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過去の階

ぜ,前回投稿が2018…?

「……とまぁ,こういうわけなんですよ」

「ふぅん,中学の頃の灰谷さんてそんな感じだったのね」

「あーうー……」

 隣のベンチでは,その灰谷さんこと月夜ちゃんがもののみごとにへっこんでいて。

「おーい…」

 つんつん,つくつん,つんつくつん。つっついて遊んでみるけど全然反応がない。こりゃだめだ完全にへっこんでる……

 そんな様子を見かねたのか雪乃が,

「もう,なにもそんなに落ち込むことないじゃないの。誰にだって恥ずかしい過去ぐらいあるじゃないの」

「……そーゆーことじゃないんですよぉ…」

 相変わらず伏せた視線で答える。

「過去は過去だから変えられないってのは十分承知なんで,別に黒歴史はいいんすよ…問題はそれを…」

 一瞬上げた視線でボクを見る。

「……憧れてる人に聞かれてるのが嫌なんすよぉ……」

 あ,雪乃への視線だったのか。

「まぁ,気持ちはわからないでもないわね。私も……うん,望乃夏に見られたくないとこだってあるし」

「そーお?わりと見せられてる気がするけぐほぉ!?」

 左フックがレバーにクリティカルヒット。さ,最近また威力上がったんじゃないの…?

「それにしても部長,まさかあの星花に進学するとは思わなかったっスよ。元気でやってるッスか?」

「そうそう,あの魔窟でねぇ」

「ま,魔窟とか,言ったらダメだから……特にこの方の前では…」

 え,うちのバレー部そんな風に言われてんの?てか月夜ちゃん,めっちゃ青ざめてるし。雪乃と後輩ちゃんのことを何度も見比べてるし。

「いやー魔境でしょうあそこはぁ,人外集団だって聞きますし」

「そ,それ以上はダメだって…」

 横目で雪乃を見るけど特に顔色は変わってない。手は若干震えてるけどまだ拳は作ってない,うん,まだセーフだ。

「というかその傷さ,月夜,バレーなんてまだやってるの?あんな痛いやつ」

「え,マジっすか。まだやってんすか,腕赤くなるし勝てないし傷ばっかしでいいとこないのに」

 ん?「なんて」って,どういうこと?

「そーそー,てか月夜だって押し付けられるように部長なんてやってたのにどこにまだ未練が」

「ちょっと」

 ドスの利いた声が割り込む。ん,話は気になるけどそろそろ雪乃を止めたほうがいいかな?と立ち上がったボクのことを月夜ちゃんが制す。

「あー,えっと,あたしはバレー好きだから。そっちは嫌いかもしんないけどさ。少なくともあたしは今楽しい,いや今「も」楽しいかな」

 無難にまとめたいのか,それとも不器用なのか。それでも月夜ちゃんはまっすぐ前を見て彼女たちにそう告げた。

「えー,どうしちゃったんすか急にやる気出しちゃって」

「あんたさ,飾りなのに時々本気になったふりしていいとこ取るよね。何,後ろの人たちの前だからかっこつけてる?」

「ち,違う,そんなんじゃ」

 勇気は出したけども追い込まれる月夜ちゃん。……ん,ここはボクたちの出番かな。

「はいはいそこまで。君たちがバレーのことをどう思うかは勝手だけどね,それを誰かに押し付けんのはダメだよ」

「あん?どちら様?」

「つ…灰谷ちゃんのお姉さん,ってとこかな」

「お姉ちゃん!?」

 ものすごい勢いで振り向く月夜ちゃん。きみさっきまでのテンションはどこに置いてきたの?

「それにさ,うちのバレー部を魔境だの人外だの散々言ってくれたけどね。それ当事者が聞いたらどう思うのかな?」

「いいじゃないの,私たちと月夜しか居ないんだから」

「…だ,そうですよ部長さん」

 振り向いて雪乃を前に押しやろう…としたら既に自分から歩いてきてて。

「初めまして,かしら?星花女子学園 当代バレー部部長の白峰と申します」

 ニッコリとほほ笑むけど目元が笑ってない。

「この度はうちの部員と部のことを色々と貶していただいて」

「し,しらみねって…」

「ま,まさか…」

「タダで帰れると…思ってるのかしら?」

 ぽきぽきと指を鳴らしてみせると,急に周りが静かになって。

「し,しらみねゆきの……あ,あの破壊砲の…」

「ひ,ひぃっ…」

「いけー雪乃,やっちゃえー♪」

 その声を合図に,月夜ちゃんの知り合いたちは一目散に逃げていく。

「ひぃぃぃ!?」

「ぎゃぁぁぁ食べられるぅぅぅぅ!!!」

「ふん,一昨日来るといいわ」

「雪乃それ意味が違うから」

 手を払う雪乃をなだめつつ,ボクたちは月夜ちゃんに向き直る。

「……さ,帰ろっか」

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