大丈夫………………?―望乃夏
………………な、なんとか間に合った………………ボクは教室の自分の机でぐでーっとする。………………雪乃、ボクが散々時間が無いって言ってるのに、『朝ごはんは毎日きっちり食べないと調子が出ないから』とか言い張っておかわりしまくるんだもん………………うっぷ、中身が出そう………………
「よ、よぉ………………墨森ちゃん………………」
端っこの席から、こっちもよろよろしながら声をかけてきたのは、
「………………ふ、文化………………どうしたの、なんかそっちも、やつれてるけど………………」
「………………………………あー、多分、墨森ちゃんと同じ理由………………だと、思う………………」
「なるほど、雪乃が原因か………………」
おおかた、昨日の当てつけに厳しいメニューでもやらせたのかな。ボクは心の中でそっと同情する。
「………………………………墨森ちゃん、何か食べられるものもってない………………?雪乃にしごかれたせいで、メシなんも食ってないんだ………………」
文化がゾンビのように「めしぃ………………」とつぶやく。
「うーん………………何かあるかなぁ………………」
と、カバンの中をごそごそと漁る。すると、底の方からコンビニのクッキーの袋が出てきた。
「こ、これでいい?」
と、食べかけのクッキーを差し出すと、
「お、恩に着る………………」
と、袋ごと強奪して自分の席に文化が戻る。………………………………あれ、あのクッキーいつ開けたやつだったかなぁ………………………………?まぁ、文化だし………………大丈夫だよね?
ぐでーっと机に突っ伏したまま、いつものようにHRからお昼までを睡眠学習に費やした。………………いや、寝てるけど授業は一応聞いてるからね?………………ノートは取ってないけど………………………………
お昼の鐘を合図に身体を起こすと、雪乃を探しに行こうと席を立つ。………………あれ、文化はどこ行ったのかな。
「あれ、文化は?」
「あー、なんか授業終わる度にトイレ駆け込んでたけど………………」
………………………………ま、まさか………………ね?
とりあえず雪乃を探しに廊下に出る。………………えーっと、雪乃は今年も3組だったよね。3組、3組っと………………。教室の後ろのドアから首を突っ込んで様子を伺うと、雪乃の大きな背中はどこにも見えない。仕方なくその辺にいたストレートの髪の人に聞いてみると、
「………………あ、すいません。うちの雪乃………………いや、白峰さんはどこに行ったか知りませんか?」
「白峰さん? さぁ………………わたくしは存じ上げませんけど?」
「あ、ありがとうございます。………………雪乃、どーこ行っちゃったんだろ………………」
しょうがないから一人で食堂に向かおうと振り返ると、ちょうど文化とすれ違う。
「あ、文化。………………だ、大丈夫?さっきよりやつれてるけど………………」
「す、墨森ちゃん………………………………あのクッキーいつの………………?」
「………………ごめん。覚えてない。」
「や、やっぱり………………………………なんか酸っぱい味がしたからおかしいなぁとは思ったけど………………お腹すいてたし全部食べちゃった………………」
「いやその時点でやめとこうよっ!?」
更に顔色が青くなっていく文化を抱きとめると、そのまま保健室へと連行した。
………………この分だと、ゆっくり食堂でお昼は食べられそうにないや………………文化にお詫びのスポドリゼリー買うついでに、ボクもおにぎり買ってこよ………………




