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お買い物その2。―月夜

わけも分からぬまま墨森先輩に引きずられて、さっきの制汗剤売り場まで引き戻される。

「………………あら、遅かったじゃないの望乃夏。」

制汗剤のボトルを前にして難しい顔の白峰先輩は、こっちに気がつくと、そのむすっとした顔を更に不機嫌そうにする。

「ごめんごめん、なかなか見つからなくてさぁ。でもほらっ、また買い足したから。これで雪乃とまた洗いっこできるね。」

「そ、そうねっ………………///// でも望乃夏、やっぱり洗いあうのは髪の毛だけでいいわ。………………ほら、これからもっと暑くなってくし、軽くお湯浴びただけじゃきっと………………」

白峰先輩は、今度は一転してそわそわし始める。………………そうかなぁ、軽くお湯かければそんなに気になんないと思うけど………………って、それはあたしが気にしないだけか。

「ていっ」

「あうっ!?」

あ、墨森先輩のチョップが白峰先輩の頭を直撃した。

「もうっ、そんなの心配しなくても大丈夫だよ~。 匂うからって雪乃のこと嫌いになったりしないし。」

「で、でも私の方は気になるのよ………………望乃夏に悪いかなって」

「そんなもん、なのかなぁ………………ボクなんかなんも考えずに体育のあと雪乃に抱きついたりしてるけど」

「そ、それは人前だからやめてって言ってるのに………………」

「それにさ、………………雪乃の汗ばんだ匂いなら、お布団の中で嗅ぎ慣れてるし」

「の、望乃夏のバカぁっ!?」

………………私が墨森先輩のセリフを理解するのに3秒程かかった。そして、段々顔が熱くなる。

(………………こ、このお2人は嗅ぎなれるほどお布団の中で………………)

ぽわ~んとピンクな考えが私の頭の中に湧き上がって占領する。………………うぅ、今日からお風呂ご一緒できるかなぁ………………

「ご、誤解だよっ!? 一緒のお布団で毎日のように寝てるねってことだよ、ただそれだけだからね!?」

墨森先輩が更に自爆する。………………………………とりあえずこっちに流れ弾が飛んでこないうちに、そっとその場を離れようとして、

「おっと、逃がさないよ?」

瞬時に首根っこを掴まれる。

「………………私たちのことを聞かれちゃった以上、タダでは帰れないからね? 」

「ひぃぃっ!?」

思わず二、三歩後ずさる。………………し、白峰先輩はおろか、墨森先輩までこんな顔が出来るなんて、聞いてないよぉ………………

「あ、あのっ、私口は硬いんでっ!? だから見逃してくださ」

「ダメよ。………………そうねぇ、代わりに灰谷さんのヒミツでも教えてもらおうかしら?」

「わたしの、ヒミツ………………」

い、いきなりそんなこと言われても………………一番でかいヒミツならあるにはあるけど、これを知られると流石に私の立場が………………いや、亜遊夢達には隠しようがないぐらい知られてるし、いっそそれならこのお二人にも………………

「まぁまぁ、その話は一旦置いといて。………………まずはさ、制汗剤選んじゃおうよ」

「置いといてって………………元はと言えば先輩から切り出した話じゃないですか………………」

「あ、バレた?」

と、誤魔化して、素早く襟首を引っ張ってサンプルを私の背中にスプレーする。

「うひょおっ!?」

思わず変な声が出る。

「あははっ、いい反応。」

「むぅ………………やりましたね?」

私もサンプルを手ににじり寄ろうとすると、白峰先輩が間に割ってはいる。

「やめなさいみっともない。」

「ほら雪乃もっ」

「ひゃぁっ!?」

すかさず墨森先輩が白峰先輩の背中にスプレーする。

「どう?いい匂いでしょ?」

「そ、それはそうだけど………………このひやっとする感じがどうも苦手ね………………」

しばらくくんくんと匂いを嗅いでいたけど、白峰先輩は他の制汗剤を手に取る。

「どうせならこっちのレモンの方が好きだわ。そっちの石鹸の香りは、なんか好きじゃないわね。」

「あ、そう? ならボクは………………うん、このシトラスにしようかな。」

「あ、じゃあ私もこれで。」

墨森先輩の選んだやつを私も手に取る。………………そういえばシトラスとレモンって何が違うんだろ?

「これで買うものは全部かしら? それなら早くお会計しちゃいましょ。」

「ふふっ、雪乃は早くご飯食べに行きたいだけでしょ?」

「………………なんでバレたのよ………………」

なんて会話をしつつ、私たちはドラッグストアを後にする。………………あ、お金は結局お二人が払ってくれた。


「さて、と。この辺に何か食べるとこあったかしら?」

「そうだねぇ………………雪乃の鼻で分からない?」

「私を犬みたいに言わないでくれない? 流石にそんなこと出来ないわよ………………」

「えー、雪乃の食べ物への執念ならできそうな気がするんだけどなぁ………………」

「流石に無理よ。」

頭の上のそんな会話を聞き流しつつ、私は買い物袋をぎゅっと握りしめていた。

(えへへ………………先輩と、同じの)

「ふふっ、そんなに大事そうに抱えなくたっていいのに。」

「………………い、いえっ、なんとなく………………こういうの選んでもらうの、初めてだったんで………………」

一層強くバッグを抱きしめて上機嫌のまま三人でお店を探していると、

「あれ? 部長じゃん」

懐かしい声に振り向くと、

「げっ………………」

中学の時の同期と後輩が居た。

「よ、よう………………」

めんどくさいことになったなぁ、と思いつつ距離をとると、

「えー、なーにそんなオシャレしちゃって? 中学の時めっちゃ地味だったのにー」

「い、いいだろ別に………………」

「先輩、もうアレやらないんですか?アレ。………………『よし、見切った』っての」

「だぁぁぁぁ!?」

やめろっ、私の黒歴史を掘り起こすなっ!? し、しかも先輩達の前でっ!?

「ふぅん、なんだか面白そうね」

「白峰先輩っ!?」

く、首突っ込んでこなくていいですからねっ!?

「ふぅん、なんだか気になるなぁ」

「す、墨森先輩まで………………」

………………なんだか、めんどくさいことになっちゃったなぁ………………

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