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ギャルなあたしとメイドさん

「私、もうお嬢様の感情を抑えられません!! キ、キスしてもいいですか!!」


「ちょ、出会って日も立たないのに、キスはおかしいでしょ!!?」


「でも、近くで見たら本当にきれいで、お、お嬢様!!」


「ちょ、あたしら女同士でしょ!! や、やめ!?」


 あたしは17歳の女の子。


 そして今まさに、超絶美人すぎるメイド服のお姉さんに押し倒されて猛烈に迫られていた。


 さてなんでこんなことになったのか。それはまずあたしの自己紹介を絡めながら、時間をさかのぼる必要がある。



★★★★★★★★★★



~5月中旬~



 ある日の放課後にて。学校の授業がようやく終わり、あたしは大あくびをかきながら机に突っ伏していた。


「はぁ、だるぅ……」


 あたしの名前は『高宮有紗たかみやありさ』。現在17歳の今を時めくJKである。通っている学校は『城ヶ崎学園しろがさき』という女子高であり、男っ気は皆無だ。


 自分の容姿はまずまずといったところ。身長も165㎝となかなかにある方だ。でも可愛くなることには努力したいので、慢心はしない。毎日のメイクは欠かさないし、ファッション誌もチェックしている。髪型や髪色だって、流行に合わせて変えている。


 今は金髪ポニテというオーソドックスな格好だ。制服のスカートも短くして、スマホや鞄もちょこちょこデコったりもしている。


 まぁだから勉強なんかする時間はないし、遊ぶのが大変で学校はいつも眠い。


「おやおや、不良生徒がおられまずぞ。授業中居眠りとは言い御身分ですな、有紗ちゃん」


「有紗っていっつもさぼってるよね。あたしを見習いなさいな」


「うっさいな。授業は寝てないし、今寝てただけだし」


 そんな中、あたしの側によく話す友達が寄ってきていた。声で誰かは分かるのだが、一応、顔を上げて確認する。


「よだれ垂れてるよ、有紗ちゃん。髪もすっごいことになってる」


「いつもながらおもろねぇ、有紗は」


「え、うそ!? うわ、まじじゃん。前髪ぐちゃぐちゃ~」


 あたしは友達二人に指摘されて、慌てて鏡を見て髪を直していた。メイクも若干崩れており、寝ていたのがあだになってしまった。


 ちなみに側に来た二人は、あたしの友達の『前田梓まえだあずさ』と『秋山楓あきやまかえで』である。梓は小学校からの付き合いで、楓は中学校の頃からの付き合いである。いわゆる幼馴染というやつだろうか。


 あたしをちゃん付けで呼んできた方が『前田梓まえだあずさ』という女の子。いわゆる小動物系のかわいいやつで、短いショートヘアに少し茶色っぽい髪形をしている。身長はあたしの10㎝くらい低い。


 一方の『秋山楓あきやまかえで』は、あたしよりも身長が高く、スタイル抜群のやつだ。髪は元の黒髪ベースだが、髪先は青のメッシュで染めており、クール系を気取っている。ただ見た目に反してけっこうグイグイ来る積極的な女の子である。


「有紗ちゃん、授業さぼった罰じゃないの?」


「ほんとほんと」


 こんなことを言ってるが、不真面目なあたしに絡んでいるのだから当然こいつらも不良生徒だ。さぼるときは勝手に三人で授業中に外に遊びに行くし、よく先生にも怒られるし、同類である。


「うっさいし……。それよりもあんたら」


 この二人への不満を漏らしながら、あたしは懸命に髪を直す。しかしむかついたので、あたしは梓のお腹、そして楓の胸を鷲掴んでやった。


「きゃあ!?」


「うわ!?」


「梓、結構出てきてんじゃん。お菓子食べすぎじゃね? 楓はまた育ったよね。うらやまけしからん!!」


 掴んだ瞬間、二人から悲鳴が。そして次の瞬間、二人から脳天チョップを喰らった。


「「なにすんの!!」」


「痛った!?」


 そして頭にすさまじい痛さが走ることになる。思わず大声を上げてあたしはそのままノックダウンした。



★★★★★★★★★★



「じゃあねぇ!!」


「また明日!!」


「うん、また明日!!」


 今日の学校の授業が終わり、あたしたちは帰路を辿る。そして分かれ道に差し掛かり、梓と楓と別れた。


 そしていつものように家へと向かう。だがその最中、持っていたスマホに着信音が流れた。あたしは何かと思い、鞄に入れていたスマホを取り出した。


「あれ、ママから何か入ってんじゃん。どうしたんだろ?」


 スマホを見ると、そこにはママからのメッセージ来ていた。そして画面をタップするとそれらが表示された。


「遅くなっちゃうかぁ。じゃあご飯作んないとね。取り敢えずカレーかな? ママも好きだし」


 ママからのメッセージは『今日は遅くなる』という文面だった。これもまたいつも通りの連絡である。


 実は、あたしは父親を早くに失くしている。そのため、ママが働きに出ているのだ。会社での地位も高いため、生活費には余裕があるみたいだけど、その分残業も多いらしい。だから帰りが遅くなるのは毎回の事だ。


 だからあたしは家では家事をよくしている。不真面目なあたしだけど、ママの事は好きだし、これくらいは当然と思う。あたしは少し気合を入れて足を進める。


 でもママのメッセージには続きがあった。文の初めだけで完結していると勘違いしたあたしは続く内容に目を通さずに、そのままスマホを仕舞ってしまったのである。


「はぁ、ようやく家だよ。んじゃ、鍵開けてっと……」


 ママからの連絡を受けてから数分後、あたしは自分の家の前に着いた。こんなご時世で母子家庭だけど、一軒家の三階建ての家である。もう見慣れたけどなかなかに立派だと思う。


 そしてあたしはそのまま家の鍵を取り出そうとした。しかし、なぜか家の中からは作ろうとしていたカレーの香りが漂ってきた。


「あれ? ママ早く帰ってきたのかな? 遅くなるって言ってたはずなのに?」


 不穏に思ったあたしだったが、恐る恐るドアノブに手をかけると、鍵はかかっておらず、そのまま扉が開いてしまった。


「え?」


 思わず、驚きの声も出てしまう。そしてそのまま少し怯えながらも家へと入る。するといつもママとあたし用の靴しかないのに見たことのない誰かの靴が置いてあったのである。


「え、本当に誰かいるの?」


 さらに料理の香りも増し、ぐつぐつと煮込む音まで聞こえる。本当に知らない誰かが料理をしているようである。


「…………」


 あたしは忍び足で台所へと近づく。そしてあたしの視線にはある人物が写り込む。そこには長身の女性の人が立っていたのであった。


「だ、誰よあんた!!?? 勝手に家に込んで!!??」


 あたしは震え声になりながらもなんとか勇気を振り絞り、台所で料理するその女性に啖呵を切った。するとあたしの声でようやく気が付いたのか、顔をこちらへと向けた。


「あっ……」


 顔を振り返った瞬間、そのきれいなロングの黒髪がふわっと舞う。そしてとても美しい顔があたしの視界に映し出された。


 整った顔立ちに、白い肌、女優さんみたいにスタイル抜群で、流れるようにきれいな黒のロングの髪、白のオーソドックスなメイド服を身に着けた美女がそこにいたのである。


 あたしは思わず、見惚れてしまう。だがすぐに我に返ると、その女性に向かって再び言葉を投げかけた。


「ちょ、ちょっとあんただれよ!!? 人に家に!!??」


 しかしそんなあたしの問いかけに、彼女は特に動揺することもなく、にっこりと笑顔を向ける。


「これは失礼しました。私、今日からここの家のメイドをすることになりました。『九条朱音くじょうあかね』と申します。以後お見知りおきを、有紗お嬢様!!」


「はぁぁぁあぁああ~~~~~~!!??」


 そして彼女はさらっととんでもないことを言ってのけたのであった。

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