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食べ終わると。―望乃夏

「………………うぇっぷ。」

「もうっ、望乃夏………………お行儀も悪いし、女の子のやる事じゃないわよ………………」

「だ、だって………………うっぷ」

「せ、せんぱ………………うっ………………」

「………………………………ううっ………………」

ボクを含めて、新入生二人も口元を抑えてうずくまる。………………あ、なんか上がってきそう………………

「はっはっは、これぐらいでだらしねーなー。なぁ雪乃っ。」

「そうね、たかがどんぶり三杯ぐらいで」

「た、たかがって………………雪乃は規格外すぎるよぉ………………」

「うう、あくま………………おに………………」

「あら?なんか失礼なこと言われてる気がするんだけど?」

「雪乃、今ここで左フックはシャレにならないからストップな。」

ボクに代わって文化が雪乃を止めに入る。………………な、なーいす………………

「そ、それにしても………………………………なんで文化はケロッとしてるの………………?」

確か、雪乃に最後まで付き合って食べてたけど………………文化もまた、お腹の中に底なし沼かブラックホールを飼ってるのかな………………

「んー、まぁなー。元々家がアレだったしよ。食べられる時に詰め込んどくのが普通だったしな。」

「せ、先輩………………………………そんな過去が………………」

美鳥ちゃんが一歩下がる。

「………………って、おいおいおい。何か勘違いしてないかい?うちはただの専業農家なだけだって。………………いやー、すぐ下の妹がな、これがまた問題児で………………………………」

「も、問題児………………?」

………………いや、文化に妹たちがいるのは知ってたけど、まさかそんなに問題児だなんて………………

「からかわれたからって同級生の男の子を田んぼの用水路に突き落とすわ、怒られたからって先生の車に落書きするわ………………その度にあたしが謝りに行ってたんだよ。」

「そ、それは………………」

「なんというか………………………………」

「す、すごいね………………………………」

………………あ、安栗家すごいな………………

「………………でも泣かせたり、ぐったりするとほんっとに可愛いんだからな?こう、熱の篭った目で、『文姉………………』って。」

「へ、へぇ………………………………」

ふ、文化の妹かぁ………………………………話から察するに、きっとゴリラみたいなガタイの子なのかなぁ………………………………

「………………あ、墨森ちゃん今変な想像したでしょ?いいよ、今度会わせてやるから。ちょうどあいつも今年から星花だしな。」

「えっ!?」

………………………………わ、私たちの後輩なんだ………………

「あぐり、あぐり………………………………そう言えば入学式の時の名簿で見たような………………」

「ふぅん、文化の妹、ね………………うちに誘えないかしら。」

「あ、それは無理だと思うぞ?あいつは飛んだり跳ねたりとか………………うん、致命傷かもな。あいつ『月が重い』し。」

「あ、そうなんだ………………」

文化の妹かぁ、どんな子なんだろ。

「………………っと、立ち話もあれだな。どうだ3人とも、気分は落ち着いたか?」

「………………………………あー、なんかまだ、こう、胃袋が、変というか………………」

「そうか。………………ならその先に談話室あるだろ?そこでテレビでも見ようか。」

「えーっと、今は何か面白いのやってたっけ?」

「私に聞かれても知らないわよ………………今日はバレーの中継もないし………………」

「バレーか………………うん?閃いたぞ。」

文化がポンと手を打つ。

「あたしの撮ったバレー部の記録をこいつら………………あ、墨森ちゃんにも見せようと思うんだけど、いいか雪乃?」

「の、望乃夏にも………………?あんまり、見せたくはないんだけど………………」

雪乃が急にシュンとする。

「………………伝説の白峰先輩の………………………………み、見たいっす。」

「………………あの、もしかして鷹城先輩も………………み、見せてくださいっ!! 」

新入生二人が思いっきり食いつくと、文化が珍しくタジタジになる。

「わ、分かった分かった………………それじゃあ10分後に雪乃の部屋な。」

慌てて文化が階段を駆け上がっていく。

………………………………ボクの知らない、雪乃のバレー部での顔。心のドキドキを抑えながら、二人を私たちの部屋に案内するのだった。

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