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ある五夜 そして、マナティーがもっとも近くで見える場所で僕とゾンビは再会した

「来たか」


 金のメッキが所々剥がれた懐中時計を閉め、海に漂う藻屑もくずのようにのーんびりと泳ぐマナティーからガラスに写るZを見る。


「改めて久しぶりZ」


 後ろでナイフを構える無言の彼女は、マスクをつけてなかった。


 今まで素顔を見せなかったのは私を楽に殺すためだったのだろうか……いや、それはないか。


「そこに立ってないで座ったら?」


 ポスポス隣の椅子を叩くが足の裏から根を張ったようにビクとも動かない、それどころか「なんで警戒しないの?」と逆に警戒させてしまった。


「何故、何故かぁ……」

「君は絶対に死ぬのよ」

「その君って呼び方懐かしいね」


 私はつい嬉しくて笑みが溢れた。


「昨日、素直に殺されれば良かったのに……」

「まぁまぁ、そうだ、私の素顔も見たくないか?」


 フランケンの名の由来でもあるチャックを切れば、ブドウの皮を剥がすようにこのマスクはツルンと取れるのだ。


「そんな美しいものじゃないけど、見る?」

「見る」


 では、お見せしましょう……


 ポケットに入れていたこの時の為のニッパーを手に取り、皮膚を塗っている針金をパチンッ、パチンッと切る。


 針金を切る音が部屋に反響する度に走る緊張、Zはゆっくりと吸い寄せられる様に私の前に来る。


 やがて全て切り終わり、帽子を取るように上へ……


「その顔……」


 私の顔を見た瞬間、化け物を見たような顔をして握っていたナイフをカランと床に落とした。


 まぁその反応が普通だろう。


 人工模型のような、皮膚がなく赤い筋肉が剥き出しになった顔、きっと今の顔だったらフランケンシュタインの方が数億倍イケメンに感じるだろう。


「どうだ?イケメンか?」


 恐る恐る指先で頬を撫でる彼女に聞く。


「どうして、そんな顔に?」

「日本で静かに住むには、別人にならなきゃいけないからな、空港に行く前に寂れた整形外科に行ったんだよ、そしたら失敗してこの様さ」


 笑って見せるが、彼女は凍りついたようにピクリとも笑おうとしなかい、大体反応は予想できてたが、少しショックだ。


「んで、このマスクは手術したそいつの顔から作ったって訳」

「……」


 振り撒いていた殺気はどこへやら、Zはショックを受けたのか隣に静かに座る。


「でもZが人の顔からマスクを作る技術を覚えてて驚いたよ、昔は凄い反対してたのに」

「君の残してった資料から作ったのよ、まさか私の知らない間に、こうなってるなんて……」

「まさに知らぬが仏、だな

私も血を見たら気絶をする様なお前が、殺しに来るとは思わなかったよ」


 私は下を向く彼女から、マナティーの方に視線を移し「今日も綺麗だ」と一言。


「やはり手を汚した人間は、何処行っても平和な暮らしはできないんだな」


 あの時みたいだ、そう別れ際の時、話そうとしないZと慰めようとする私、もしこうなる未来を知っていたらあの時どうしただろうか。


「なんで私をあの時置いていったの?」

「それはZには幸せに暮らしてほしかったからにきまってるだろ、まさか君がこうなって居たとは思わなかったけど」

「そう」


 再び静寂が辺りを漂う、彼女はやっと前を向いて大きな水槽に目をやった。


 人魚のように優雅に泳ぐマナティーを見て「初めて水族館に来たとき覚えてる?」とポツリと言う。


「覚えてるよ、あの時見た熱帯魚は綺麗だったな」

「あの時に戻りたい」

「あの時よりも平和な生活がまってるさ」

「まだそんな夢物語を」

「あの時言った約束の場所へ行けば平和さ」


 私は懐からあらかじめリロードされた銃を出し、隣に座る彼女の脳天に風穴を空ける。あまりにも早く、彼女は反応できずそのまま前へ体がぐらりと傾いた。


 床すれすれのところでキャッチして、椅子に座らせるとZのコートからバッチを取り、床に落ちているナイフも拾い上げ再び隣に座った。


「あーあー、聞こえてるか?」


 車の中で二人の会話を盗聴していた先輩は「聞こえてるよ」と独り言のように答える。


《先輩、出世おめでとう……》


ー マナティーが一歩手前から見える場所で待ってる ー


 それを最後にバッチは破壊されたのか、耳を突く砂嵐の音が流れる。


「聞いたな!早く行くぞ!」

 

 5人は車から降りてマナティー館へ走った。

ドアを開けると辺りは暗く、空調機の音がやけに大きく聞こえた。


 一番前へ行った時だった、映画館のスクリーンのような大きな水槽に2つの大きな水泡が踊るように上へ上がるのを先輩は見て口角を上げる。


「そして、マナティーがもっとも近くで見える場所で僕とゾンビは再会した……か」

こんにちは?こんばんは?おはようございます?

おはこんばんちわ!ロリです!


まずは最後まで読んでくださりありがとうございます。


『そして、マナティーがもっとも近く見える場所で僕とゾンビは再会した』

は仕事で麻薬関係のポスターを作ってるときに思い付いた作品です。


いかがだったでしょうか?


一人称の小説が大好きなのでいつもとは少し変えてみました。


また一人称視点のお話の練習もかねて、脊髄反射でなにかお話を書こうと思うので、その時はまたお付き合いしていただけると幸いです。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます。


今連載中の『新訳・少女と少女は鏡面世界をさまよう』も良かったらよろしくお願いします!ペコリッ


ジャンルはダークファンタジーです。


URL↓

https://t.co/vs8mJhr0Px

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[一言] 面白かったです! いずれ連載中の作品も読みに行かせていただきます。
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