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仲間?―望乃夏

「................」

「い、樹................?」

「じー………………………………」

………………な、なんかやりづらいなぁ………………。ボクがおたまの上でザラメを炙って溶かすのを、イツキと呼ばれた方――あ、ちっこい方ね。――は食い入るように見つめている。

「................見てなさい、これからがすごいんだから。」

新入生を威圧して怖がられてた雪乃は、一転して自慢げにその様子を解説してる。………………しかもテキトー、かつ間違いだらけの知識で。……………………まぁいっか。こういう雪乃も可愛いし。

「…………………………もう、雪乃は見てるだけでしょ。」

とりあえず雪乃をたしなめつつ、お玉を持つ手を揺らす。

「................ん、もうそろそろかな。ここからが本番だから、よく見ててね?」

ボクはそう言うと、割り箸の先に重曹を塗って溶けたザラメに突っ込む。………………ここまでは誰でもできる。問題はその後で、素早く火から下ろしてかき回す。………………ざっつ、ぱーふぇくと。

「す、すご、い................」

長身の子――こっちは確か、マホロと言うらしい――が、初めて感情を漏らす。同時に、髪の毛で隠れたその奥がふとした瞬間に見える。………………うん、ユースちゃんが好きなアレじゃなかったよ、ほんと。

「カルメ焼きよ。えーと、重曹が熱で溶けて………………………………んーと、望乃夏、なんだっけ?」

「そこでボクに振るの!?………………………………ったく。」

雪乃ったら、さんざんデタラメ教えこんどいて肝心なことはボク任せなんだから………………………………。しゃーないなぁ。とりあえずお玉をお皿の上に置いて黒板の前に立つ。

「んーとね、まず砂糖が熱せられて液体になるの。そこに突っ込んだ割り箸には炭酸水素ナトリウム、つまり重曹からなる訳で、これが熱によって炭酸ナトリウムと水と二酸化炭素になるわけですよ。それをうまいことああしてこうして………………こう!………………さて、質間は?」

つらつらと解説し倒して反応を伺うと、以外にも反応は早かった。

「はい!」

ちっちゃい方が勢いよく手を上げる。

「はい、そこの君。」

「説明が全く分からないので、もう一度作ってるとこ見せてください。」

ボクは全力でズッコケてやったよ、うん。………………あ、メガネ落とす所だった。

「................し、しょうがないなぁ........................なら今度は本気でいくからね?」

青筋をぴくぴくさせながら、今度は気合いを入れていく。お気に入りの白衣を着ると、今度はザラメを計量スプーンで測りとって火にかける。………………ふ、ふふふ、この『科学部のマッドサイエンティスト2号』を怒らせたな?

「………………………………雪乃、そこの計量スプーンでソーダ3gキッチリ測りとって。」

「さ、3gって………………」

「………………………………ごめんボクが悪かった。じゃあ雪乃はこれ持ってて。いいって言うまで火から下ろさないでね?」

雪乃にどアップで迫って念を押すと、重曹をキッチリ測りとってお玉の中に突っ込む。

「今っ。下ろして。」

ああもうめんどくさいっ。お玉をひったくると、濡れ雑巾の上で慎重にかき回し始める。すると、さっきよりも大きく膨らんで、そのまま固まった。

「………………………………ふう。上手くいった。」

額の汗を拭うと、樹ちゃんがぱちぱちと手を鳴らす。

「………………………………ふむふむ、見てて飽きないです。」

「ふふんっ、君もなかなか分かってるじゃないか。」

「………………あたしも、ここに入れるの?」

「もちろん。待ってて、書類とか作るから。」

「………………あ、でも私はネコさん追いかけるのが好きなの。だけど、ぼかーんって爆発するのも面白そう。」

「いやこの建物吹っ飛ばすのはダメだからね?やっては見たいけどさ。」

そんなふうに話が進んでいく。

「................全く、望乃夏は科学バカなんだから。」

雪乃のつぶやきが聞こえた気がして顔を上げるけど、樹ちゃんの『じー………………』が面白かったので忘れる。

「あ、あのっ………………」

ごめんやっぱ気になる。しかも雪乃、なに新入生口説いて引き込もうとしてんのさ。

「こらこら雪乃。新入生が困ってるよ。」

「ご、ごめんなさい………………つい。」

あ、雪乃がしょげた。

「い、いえ………………………………私、体育、苦手、なので………………」

「あー、分かる分かる。なんでこの世に体育なんかあるんだって、ボクもずっと考えてるもん。」

「望乃夏は軟弱すぎるのよ。」

それを言うなら雪乃はばけ

「………………何か言ったかしら?」

イエナニモ。

「あ、あのっ、それじゃあこの辺で………………………………ほら樹、お邪魔だし、行くよっ。」

「………………やだ。もっと面白いことする。」

話し合いが平行線になりそうなので、助け舟を出してみる。

「あー、なら終わったらボクが責任もって送り届けるからさ。キミは別のとこ見てきたら?特にこの階は奇人変人の集まりだし。」

「望乃夏がそれ言うの?」

アーアーナニモキコエナーイ。

「そ、それなら、失礼、します………………樹、迷惑かけちゃダメだよ?」

そう言うと、静かにドアを開けてマホロちゃんは出ていく。

「………………残念ね、素材は良さそうなのに。」

「雪乃はそればっかりだね。」

「………………だって三年生も抜けちゃったし、私が一からまたチームを作らなきゃいけないのよ。その為に残りの5人………………いや、2人はもう居るからあと三人ね。集めなきゃいけないのよ。………………それが、選ばれた者の使命。………………なんちゃって。」

雪乃が真面目なことを言ったかと思えば、最後は笑い話にする。………………うんうん、雪乃もだいぶ柔らかくなったよね。

「………………さてと。私もそろそろトレーニングに戻るわ。ありがと望乃夏、ご馳走様。」

「そう思うならザラメ代置いてってよね?」

「………………へ、部屋に帰ったらちゃんと払うわよっ!!」

雪乃はぷりぷりしながら部屋を出ていく。それと同時に、樹ちゃんが『忘れないで』とばかりに袖口を引っ張る。

「はいはい、次は何が見たい?」

新たな『同胞』を前にして、ボクは高ぶっていた。

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