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風紀委員は妹!?①

「はぁ、授業ってやっぱりめんどくさいよねぇ」


「まぁねぇ。だからこうしてさぼってんじゃん」


「なんであんなに授業って眠たくなるんだろ? 有紗ちゃんと楓ちゃん分かるぅ?」


 ある学校の日、あたしは友達の『前田梓まえだあずさ』と『秋山楓あきやまかえで』で屋上でさぼっていた。


 理由は単純明快、すっごく退屈だからである。そして時間を潰すのには心地の良い屋上の風に当たっているのである。


「そういやさ、最近有紗って本当に気疲れしてるよね、しかも教えてくれないし」


「有紗ちゃん、彼氏いるなら素直に吐いた方がいいよ。JKしかいない女子高じゃ、色恋沙汰とかに飢えてるし。下手な動きしてると食われちゃうよ」


「余計なお世話。この前なんか、みんなで追っかけて来て、動物園かと思ったわ。余計に疲れたよ」


 今、梓が言ったように女子高ってのは男がいないせいで、恋愛ごとには敏感なのだ。だから怪しまれつつも、あたしはメイドさんの事をずっと黙っていた。


 メイドさんって存在が、あたしの家で同棲してるなんて、普通の恋愛話よりも常軌を逸したやばさだ。言えるわけがない。まぁだから色々と疲れるんだけど。


「はぁぁーーー、もう色々めんどいなぁ」


 あたしはそう言葉に出しながら、大きなため息をつく。そんな中だった、手にっていた携帯が震えた。どうやらlineが来たようだ。あたしはすぐに画面をタップしてメッセージを確認した。


『お嬢様。こんにちわ。今日は大学が早く終わりそうなので先に夕食を用意しています。ゆっくりと帰ってきてください』


 という文書が、メイドの『九条朱音くじょうあかね』さんから来ていた。


「ふふ……」


 それを見てなぜかあたしは微笑んでしまった。しかしそんな表情を見逃さない悪友二人はあたしにツッコミを入れてきた。


「なににやけてんの有紗ぁ? 誰からのメッセージですかぁ?」


「有紗ちゃん、彼氏、彼氏なんでしょ? 顔すっごくにやけてたよ」


「べ、別ににやけてないし」


 そう指摘されて思わず、携帯をポケットにしまい、そして片方の腕で顔を隠した。なんでこの人のメッセージを見て、にやけないといけないのだ。


 だが三人でわちゃわちゃしているそんな時、授業終了のチャイムが鳴り響いた。


「あ、授業終わった」


「今の時間は12時、ご飯の時間だね」


「梓と楓はどうする? 今日、弁当作ってないからあたしは購買に行くけど」


「あたしらも無いからいいよ」


「うん、いこいこ」


 三人でそう話し終わると、そのまま校舎に続く扉を開けた。そしてそのまま階段をのんびりと降り始めた。しかし、そんな時あたしたちの前に厄介な人物が現れた。


「あなたたち、やっぱりさぼってたのね」


「「「げ!?」」」


 その顔を見てあたしたちは一気に嫌な顔をする。そこにいたのは眼鏡をかけた短めの黒髪の少女、『藤宮優香ふじみやゆうか』であった。


「いっつもあなたたちは!! 真面目に授業受けなさい、後輩たちも真似しちゃうでしょ!?」


「そんなの知らないよ。授業が暇なのがいけないんでしょ?」


「そんなふざけた理由認められるわけがないでしょ、高宮さん? 学校は勉強をする所で、決められたルールを守る訓練をする所でもあるの。それを毎回毎回……」


 また始まってしまった。彼女はくどくどとあたしたちに説教を始めた。この『藤宮優香ふじみやゆうか』という女生徒は、学校の風紀委員をしており、腕にその腕章を身に着けている。ものすごく生真面目な堅物性格で、いつもあたしたちに絡んでくる。


 初めて会った時、こんないかにもな人間がいるんだと驚いたものだ。そして初めてさぼりを指摘されてから、なにかと彼女はあたしたちをマークしている。


「今回の事もそうですが、髪を染めることも注意しましたよね? それにスカートの丈のサイズも短すぎます。高宮さんだけじゃなくて、前田さんや秋山さんもですよ、本当にあなたたちは」


(あぁ、邪魔くさいのと出会ってしまった)(ったくめんどくさいなぁ)(どうする、有紗ちゃん、楓ちゃん?)


 この人、完全なお説教モードに突入してしまった。仁王立ちしながら、どんどんとあたしたちの校則違反を述べていく。これが始まると昼休みが終わってしまう。はっきり言って付き合ってられない。


 まぁだからすることはただ一つなんだけどね。


「風紀委員さん、後ろで先生が呼んでるみたいだけど?」


「え? 先生? どこにいるの?」


 視線を外したタイミング、それをあたしたちは逃さず、一気にそこからダッシュして、彼女を振り切った。


「じゃ、先行くね」


「本当に騙されやすいな、風紀委員さまは」


「ちょ、あなたたち!! まただましたわね!!」


 後ろで顔を真っ赤に染めて、怒り狂う風紀委員の『藤宮優香ふじみやゆうか』。あたしたちはこんな状況を笑って楽しみながら、食堂へと向かっていった。ただその時、あたしは大きな落とし物をしてしまった。




「あら、高宮さん。携帯落としてるじゃない? ちょっと高宮さ~~ん!! 待ちなさい!!」



 後ろで何か言ってる。それは分かったが、あたしはそのまま気にも留めなかった。




★★★★★★★★★★





「ふふ、それは大変でしたね、お嬢様」


「まぁね。いっつも突っかかって来るから大変だし。やれ、さぼるなとか、やれ、服装が乱れてるだとか、邪魔くさいったらありゃしない」


 あれから数時間後の午後7時、学校も終わり、家の中でメイドさんと食後に食器を洗っていた。そして今日あったことを、彼女にだべっていたのである。


「でもお嬢様がさぼるのがいけないと思いますよ。お気持ちは分かりますが、目を付けられないようにふるまうのもある種の対策になりますし」


「そうかもしれないけどさ。それでもルールにガチガチに縛られる人生は嫌なんだよね」


 食器をジャバジャバと水で洗いながら、少し愚痴を漏らすように言葉を紡ぐ。そんなあたしにちょっと微笑みながらメイドさんは会話を聞いてくれた。


「でもさぁ、もっとめんどくさいこと起きたんだよね。てかこっちの方がショック……」


「どうしたのですか!?」


「携帯落としたぁ。はぁ、多分学校だけどさ、今から取りに行くのクソだるいしなぁ」


「でも早く取りに行った方がいいですよ。学校内ですが、個人情報も入っていますし、悪用される可能性も0ではないです。なんなら私もお嬢様に同行しますよ?」


「い、いいっていいって!! あたしだけでいいから」


 メイドさんはそう言って妙にスキンシップを迫って来る。あたしは思わず、赤面しながら断った。この人、たまにグイっと来るから、心臓に悪い。


「とにかく学校に探しに行ってくるから、遅くなったらママに連絡しておいて」


「あ、お嬢様……」


 あたしは九条朱音くじょうあかねさんの制止を振り切り、玄関で靴を履いた。そして家の扉を開けようとした。しかしその時、急に家のチャイムが鳴ったのだ。


「ふえ!? こんな時間にいったい誰だろう? 今出ますよぉ」


 新聞配達、それともママが荷物を頼んだのだろうか。あたしはそのままドアを開けた。だがそこには思いもよらない人物がいた。


「お邪魔します。高宮さん」


「げ!!? なんであんたがここに!!」


 なんと出てきたのは『藤宮優香ふじみやゆうか』だったのだ。


「お嬢様、どうしました? 大声を上げて」


 声を上げてしまったことで、メイドさんも扉の前にやって来てしまう。だがその瞬間、『藤宮優香ふじみやゆうか』の表情が一気に変わった。


「お、お姉ちゃん。本当にいた。な、なななんでこんなところにいるの!! 一体どういうことか説明してください!!」



「お、お姉ちゃん~~~~~!!!!!?」



 彼女が言った一言に、あたしはただ驚くだけであった。

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