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スイーツと部員。―雪乃

「………………………………むすっ」

「ゆ、雪乃ぉ………………………………」

「………………なによ、望乃夏。」

「ど、どうしてそんなに機嫌悪いの………………?」

「それは………………………………その、………………この惨状を見れば分かるでしょ?」

「あぁ、確かに………………」

望乃夏と一緒に背けていた目を向けると、30人ぐらいのオンナノコがお高そうなパフェをそれぞれつついていて。

「………………一番安い餡蜜なら奢っても大丈夫だと思ったのに、なんでまたフルーツポンチだのタワーパフェなんて頼むのよ、もう………………………………」

「………………なんか、ごめんね。ボクまで付き合っちゃって………………」

「いいのよ、望乃夏なら。………………それに、部員達には後でキッチリ『払って』貰うつもりだから。」

目線を向けたバレー部員達がぶるりと震える。………………………………まさかほんとに全部、私に払わせる気だったのかしら?

「と、言うわけでみんな、自分が食べたものの金額は、ちゃんと覚えときなさいよ?でないと………………」

左腕を軽く振ると、土下座して1000円札を出す人が出てくる。

「………………冗談よ、普通の餡蜜の人だけは奢ってあげるから。その代わり変なパフェとかオプションつけた人は自腹切りなさいよ?」

「ごちになりまーすっ。」

いつの間にかちゃっかりとドリンクまで付けていた文化が、カラの器を前に頭を下げる。

「あ、文化は全部自腹ね。」

「なんでよっ!?」

「………………………………言い出しっぺだから、よ。全く、勝手に人に奢らせておいて………………」

おかげで今月の望乃夏とのデート代が飛んじゃったわよ………………もう。

「ふふっ、部長ってのも大変だね。」

「でしょ?部費は副部長に押し付けるにしても、部員の管理もしなきゃいけないし、時にはこうやって親睦会とかも開かなきゃいけないし。」

「親睦会ねぇ………………………………。そうだ雪乃、親睦会ってあくまで『部活動の一環』だよね。」

望乃夏が悪い顔をする。………………うん、言いたいことはわかるわ。

「流石に部費を餡蜜代に流用するわけにはいかないわよ………………。」

ため息をついてそう言うと、隅っこの方で大っぴらにイチャついてた先代幹部組の動きがぎこちなくなる。

「………………………………鷹城先輩?経堂先輩?なんで目を合わせないんですか………………?」

まさか、とは思いつつ追求すると、鷹城先輩がこっそりと口を開く。

「………………………………二回だけ、親睦会費という名目で使った覚えがある。」

「先輩っ!?」

驚きのあまり思わず立ち上がる。………………あのお硬い先輩が、そんなことをしてたとは………………

「………………いや、部員を口説くのに使ったんだよ………………二人ほどな。………………………………ってか、その片割れは白峰、お前だろうがっ!!」

「………………………………………………あ。そういえば確かに、入学してすぐの頃に先輩にスカウトされましたね………………。あの時は喫茶店でしたけど。」

「そう、その時に部費をちょっっっっっと、な。しかも会計を持つと言ったときのお前の晴れ晴れとした顔………………………………」

「や、やめてくださいよ、そんな昔のこと………………………………そ、それよりも、先輩がスカウトしたもう一人って。」

「………………そこにいる。」

鷹城先輩の指さしたその先には、特大のパフェを削岩機のように食べ進める黒木先輩の姿が。

「………………牛丼特盛にハンバーグにミラノ風ドリアにコーラ、しかもデザートにフルーツ盛り合わせだぞ?これで受けてくれなかったら殴り倒そうかと思ったぞ………………………………」

ハァ、とため息をつく先輩を横目に、今度は新入生達の様子を見に行く。………………べ、別に耳が痛くなったわけじゃないし………………。

「どう?この6人は打ち解けた?」

なんだか楽しそうなので、悪いとは思いつつ首を突っ込む。

「あ、はい。………………実は私達みんな、中学の時にお互い対戦してることが分かったんです。………………あの時はお互い知らない仲だったんですけどね。」

「あら、そうだったの。………………確かに違う中学同士ならそういうこともありそうね。でも6人全部と………………」

「いや、それを言うなら白峰さんと鷹城さんもそうじゃないっすか?………………あ、そっか。シードか………………」

「いや、中等部の時はシード使った記憶が無いのよね。だから多分対戦してると思うわ。特にセッターやアタッカー、あとブロックなんかはネット越しに私と競り合った子がいるかもしれないわね。」

「いやいや競り合えませんってっ!!白峰さんの一撃にタジタジでしたから………………」

奥にいた長身の子が慌てて否定する。

「あら、もしかして私とやったことあるの?」

「え、ええ………………うちは弱小だったんで確か一回だけだったかと………………………………覚えてます?黄色と白のユニフォームだったんですけど。」

「ああ、あそこね。確か、サーブの特徴的な子がいるとこ。」

「あー、あの先輩なら威張ってたんで総スカンして追い出しましたよ。」

「………………………………なかなかたくましいとこなのね………………………………。ところであなた、名前は?」

「あ、春木っていいます。主に交代要員ですけど………………」

「構わないわ、アクシデントの時はよろしく頼むわね。」

上機嫌でそう言って席を離れると、後ろから「あ、あのっ!!」と呼び止められる。

「………………なに?」

「………………じ、自分達までおごってもらって、よいのですか?」

「構わないわよ。みんな餡蜜だけだし、………………それにこれから、借りを返してもらうもの。」

6人は一瞬、「やられた」と言うような顔をしたけど私は放っておく。………………………………いや、ほんとはそんなつもりなんてないのよ?ただ頑張ってくれさえすればそれで良いんだけど………………。

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