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くらべっこ。―望乃夏

片足をお湯にさしいれて温度を計る。………………うん、少しぬるめかな。

「………………ほら月夜ちゃん、何してるの。早く入りなよっ。」

「お、お邪魔します………………」

恐る恐る月夜ちゃんがお湯に足を差し込む。………………なんだか月夜ちゃんって、仕草がいちいちネコっぽいなぁ………………。

「うーふ………………」

「いいお湯だよねぇ。」

タオルを頭に載せると、浴槽のふちにもたれかかる。そして足をぴーんと伸ばして、全身の力を抜いていく。

「………………あし、長いんですね。」

「そう? 月夜ちゃんもけっこうながーく見えるけど。」

月夜ちゃんは足を組んで座ってるから、ほんとの長さは分かんないけどね。

「………………比べてみよっか。月夜ちゃん、私の横来て? 」

「は、はいっ………………」

恐る恐る私の横に並ぶ月夜ちゃん。足と背筋をぴーんと伸ばして、二人並んでみる。………………あ、しまったなぁ。明確に身長差があるならまだしも、同じぐらいの背丈のボクと月夜ちゃんは、これだと比べられないや。

「………………よし。なら月夜ちゃん、そのまま脚を開いて?」

ボクは立ち上がって、月夜ちゃんの向こうに回る。

「こ、こうですか………………?」

「うん、それでいいよ。」

月夜ちゃんのつま先あたりに体操座りすると、わずかに開いた足のスキマにボクの足を突っ込む。

「ちょ、ちょっと先輩っ!?」

「はい、そのまま動かないでね? 」

ずるずると足を伸ばしていくと、代わりにボクの足の間に月夜ちゃんの足も入っていく。

「せ、せんぱっ………………ひゃっ!?」

「あ、ごめん………………当たっちゃった?」

「………………め、目の前真っ白になりました………………」

月夜ちゃんが一気にゆでダコになる。土踏まずのあたりに感じる不思議な感触のことは考えないようにして、そっと足を離していく。

「………………とりあえず、ボクの方が足は長いってことで。」

「………………そ、そう、ですねっ………………」

なんとなく気まずい雰囲気の中、そっと隣にまた腰を下ろす。

「………………足を伸ばせるお風呂っていいよね。」

「………………そうっすね。寮に入って良かったって感じるとこの一つです。」

話題を変えようと話を振ってはみるけど、ぽーっとしたままの月夜ちゃんの返事は返すのに詰まって、また話題を変えてみる。

「………………月夜ちゃんって兄弟は?」

「………………一応、アニキが一人。ろくでもねーのですけどね。」

「ろ、ろくでもない………………?」

月夜ちゃんがむすっとする。

「なんというか、反りが合わないというか………………基本的にテキトーなんですよ、アニキは。こっちはきっちりやろうとしてんのに、向こうが台無しにすることばっかで。あと暑苦しいし筋肉だし汗臭いし、何より私と洗濯物混ぜるし、挙句の果てにゃ『月夜、おめーのブラちっちぇーな』ですよ?もうちょい跳躍力があったら脳天にかかと落とししたいとこです。」

「あー、いいなぁ。………………それにしても、洗濯物混ぜるんだ。」

「ええっ。あたしのお気に入りの服の上に汗が絞れるシャツを重ねるんですよ? よっぽど蹴倒そうかと。」

「そ、それは………………」

うっすらと筋肉のついた足を眺める。………………これで蹴られたら痛そうだなぁ………………

「………………ま、最近は諦めてますけどね。………………寮に入れてほんとに良かったですよ。」

「アハハ、わかるわかる。親の目も兄弟もナシに自由にできるもんね。………………うちの場合は親が原因かなぁ。」

「せ、先輩は、親、ですか………………」

月夜ちゃんが驚いたという顔をしている。それを見て話そうかどうか迷った、その時。

向こうの方で、鈍い音と悲鳴が聞こえてきた。

「!?」

「な、なんですかね、今の音………………」

「………………もしかして、また雪乃なんじゃ………………」

「と、とりあえず行ってみましょうっ」

お湯を出て、音のした方へと歩いていった。

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