表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/46

聞き取り調査………………?―望乃夏

「………………ふぅん? 」

雪乃が、その子―――さっきはお猿さんとか言われてた―――の顔をじっくりとのぞき込む。

「………………まだ腫れてるわね。それにしても、昨日の今日でよくもまぁのこのこと出てこれたわね。………………しかも、その髪は自分で切り落としたの? 」

「………………私が、切り落としました。亜遊夢ちゃんに、頼まれて。」

水鳥ちゃんがそっと手を挙げる。

「あら、知り合いなの? 」

「………………ルームメイトなんです。それと………………私の地区で『有名』だったんで。最初に、同じ部屋になったと聞かされた時には、うんざりして、早く夏休みにならないかな、なんて思ってて………………」

「ふぅん………………『有名』って、こいつは何をやらかしたの? 」

「こ、こいっ、」

咄嗟に食ってかかろうとするのを、水鳥ちゃんが抑え込む。

「………………そこの皆さんみたいな通称は無かったんですけど、私たちの地区では『茶猿』とか呼んで敬遠してました………………とにかく自分勝手で、チームワークも無く、チームメイトですら『踏み台』にする………………そんな鼻つまみ者だったんですよ。そんなんでもそのチームではエース級で、春の大会まで追い出されなかったとか………………」

「へぇ………………そうは見えないけど。」

雪乃が好奇心の混ざった目で値踏みする。

「………………」

「まぁいいわ。とりあえず、ちょっとだけ向こうで『話して』みるから。それまでみんなはアップ続けてて?」

「うぃーっす」

と、雪乃はその子と水鳥ちゃんを引きずって体育館を出ていく。そして扉が閉まった途端、

「………………ふぃー、雪乃が居なくなったな。それじゃそこの見学者くん、色々と教えてもらおうか? ………………雪乃との、それはそれは甘々な生活をっ♪」

部員のひとり――昨日陸上部の人を精神的にノックアウトした人――に、にじり寄られる。

「ひいっ!?」

慌てて逃げ出そうとすると、すかさず後ろからも部員に囲まれて、

「おっと、逃がしませんよ? 」

「つ、月夜ちゃん、助けて!?」

「む、無茶言わないでくださいよっ!?………………………………あと、お話も聞きたいし。」

「う、裏切り者ぉっ………………」

………………はぁ、こりゃ四面楚歌だね………………

「………………わかりましたよ、話せばいいんでしょ? ………………………………で、雪乃の何が知りたいんですか?」

一瞬、みんなの目がきらーんっと輝く。そして一斉に、

「雪乃って部屋だと何食べてんの? 」

「雪乃ってホントの体重いくつよ? 」

「雪乃ってひとりエッチ何回ぐらいしてた? 」

「むしろ雪乃の胸ってどんなもんなのよ? 」

「雪乃って食うとおいしそうだよな。」

「雪乃の看病のことを詳しく。」

「ま、待ってくださいよっ!? そんなにいっぺんには無理ですって………………と、とりあえず1個ずつ答えていきますね。」

部員達がずいっと身を乗り出す。

「………………えと、部屋だと主におせんべいとか、後はポテチの大きいのをよく食べてますね………………机の下に大体隠してあります。………………ゆ、雪乃のホントの体重っ!? そ、そんなの知らないし、知ってても口に出そうものならぶち殺されますよっ!? ………………ひ、ひとりでシてる回数なんて………………胸は、最近膨らんできてる、かな………………ゆ、雪乃は食べないでくださいっ!? ………………看病のことについては、本人がゆでダコになるんで黙秘します………………」

答え終わると、みんなは銘々がっくりしたり、ニヤニヤしたりと反応はバラバラで。

「………………ちぇっ、主要なことはみーんな黙秘かよ………………」

「いいんじゃないですかね? けっこう色んな事わかったし。」

「やーっぱこういう情報源があると強いよな。つーわけで後でメアドあげるから定期的に雪乃の情報を………………」

「あら、誰の情報ですって? 」

「あん? だから雪乃の情報を………………ア、ユキノサンオカエリナサイマセ。」

「………………黒木先輩?ちょーっとお話があるんですけど? 」

「いやあたしには話はないぞっ、それじゃ!!」

「あっ………………、ほんとにあの人はもうっ………………………………ところで望乃夏、ナニを話してたのかしら………………? 」

「ひぃぃっ!? ゆ、雪乃っ、顔が怖いよっ!? ………………べ、別に、雪乃が部屋で食べるお菓子のこととか、後は雪乃は優しいのかどうかとか………………」

「にゃぁっ!?………………ち、ちなみに、誰がどれを訊いたかって、覚えてる? 」

「えっと………………」

周囲を見渡すと、部員の皆様は一斉にそっぽ向いたり(言うなよ言うなよ!?)と、合図を送ってきたりする。

「………………ん、そこの人がお菓子のこと、んでそこの人が部屋での態度。」

「あーこの野郎裏切ったな!?」

「ありがと。………………さてと、今日のメニューは何にしようかしらね………………? 」

部員の皆さんの顔が一斉に青くなる。………………後で相当恨まれそうだな、ボク………………

「あ、あの………………」

袖口がちょいちょいと引っ張られる。振り向くと、

「どうしたの月夜ちゃん?」

「あ、いえ………………………………その、今日も、お風呂、ご一緒していいですか………………………………? 」

「うん、いいよ。」

途端に月夜ちゃんの顔がぱぁぁっと明るくなる。

「あ、でも一応雪乃に確認しないと………………」

………………って、聞いてないね、これ………………もしかして、ボクのシャンプーが気に入ったのかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ