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破壊と創造-1

 ここに来るまでの道中で、リーフはアルテからダンジョンでの話を聞かされた。


 ダンジョンマスターを倒したのはリーフであること。そして、リーフの【回復魔法】が、本当は【破壊魔法】と【創造魔法】の合成であること。


 ダンジョンマスターを倒した記憶は戻らなかったが、その話を聞いた瞬間、不思議とに落ちた。自分の力についてだ。破壊と創造――今まで名前のつけられなかった現象に、その二つの言葉はパズルのピースみたいにピッタリはまった。


「ぎぃゃああああああああああッ!!!!? いでぇ、イデエエエエエエエエエエエッ!!!!!」


 左胸から先が丸ごと消し飛び、血だるまになった豚男が泣き喚きながら酒場の床を転げ回る。一瞬にして血の海をつくったゴッソの姿に、酒場は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。


「逃げるなよ。逃げたら同じ目にわせる」


 今にも酒場を飛び出しかけていた数名の客をギロリと睨んで、リーフが言った。途端に酒場は凍りつき、逃げようとしていた魔族たちもその場に固まって震え上がった。


「や、やめでぐれよぉ……! いでぇ、いでぇ……どうじでごんな、ひどいごど……ッ!」


 眼球を飛び出させて、びく、びくっ、と痙攣けいれんしながら這ってきた肉の塊が、リーフの足首を掴んだ。リーフはしゃがみ込み、変わり果てたゴッソの体に手を触れた。


「ひぃぃぃぃぃぃっ!!!?」


「そう怖がるなよ」


 リーフの手から紫色の光が溢れ、ゴッソの失われた左半身が排水溝のような音を立てて再生していく。


「ひっ……ひっ……!?」


「ほら、もう痛くないだろ」


「ふ、ふざけんなテメェ……ッ!! リーフの分際で……こんなことしてタダで済むと思っ――」


 完治した左半身が、再び轟音とともに破裂した。のどが裂けるほどの絶叫を上げ、ゴッソの体が魚みたいに跳ね回る。


「呆れた人だ」


「おっ、おっ、オマエェ……ッ!! 暴力はやめろとか言っといて、結局オマエも、ぼ、ぼ、ぼ、暴力じゃねえかぁッ!!」


 涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を歪め、目を血走らせながらゴッソが喚いた。


「話が通じる相手なら、こんな手段はとらないよ」


 アルテがギギを打ち負かしたとき、リーフは不思議な感覚に包まれた。同じ暴力なのに、アルテのは嫌な感じがしなかったのだ。



『いやなことをしてくる相手に、やめてもらうにはどうすればいいと思いますか?』


 ここまでの道を三人で歩いているとき、リーフはアルテに尋ねた。


『ぶん殴る』


『えっと……できれば、暴力以外で』


『無理だろ』と、アルテは言い切った。


『言葉が通じても話が通じない相手はいる。そんなやつにいくら対話を望もうとムダってもんだ。大抵の場合、そういうやつはこっちをナメてる。だからまずは、その高い鼻へし折ってやらなきゃダメだ。『見下みおろしてんじゃねえぞ』ってな』


 アルテの話は、正しいように聞こえた。今まで、どんなに叫ぼうとリーフの言葉に耳を傾けてくれた者はいなかった。それは自分が、見下されていたからだ。


『それでも……』と、リーフは時間をかけて言い返した。


『暴力は、正しくないと思います』


『え? 当たり前だろ』


 けろっとした美貌びぼうに切り返されて、リーフは面食らった。


『間違ってるやつを相手に、正しいやり方で勝つ必要があるのか?』


 その一言が、リーフの視界をひらく答えだった。



「僕は、間違っているやつを正すためなら、ためらいなくこの力を使う。それが正しくないことだとしても、構わない」


 素手の決闘でナイフを持ち出されたら、こちらも武器を抜くべきだ。そうしなければ殺されて終わるだけ。この世界に審判レフェリーなんていないのだから。


「無能野郎が、調子に乗りやがって、クソがぁ……ッ!!」


 スパァンッ! と今度はゴッソの右腕が破裂した。血しぶきを上げてのたうち回るゴッソを見下ろし、リーフはため息をついて立ち上がった。


 もう、こんなやつと、分かり合いたいとさえ思わなくなってしまった。


 両腕を失って赤い芋虫のようになったゴッソの前にかがみ込み、その頭を鷲掴みにする。奥歯をガタガタ言わせ、全身の毛が抜けるほど怯えているゴッソの顔をつかんで持ち上げる。


「ひっ、ヒイィィィッ!!! 悪かった、オレが悪かったぁぁぁ!! ゆるじてぐれ、ゆるじでぐださい、お願いじますぅぅぅぅぅぅ……!!!」


「さようなら」


 断末魔を上げたゴッソの体を、リーフは完治させてやった。


「ひっ……、ひっ……!?」


 何が起きたのか分からず泣きじゃくるゴッソを尻目に、リーフはきびすを返した。尻もちをつきながら蜘蛛の子を散らすように道を開ける魔族たちの間を歩いて、酒場の出口に向かっていく。


「この街には、強い力を持つ魔族も、そうじゃない魔族もいる。どっちがえらいわけでもない。次、ここにいる誰かが理不尽に暴力を振るうことがあったら、必ず僕が壊しにくる」


 それはリーフが初めてついた嘘だった。リーフはもう、二度とこの街に帰ってくるつもりはなかった。縮み上がる魔族たちの前を素通りして、リーフはゆっくりと酒場から立ち去った。

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