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ノスタルジア  作者: Hans
2/6

エジプトにて


昔からお前は目覚めが良かったな

ふとそんな声と共に男の影が揺らいだ。


瞼をあけると鉄の箱が目の前にある。


鉄の箱は覗きこんでいたのかこちらが目を開けると少しはしゃいだようにおはようございますと声を掛けてきた。

鉄の箱の癖に馴れ馴れしい、だが愛らしい。


シュレディンガーに今日はどの方向に歩けば良いのかと訪ねると箱の前らしき物を右に向けた。


この先には4大原始文明の一つエジプト文明があったと言われ、かなり発展していたらしい。

ピラミッドやナイル川などあるが一番行くべきなのはアレクサンドリアの大図書館だとシュレディンガーは言う。

箱いわくそこは原始から元の情報がたくさん詰まっており、私の旅路を決める大きな物で、ここに寄らずしてなんとする...とのことだ。


まぁここまで言うなら寄って見るべきなのだろう。


道のりではいくつか最初に見た建物がいくつもいくつもあった。

中に大した物はほとんど無かったが、唯一見つけたのはよくわからない文字の書かれた紙だ。

シュレディンガーに見せるとパピルスだと言う。

パピルスはエジプト文明の物で原始から元、古代、近世まで使われていた紙で、文字もエジプト特有の象形文字。


私はこの紙をリュックの小さいポケットにしまうと建物を眺めつつ考えた。


夢を思い出す。


文明とは人間の唯一の特権だ。我々はその特権を生かし輝きつつ死に行かなければならない筈だ。




私は会話を思い出した。



そもそも動物の王というよりは動物の上位種であるように思える。


もはや動物というよりは人間だ。


のようなことをシュレディンガーに論じてみるとヒトは動物の一種であるという証拠や論説を引っ張り出してきて私を完膚なきまでに叩きのめした。

感情のないやつめ、なんてことを言えばこれはこれで叩きのめされそうだ。

しょうがないから我慢して首をすくめた。


建物を十いくつか過ぎる頃にはたくさんのそれが至る所に見受けられるようになった。

更にいくと鉄の箱が小さく着いたと一言ぼやく。

これが生まれて初めて...かどうかは知らんが、少なくとも私の記憶内で初の生で見る街だ。

アレクサンドリアとはローマ帝国と呼ばれる国の王の名らしい。

それは巨大な国で人間史上4番目に大きな国だそうな。


街の建物の様式は今までの物と同じ物や違うものが入り交じっていた。

だがどれも建材自体は砂岩が主であり、似た印象を与え違和感は無い。


又、私には大きな発見があった。


海だ。今のところ私はシュレディンガーが提供する水しか知らなかった。

とても美しく偉大だ。


箱が言う。人類の文明は最初全て水沿いであったと。

この論説には頷く他ない。


なんと巨大で深く蒼くまた巨大なのだろう。



なんてことを考えていると横からシュレディンガーが角で小突いてくる。

単純に痛い。


何かと訪ねると海の下を指差し.....いや角差した。

昔は地上にあったらしいのだが度重なった文化同士の競いあいで壊されないように海中に移転させたようで実際に海の下からうっすらと神秘的とも妖しげとも判別しがたい光が洩れている。

海沿いの道沿い、やけに高い建物が建っていてそこの入り口から入れと言う。この建物は記憶に無く、見上げつつ建物に入っていく。一番上では何か光が放たれている。


中でシュレディンガーが"灯台"について教えてくれた。

あれは原始文明より船が陸へ戻る際の目印として使っていた物で今も使われているらしい。

よくもまぁ何億年も動くものだとコメントすると、鉄の箱は笑い出した。

あまりに笑うものでムッとしたがすぐに我に返りハッとした。

そりゃあ何年も使ってれば建て替える。全く恥ずかしいったらない。



灯台内部は登り階段と下り階段が螺旋状に続く縦穴のようであった。


シュレディンガーいわくいくら近世文明といえど珍しいらしい。理由は教えてくれなかった。


下り階段は途中から壁が青かった。いや単に青く塗られていた等と言うわけではない。

海の中だったのだ。

この青は深い青で息苦しくなるような感覚もあったし何故か安心感もあった。

地上で見た海とは違う、海の一面だ。


圧倒的な一面に文字通り圧倒されていると、思わず転けそうになった。ずっと下りだったもので一番下まで来たことに気付かず一歩を踏み出したらカクンとなった。

危うく顔面から...考えると冷や汗が出てくる。今も出ているが。


縦穴の一番下は空気が重苦しく、扉もこれまた重苦しそうで頭が痛くなるほどだった。


そんな意に反して軽く開いてしまった図書館の扉を恨めしく私が見詰めているとシュレディンガーが一冊の本を持ってきた。

彼は本来データにしか頼らない主義だが今回はそんなことは関係無いらしい。


"人類の起源"


私にはそれが鍵であった。たくさんあるうちの大切な最低限の扉が開き、その記憶を照らし出す。




私は旅をせねばならなかった。人類を追って。


私は追憶せねばならなかった。人類の記憶を。


私は果たさねばならなかった。自らの義務を。



何故かは覚えていない。

覚えていないというよりは思い出そうしていない気がした。だが今の私には旅し、追い求め、記録しなければならないという感情が溢れ出しており止まらなかった。


思わず走りだそうとしたがシュレディンガーに制止され、深呼吸し、落ち着いた。



落ち着いた頃に一つの単語を思い出した。



"ノスタルジア"



なんのことだったか。シュレディンガーに聞くと追憶という意味だと答えてくれた。


だが私にはもっと大切なことが隠されている気がしてならなかった。


考え込んでいるとシュレディンガーがもう夜だと言った。

私はここに残っていた食料と人類の起源をリュックに入れてとりあえず今晩はここで越すことにした。


もう私も眠い。

続きは...明日かな...






Prologue END


こんにちは。

ゆるキャン△が終わりモチベーションが急降下爆撃をしているHansです。


続き、待ってた人がいるのかと言われれば微妙ですがなんとか書き上げました。


3DSとVitaで書いてるので大変です。

誰か私にノートPCをください。


このあとは出来るだけ速やかに書きます。

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