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保健室大パニック?―望乃夏

「おまえ………………」

文化が目を見開く。その視線を追うと、文化とどことなく顔の輪郭が似た子が具合悪そうに柱にしがみついていた。

「どうしたんだよ、まーた『出血大サービス』か?」

「ち、ちが………………それに、大サービスじゃないって………………」

何を言ってるんだと言わんばかりの視線で訴えかける。………………けど、気だるげなせいか、そこまで威力は感じない。

「………………ちょっとばかし、だるいし頭も重いから、保健室来ただけ………………。」

そう言うと、その子はよっ、と空いたベッドに潜り込む。保健室の先生は何も言わずに呆れた視線を向けるだけ。

「………………ったく、明梨はしょうがねーなー………………次の時間はなんだ?」

「ん、数学………………」

「んじゃそれは数学性の頭痛だなっ。計算ドリル処方しといてやるよ。」

「ちょ、文姉………………………………わざとでしょ?」

「ふふん?なんのことかな?」

文化の顔がいつもよりも緩む。………………………………ゆ、雪乃の前でもここまで緩まないのに………………

「文化、その子は?」

「ん?ああ、こいつか?こいつはあたしの妹の明梨。………………ま、そのうち詳しく紹介すっからさ。今は寝かせてやってくれよ。」

「………………………………文姉がずっと起こしてるんじゃん………………」

向こうの布団から間髪入れずに文句が飛んでくる。

「はいはい、あなた達。姉妹喧嘩ができるぐらいなら元気よね?………………ここは仮眠室じゃないのよ、元気なら授業行きなさい。」

「ん、ぬぬぬ、ま、また腹が………………こ、これは腎臓とか十二指腸がっ」

「………………んぁー………………だるいぃ………………このまま、ねかせて………………」

「………………文化、お腹抑えてるけどさ………………腎臓は背中側だよ………………あと明梨ちゃんは演技足さなくたって充分辛そうだからもういいよ………………」

文化の芝居に文句をつける。

「………………ちぇー………………」

「先生、こいつ元気なので連れて帰ります。」

「頼んだわよっ」

「ちょっ、ま、待ってって!?」

文化が慌てて布団をかぶる。どうしてやろうか、と手を伸ばすと、スカートのポケットに入れた携帯が鳴る。

「あ、雪乃からだ………………って、10件!?も、もう、心配症なんだから………………」

「携帯は外でー」という保険医さんの視線を横に受け流しつつ、雪乃に「今保健室ー」と返す。………………まったく、雪乃は心配症だなぁ………………

「さて、文化はボクと一緒に2-5に帰ろうか?」

指をコキコキと鳴ら………………なかったので、とりあえず鳴らすマネだけして文化の布団に手をかける。次の瞬間、廊下の方から地響きが聞こえてくる。そして間髪入れず、保健室のドアがズダーンとものすごい音で開かれる。

「ののかっ!?」

「ゆ、ゆきのっ!?………………ど、どうしたの、そんな血相変えて………………」

「どうしたもこうしたも………………望乃夏が今保健室って言うから、また何か怪我したのかと………………」

「ごめん、それはボクが悪かった。」

主語を省いちゃってたもんね………………『文化の付き添い』って付けるべきだったね………………

「文化が具合悪くしたからさ、ボクはその付き添いで保健室に来ただけだよ。………………もう、雪乃は心配症だなぁ。」

「そ、そりゃ心配するわよっ!!………………だって………………望乃夏のことだもん………………」

雪乃が顔を赤らめる。………………うん、息が上がってるせいで、なんか危ない雰囲気に………………

「………………………………あのー、そこのおふたりさん?盛り上がってるとこ悪いんだけどー?」

保険医さんがチョンチョンと肩を叩いてくる。………………しかも、青筋がくっきりと。

「ここ、保健室………………ね?」

「は、はい………………」

「………………次やったらー、体重とかバラしちゃってもいいんだけどなー?ねー、白峰さーん?」

「ひいぃっ!?」

雪乃の顔が引きつる。………………………………うん、この保健医さんすごいや………………こんなに雪乃を怯えさせるなんて………………

「あ、ん、た、らっ………………」

うっかりすると聞き逃しそうなか細い声に振り向くと、明梨ちゃんがわなわなと震えていて、

「………………………………具合悪いん、だからっ………………寝かせろって、言ってんでしょーがー!!」

ものすごい形相でそう言うと、力尽きたようにベッドにぼふんと倒れ込む。

「な、何だったの………………今の………………」

「あー………………………………文化の妹だって………………」

「そ、そう………………」

「………………うへぇ、久々に見たぜ………………明梨が怒ったとこ………………」

文化まで目を見開いていた。

「………………あなたたちぃ?ここはどこだと思ってるのー?」

「ひいっ!?わ、わかりましたっ!?」

雪乃の手を引いて、慌てて保健室を脱出した。………………あ、文化は置き去りにしてきたけど。

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