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部屋で。―月夜

今回はゆきのの出ないよ

「あっ………………あゆ、じゃなかった、瀬良………………すいません墨森先輩、先上がりますっ」

不貞腐れて風呂を出ていく亜遊夢の背中を追いかけて、脱衣場への扉が閉まる直前に私も割り込む。

「………………あんだよ、灰谷」

「なんだよって………………ちょっとばかし心配になったから一緒に上がっただけだっての。」

「心配だぁ? あのなぁ、確かに白峰のヤツのパンチは凄いけどよ、そんなんでノビるあたしじゃねえっての。」

「その割には昨日ぶっ倒れてたけど? しかも部屋まで担いでったのは誰だと思ってんだよ。」

「………………ちっ、わーぁったよっ。………………さんきゅー。これでいいか? 」

「………………それを水鳥の奴にもちゃんと言えてたら合格なんだけどな………………」

はぁ、とため息を一つ。ついでにくしゃみも一発。………………流石にバスタオル一枚ってのは寒いや、服着よう………………

脱衣カゴから着替えを取り出して身につけると、横目に見ていた亜遊夢のヤツにフンッと鼻で笑われた。

「………………な、なんだよっ」

「あいっかわらず平べったいな、お前。」

「に゛ゃっ」

慌てて胸を覆い隠す。

「こ、こいつ………………人がちょっとだけ気にしてることを………………」

「ちょっとだけならそこまで過剰反応しねーんじゃないの? ん?」

ぐぬぬ………………こ、こいつっ、自分は立派なもの持ってるからって………………

「もげろよお前」

「おい………………」

そんなことを話しつつ脱衣場を後にすると、亜遊夢のあとをついて行って部屋まで同行する。鍵のかかっていないドアを開けると、案の定水鳥はベッドの上でくつろいでいて、

「………………おかえり。 って、月夜ちゃんも?」

「まぁね。………………こいつが風呂場でまた白峰先輩に一発食らわされたからな、途中でひっくり返ったり暴れだしたりしないかどうかの監視。」

「また………………………………?」

「おい待てよ、あれは白峰の奴が………………」

「せ、先輩のことを呼び捨て!? あの『破壊神』の白峰先輩だよ!?」

「へっ、破壊神だか墓石だか知らねーけどよ、そのうちこのあたしがエースになって見返してやっからよ。」

水鳥と私で真っ白な視線を向ける。

「な、なんだよその目はっ!?」

「………………いや、亜遊夢にゃ無理だな、うん。」

「そうだね、白峰先輩には勝てないでしょ。」

「お、お前らっ………………」

亜遊夢がぷるぷると震え出す。………………こいつ爆発させるとめんどくさいし、とりあえずほっとこう。

「………………にしても、まさかこの3人が星花(おんなじとこ)に集まるとはなぁ。全く予想してなかったぜ。」

「ほんと。………………しかも、『あの』瀬良 亜遊夢がにもつ………………ルームメイトになるなんて。」

「おい水鳥、今あたしのこと荷物って」

「ほんと、去年の今頃は想像もしてなかったし………………あ、この煎餅食っていい?」

「あ、それ多分湿気ってるかも。待ってて、今新しいの出すから。」

そう言うとベッドの横のダンボールを漁り始める。そしてすぐに水鳥は新しいスナック菓子を投げてよこす。

「お、そっちも仕送り? 」

「うん。………………あの練習量だと、こっちで買ってる暇無さそうだから、ほんとに助かる~」

「だよなぁ。………………あー、どうせなら小遣いももっと仕送りして欲しいよこっちはー………………」

ごろんと床に横になる。………………せめて月にあと3000円、いや2000円でいいから増やしてくれよ………………

「………………にしても、押し込まれた先でお前らと顔を合わすとか………………つくづく縁あんな、ほんと。」

あ、瀬良が落ち着いた。しかも私のスナック菓子横取りしやがった。

「返せよ………………にしても、まーさか私立のここでこうして3人顔を合わすとは思わなかったし………………てっきり地元の公立か隣のブロックの強いとこに流れると思ってたし、実際んとこ、うちのメンバーほとんど向こうに残ったからな。」

「私んとこもそんな感じ。部長ちゃんが『勝てるとこ行く』って県外飛び出しちゃったぐらいかな?」

「あー、あの口だけ達者な部長さんか…………………何度対外試合でげんなりさせられたことか………………」

「あれでも上の代の受けはよかったし、まぁお飾りってことで選んだんだけどね。まさか常識人枠として副部長にさせられるとは思わなかったけど………………」

「………………ほんと、『部長』って付くと大変だよなぁ」

しみじみと昔のことを思い出す。やれ対外試合のカード相手んとこに挨拶しに行けだの、やれ合宿のプラン立てろだの、やれケンカだのやれ化粧だの………………楽しいと言うより、辛いってのが先行してた気がする。

「………………その点亜遊夢は気楽だったんじゃないの、コートの中で走り回ってりゃそれで良かったんだし。」

「はぁ? バカにすんなよ、こっちだって色々考えて………………」

「考えて、ねぇ………………ネットの向こうから見てたけどスタンドプレーばっかりだったじゃん」

「あ、あれは周りがトロいだけで………………そ、それを言うなら灰谷だってずっと胃が悪そうな顔して周りに指図してただろっ!? あと水鳥はずっとこそこそメモしてたし………………」

「あれは情報収集だってば!………………しょうがないでしょ、顧問の指示なんだから……………… 」

「胃が悪そうな顔って………………まぁ確かに胃は痛かったけどよ………………」

絶対、色々押し付けられてたせいだろうけど………………

「あ、そうだ。 ねぇねぇ2人とも、昨日今日で一通り先輩方や同じ新入生とメニューしたけど、なんか気になる人とかいた? 」

「あたしは当然白峰のやつだ。………………あんにゃろー、いつか見てろよ………………あたしの殺戮スパイクで倒してやるっ!!」

「私はやっぱり経堂先輩かなぁ。とぼけてるけどちゃんと周りを見てるし、状況の変化もちゃんと頭に入れてるみたいだし。………………あとは、………………うん、安栗副部長、かな。」

「………………昨日あれだけイジられたのに?」

「そ、そそそそそれはまた別のことだからっ!? ………………………………そ、そう言う月夜ちゃんは誰が気になるのっ!?」

「わ、私かっ!?………………私は………………墨森先輩、かな。」

「………………………………へ? 墨森先輩って、あの白峰先輩の恋人さんの? どうして? あの人バレー部じゃないみたいだけど………………」

「………………い、いや、心遣いがすごいなって。………………あ、バレー部の気になる人を上げるの? なら、鷹城先輩………………かな。ケガして現役は退いたらしいけど、やっぱり『鷹』って感じがしてすごかったなぁ。」

つい口をついてしまった名前を慌ててごまかす。………………す、墨森先輩って、バレー部じゃないのか………………

背中、気持ちよかったのになぁ………………ちょっと、残念。

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