14.5 空白
14.5 空白
———扉は固く、閉ざされていた。私が認識できるのは、それだけだ。
「お久しぶりですね、お嬢様」
「今更と思われるかもしれませんが、私なりに決意をしてきたんです」
「ここにいる間は恋人だと、前に仰いましたよね。期限が決まっていないなら、まだやり直せると思うんですよ」
「はっきりと断言できます、お嬢様。私は、私は愛しているんです」
「お嬢様?」
「シリルも連れてきたんです。お嬢様に会いたいって目を輝かせていましたよ」
「数年ぶりの姉弟の再会なんですから、ほら。行ってあげてください」
「そうですか」
「わかりました」
「今度は私から扉を開けます。開けてもらうのを待つだけなんて、ただの怠慢ですからね」
———扉は、固く。
「お嬢様」
「 !」
「そんなに私のことが、嫌いですか?」
「お嬢様、私。戻ってきたんです」
「 ?」
「………どうしてって、それは」
「とにかく、家族とは縁を切ってきたんです。だからもう帰らないというか、帰れないというか」
「はへへ、いや、まあ、もういいんですよ」
「最近は結婚というのも、悪くない気がしてきたんです」
「正しいとか、正しくないとか」
「信じるとか、信じないとか」
「結局のところ悔いのないように生きた人が勝ちだと、私は思うんです」
「だから、その」
「もう少し、私のこと」
「………きっと私達、二人一緒でないと駄目なんです」
「やっぱり、開けます」
「ここにいる間だけなんて言わずに、連れ出してあげます」
「危ないので、下がっていてくださいね」
———小さな斧が、振り下ろされる。
———少女は扉を解き放ち、鋭い光が差し込んだ。




