれない。
もう一つは、口で言うのも憚られる事。
彼女の心身は傷つき、心に一生ぬぐえない傷を負うだろう。
それに、俺の良心も傷つく。
でも、彼女の生活は改善される。
内戦がおこる前に国外脱出出来、暮らしもある程度保証してくれるのだろう。
『うわ~、ふかふか気持ちい~』
俺の判断は……
数日後、日本で。
俺は、彼女の国で内戦が勃発し、多くの国民が殺戮されたと聞いた。
ナチスドイツのユダヤ人迫害の再来とまで言われていた。
さらに、それから数年後に俺はテレビで彼女とその家族を見る事になる。
彼女達一家は安全な国で楽しく暮らしており、生活も安定しているそうだ。
俺が知っている彼女もまた、幸せそうに笑っていた。