07.メイドのお仕事その4。悪い事をしたお嬢様を叱る事もあります。
「つ、疲れた……」
俺は半ばフラフラしながら一花ちゃんについて行った。
本当、この庭色々設備ある。
ってか、有りすぎ。
さっすが超金持ち。
「一花ちゃん、げ、元気だな……」
「お兄ちゃん、こっちこっち!ここが最後だよ!」
一花ちゃんに連れていかれた先には……
「おお、すごい」
夕陽がとても奇麗だった。
俺の位置からは、手前に一花ちゃん、奥に夕陽が見える。
美少女小学生の一花ちゃんと、夕陽の組み合わせは、信じられないくらい美しかった。
俺は、カメラを構えると、写真を撮った。
「もー、写真なんか撮ってないで、夕陽を見てよ!」
「ああ、ごめん。つい……でも、本当に綺麗だね」
「えへへぇー、でしょ♡」
一花ちゃんの夕陽の事だと思っているだろうけど、俺はどっちも、いや、一花ちゃんの方がきれいだと思った。
俺は、夕陽が見やすい位置にあるベンチに座った。
一花ちゃんも、俺の隣に座って、俺に体を預けて来た。
そうして俺達は、しばらく夕陽を楽しんだ。
「ねぇ、お兄ちゃん……」
「ねに?」
「ごめんね」
「何が?」
なんだろう?
一花ちゃんに謝られる事は別に無いはずだ。
むしろ、一花ちゃんに色々案内してもらって、俺がメイド失格ですみませんと謝ってもいいくらいだ。
「お兄ちゃんが変態さん呼ばわれされていた事、ちゃんと謝りたくって」
そう言うと一花ちゃんは立ち上がり、
「ごめんなさい!」
そう言って頭を下げた。
「そ、そんな事する必要ないよ。それに、昨日謝ってくれたじゃないか」
「ううん、きちんと謝罪しないとと思って。それに、今日、一花……私のわがままに付き合ってくれたから」
「わがままって……」
むしろ案内してくれて助かったくらいだ。
「私ね、あの家に居たくなくって。あそこ、皆いい人だけど、なんだか好きになれないの。みんな上辺だけよくしてるって感じがして」
「ああ……」
無理もない。
使用人は仕事で一花ちゃんの相手をしているのだ。
もし一花ちゃんを怒らせたら首になる可能性だってあるのだ。
だから、上辺だけいい人になる。
腹が立っても、顔に出さない。
まして口に出すなんてもっての外だ。
一花ちゃんは、それを子供らしい直感で分かったのだろう。
「私がわがまま言ってもね、皆怒らないんだ。私がごめんなさいって言おうとしても、気にしないでください、怒ってないですって笑うの。でも、怒っているの。怒っているのを隠して笑っているの」
「そうなんだ」
「だからね、私、絶対わがまま言わないって決めたの。他の人に迷惑かけるから。皆の言う事を聞いて、いい子になろうって。そうすれば、皆怒らないから」
「……」
こう考えるこの子は大人にはいい子だと思われるだろう。
周囲の空気を読み、大人に逆らわず言う事を聞く。
手がかからない、いい子だ。
だけど、一花ちゃんはまだ十歳だ。
もっと、わがままを言ってもいいはずだ。
だけど、奥様と旦那様は忙しく、周囲には使用人達だけ。
心を許せる人は、黒川さんくらいだったのだろう。
「でもね、迷子になったとき、お兄ちゃんが怒ってくれてでしょ?」
「そうだね」
そう。
あの時一花ちゃんは、自分から黒川さんを撒いたのだ。
多分、魔が差した、急に一人になりたくなった、そんな感じだろう。
一花ちゃん自身もなんでそんな事をしたのか、恐らく分からないのだろう。
「一緒についてきた人に心配かけるなんてしちゃいけないよって。怒ってくれたでしょ。私の為に起こってくれたのがうれしくって、それで私、泣いちゃって」
「ああ。それで」
ちなみに、一花ちゃんが泣いて、それを見た俺がオロオロしている時に黒川さん達が来た為、誤解を解くのに時間がかかってしまった。
まぁ、いいんだけど。
「だから、お兄ちゃんに怒ってもらったり、一緒にいてもらったりしてほしかったの。でも、無理強いしたら駄目って黒川さんが言うから、諦めていたの」
「そうなんだ」
「だから、お兄ちゃんがお家を追い出されて仕事を探してるって黒川さんに聞いた時、私、大喜びしちゃったの。でも、それってひどいよね。お兄ちゃんが私が勝手に迷子になったせいで追い出されちゃったんだから」
「いや、いいよ。それはもう」
「だから、それも含めてごめんなさい!」
俺は、頭を下げている一花ちゃんの頭を撫でた。
「大丈夫だよ。もう気にしてないから」
「ううん、信賞必罰は世の常だって黒川さんも言ってたから、罰を受けないと」
「へ?」
いや、小学生の女の子に罰って……
デコピンとか?
というか、信賞必罰は世の常って、よく知ってるな。
結構頭いいんだ。
「座って」
「へ?」
「いいから、ベンチに座って、足を閉じて!」
「わ、分かった」
俺は、一花ちゃんの言う通りにした。
すると一花ちゃんは俺の足の上にお腹をのっけた。
俺の目から見ると、右側に一花ちゃんの下半身、左側に上半身がある状態だ。
この体勢って……
「お兄ちゃん、お仕置きして。おしりペンペンして」
へ?
「私、悪いことしたでしょ。だから、お兄ちゃんに罰を与えてほしいの」
……困った。
「お兄ちゃん、お願い」
一花ちゃんの懇願する声が聞こえる。
……
しょうがないか。
俺は、右手で一花ちゃんのお尻を軽く叩いた。
「これでいい?」
「お兄ちゃん……」
一花ちゃんが泣きそうな声を出した。
「お願い、本気でやって。お尻に直接、全力で叩いて」
ちょっとぉ!それはさすがに!!
「そこまで悪い事はしてないと思うけど……」
思わず一花ちゃんが見えないよう上を見ながら、そう言ったが……
「お願い、お兄ちゃんに、本気で罰してほしいの。だって、本気で接してくれるの、お兄ちゃんだけだから」
そっか。
一花ちゃんは、本気で接して欲しいんだ。
だったら、俺も覚悟を決めないと……
おれは、一花ちゃんのスカートのチャックを勢いよく下ろし、さらにパンツごとスカートを下ろした。
そして、
ペチーン!
俺は、右手で思いっきり一花ちゃんのお尻を叩いた。
「いたーい!」
一花ちゃんの上半身が跳ね上がり、一花ちゃんが悲鳴を上げた。
ペチーン!
「ごめんなさい。ひどい事してごめんなさい」
ペチーン!
「もうしません!もうしません!!」
「違うよ!」
俺は、涙声で謝る一花ちゃんにそう叫んだ。
「一花ちゃんは、もっと我儘になっていいんだ。俺や、黒川さんにもっと迷惑をかけていいんだ。だから、そんなに無理していい子になる必要ないんだ」
ペチーン!
「お兄ちゃん、一花はっ」
一人称が一花に戻っていった。
「俺は、一花ちゃんと一緒だから。メイドだけど、家族と一緒だから。気にしないで言っていいんだ!」
ペチーン!
「ごめんなさい。ごめんなさーい!!」
ペチーン!ペチーン!ペチーン!
俺は、手が痛くなって叩くのを止めた。
一花ちゃんのお尻は真っ赤になっていて、彼女ははぁ、はぁ、吐息を吐いて脱力していた。
疲れた俺は、ベンチに背を預け、思わず脱力した。
ふと気づくと、足が濡れていた。
よくよく見ると、どうやら一花ちゃんが叩かれたショックでお漏らししたらしい。
やばい!
俺は一花ちゃんが脱力している内に、持っていたティッシュでそっと拭いた。
それからしばらくして、一花ちゃんパンツとスカートを履きなおすと、
「じゃぁ、帰ろっか」
と言って歩き出したが、痛みが引いていないのか、フラフラしている
「ああ、駄目だよ一花ちゃん」
俺はそう言って、一花ちゃんをお姫様抱っこした。
「あ、お兄ちゃん!」
「いいから」
こうして俺は、一花ちゃんをお姫様抱っこして連れて行った。
お屋敷に着く前には降ろしたけど。
で、降ろしたときに……
「ありがと、お兄ちゃん」
そう言って一花ちゃんは俺の頬にキスをした。