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09.メイドのお仕事その5。入浴後の体拭き。

「やっと来ましたか」


 一花ちゃんの部屋に入った俺を待っていたのは、黒川さんだった。


「お嬢様はもうすぐお風呂から出ますよ。すぐに準備してください」

「へ?準備、ですか?」


 お風呂は全部他のメイドさんがやってくれるはずだが?


「はぁ、何を言っているのですか?」


 黒川さんが呆れたように言った。


「この仕事は本来すべてあなたがする事なんですよ。ですが、お嬢様が恥ずかしい、とおっしゃられていた事と、あなたが汚れていたので代理で行ってもらっているだけです。今お世話をしている人達にだって仕事はあるんですからね」

「すみません」


 納得は出来ないが、しょうがないので謝った。


「では、まずは服と下着を用意してください」

「え、それもですか?」

「当たり前です。に、下着はあそこのタンスに入っています。」

「了、了解しました……」


 で、俺はまず替えの服を用意した。

 服のクローゼットの場所は朝知ったから問題ない。

 問題は、替えの下着だ。


 俺は、まずはパンツが入っているタンスの引き出しを引いたのだが……


「多っ」


 そう、数がかなり多い。

 こんなにいるのかってくらい多い。

 というか種類も多い。


 試しにいくつか取ってみると、

 クマさんプリントやら黒のレースやら意味があるのかわからない紐やら……

 子供っぽ過ぎたり大人過ぎたり、わけわからない。


「早くしてください。時間はないのですよ」

「は、はい!」


 しょうがないから、適当にクマさんプリントを取った。

 パンツの引き出しをしまい、シャツがある棚を開ける。


 こっちも色々な種類があったが、パンツ程ではないのですぐ出せた。


「準備出来ました」

「遅いですよ。では、脱衣所へ行きましょう」


 黒川さんの手には、アイマスクが握られている。

 それで俺の目を隠すんだな、と容易に想像できた。

 まぁ、当然だろう。


 ちなみに、俺が準備している間に女性メイドの人達が脱衣所から出て行った。

 きっと一花ちゃんがお風呂から出て、着替え待ちなのだろう。

 自分の仕事があるのに、やってもらってすみません。


 で、俺は脱衣所の入り口の前まで来ると、


「お嬢様、黒川です。先に入りますね」

「はい、どーぞ」

「貴方は私がいいと言うまでそこで待っててくださいね」

「?わかりました」


 俺にアイマスクを付けて一緒に入るんじゃないのか?

 疑問はあっても俺は黒川さんの指示に従い、しばらく待った。


 で、しばらくした後、


「いいですよ。入ってきてください」

「はい」


 そして俺は脱衣所に入ったのだが、


「ぷっ!」


 思わず噴き出した。


 さっき黒川さんが持っていたアイマスク。

 それを付けた一花ちゃんが立っていた。


 アイマスクを付ける為だろう。

 どうやら顔は拭いたらしい。

 頭も、まだドライヤーは必要だろうが軽く拭いてあった。

 だが、それ以外は当然だが濡れていた。


「では、体を拭いてください」


 えぇーっ

 俺は、思わず黒川さんの顔を見た。

 だが、黒川さんは当然、という顔で俺を見て


「お嬢様は見られると緊張する、とおっしゃられていましたので、アイマスクをつけていただきました。」

「ですけど……」

「大丈夫です。これは専属メイドの仕事の範疇。さぁ、早く拭いてください。お嬢様が風邪をひいてしまいます」

「は、はい……」


 俺は、一花ちゃんの方をなるべく見ないように近づいて行った。


「何をしているのですか?きちんとお嬢様の方を見てください」

「で、ですが」

「お嬢様の体をきちんと綺麗に拭いてさしあげるのはあなたの仕事なのですから。職務をきちんと果たしてください」

「は、はい」


 こうなりゃヤケだ。


 俺は、一花ちゃんの方を向くと、一花ちゃんの体を拭こうとバスタオルを彼女の体にそっと触らせた。

 だが、その瞬間、


「危ない!」


 一花ちゃんは急に後ろに下がろうとしたが、目隠しをしていたため上手く後退できず、後ろに倒れそうになってしまったのだ。


 俺は咄嗟にバスタオルを投げ捨てて一花ちゃんを抱きしめた。


「び、びっくりしたー」


 俺は一花ちゃんを抱きしめながら、安堵のため息をついた。


「あ」


 冷静になった俺は、服を着ていない一花ちゃんを抱きしめている事に気付いた。

 一花ちゃんはいきなりの事でフリーズしているみたいだ。


「ご、ごめ……」


 俺は思わず謝り、一花ちゃんから離れようとしたが、


「いえ、そのままで」


 そう言ったのは黒川さんだった。


「そのままお嬢様が逃げないように抱きしめながら体を拭いてください」

「ですが」

「いい加減にしてください。お嬢様が風邪をひいてしまいます」

「は、はい!」


 少し怒った黒川さんに命令されて、俺は大急ぎで黒川さんが拾ってくれたバスタオルを手に取った。


「じゃ、じゃあ……」


 俺は左手で一花ちゃんを逃げないように左手で抱きしめた。

 そして、右手でバスタオルを持ち、一花ちゃんの体の後ろから拭き始めた。


 頭は拭いてあったから、両肩から初めて、背中、お尻と拭いていく。

 お尻は未だ腫れが引いていないから、真っ赤なお尻が見える。


 お尻はより優しく拭いたけど、それでも「ひっ」という小さな驚いた声が聞こえた。


 チラリと一花ちゃんの方を見ると、フリーズからは解放されたようだが、顔を真っ赤にして緊張しているようだ。


 俺は、一花ちゃんの体を前後逆にすると、今度は彼女の体の前を拭き始めた。

 後ろ側と同様、ゆっくりと拭いていく。

 体を拭いている間、一花ちゃんは体を強張らせているけど、俺は無視して綺麗に拭いた。

 というか、俺も早く終わらせたかったのだ。


 でも、胸の部分や股間の部分を拭く時、「お兄ちゃん、駄目だよ」とか、気持ちよさそうな声を出したりとかして、俺もすごくドキドキした。

 黒川さんがいなかったら、襲っていたかもしれない。


「はい、終わりました」


 俺はそう言うと、大急ぎで脱衣場から出た。

 というか、逃げ出した。


「やれやれ、今後は全部してくださいね」


 そんな事を言いながら、黒川さんと一花ちゃんが出て来た。

 もちろん一花ちゃんはきちんと服も来ている。


「では、食事に行きましょう」


 黒川さんは、まだ少し怒っているようだ。


「まったく、専属メイドとしてもっと自覚を持ってください」

「すみません……」


 俺は、シュンとしながら黒川さんについて行った。


 一花ちゃんも気まずいのか、朝食みたいにくっついてくれない。

 そして、一緒に食べる事もせず、一花ちゃんは部屋に戻っていった。

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