犬生 - Kensei -
「あなたの愛犬が先に転生してますよ」
なんですと?
ネット小説によくある異世界転生。
でも、愛犬が先って?
もふ愛参加作品。
本作を、物心つく前に一緒に遊んでくれていた、お隣の故サミー嬢(犬種: シェパード)に捧げます。
とある肌寒い朝、俺は死んだ。
死因はわからない。
ただ、気がつけば俺は見知らぬ場所にいて。そして、よくわからない神様を名乗る存在に「あなたは、しにました」とゲームのメッセージみたいに淡々と言われちまった。
「とある事情により転生先を選べます。あなたはどこに行きたいですか?」
安直だなオイ。
「そうだな」
少し考えて、そして言った。
「俺は仕事の都合で、ずっと都会暮らしだった。できれば田舎住まいをしたい」
車が好きだったのに、駐車場代が高くて自家用車も持てなかった。
犬を飼いたかったのに住んでた賃貸はペット禁止だった。
田舎暮らしをするためにためた金は、へんな宗教にハマった親戚の起こしたトラブルが飛び火してそっちに消えちまって。
結局、俺はずっと都会から出る事なく生涯を終えちまった。
「ガキの頃、実家で犬を飼ってたんだ。雑種だけど賢くてね、すごくかわいいヤツだった。
そうだな。
犬と田舎で平和に暮らせる。そんな生活がしたい」
「犬と平和に、ですか。なるほどなるほど」
フムフムと自称神様は、パソコンで何かを調べていた。
つーか、なんでパソコンなんだろう?
「おそらく想像されている場景とは少し異なりますが、理想的な世界がひとつありますよ」
「ほう……どんな世界なんだ?」
「ご実家で飼っていらした犬、覚えてらっしゃいますか?」
え?それは。
「もしかしてタロのことか?それなら覚えてる」
「はい、そのタロさんです。タロさんが転生なさっている世界が選べますよ?」
なんだって?
「あいつは……タロは死後、異世界に転生したのか?」
なんでまた異世界なんかに?
「犬族がたくさんいる世界なんですよ。もっともその世界では、犬と呼ばずに狼といいますが」
「へぇ……それは」
もしかして、犬が家畜化されてない世界ってことだろうか?それはそれですごいな。
「でも、それがどうして理想的なんです?タロがいるのならたしかに嬉しいけど」
「会いたくないですか?」
そう言われて、心が揺れた。
タロのことはよく覚えてる。
ガキの頃、俺はタロが大好きだった。
物心つく前からタロは家にいて、俺はタロがお気に入りで、いつも一緒だったらしい。
犬小屋で俺が寝ていて、タロがその番をしていたり。
歩けるようになると、ふと気づくとタロと散歩に出かけて居なかったり。
とにかく、俺たちは仲良しだったんだと。
でも、もちろん犬であるタロは……俺より年上だった事もあって、俺がまだ中学の時に死んでしまったんだ。
そうか、タロか。
転生して元気にやっているんなら、会えるものなら会いたいけど。
でも。
「今のタロには迷惑じゃないですかね?」
「え?」
神様が不思議そうな顔をした。
「考えてくださいよ。
確かに俺はタロが大好きだった。でも俺、タロが死ぬまで迷惑かけ通しだった自信ありますし」
そうだ、そうだよ。
俺は飼い主一家のガキで、タロは飼われてた立場だ。
一番熱心に世話をしていたのは親父で、俺はむしろ遊んでもらっていたといっていい。年取ってタロが弱ってきた頃には俺は反抗期で、情けないことに俺が素直になれたのは、タロが死んだあの朝だったんだ。
くりかえすけど、たしかに俺はタロが好きだ。
好きだけど。
でも、タロは俺のことを、いい飼い主だと思ってくれてたとは……まったく思えないんだ。
正直にそう言うと、神様はなぜか、とても、とてもやさしい顔をした。
「立場の違いによる問題は仕方ないことですよ、それはね。
それにね、ひとこと言わせていただきますがね。
動物はあなたが考えているより、はるかに賢いものですよ」
え?
「まぁいいでしょう、いろいろお話してもわからないでしょうしね。
ですので、今ここでひとつだけ断言しておきましょう。
タロさんは、あなたにとても会いたがっていますよ?」
え?
「それ……本当ですか?」
「ええ、本当ですとも。これは神のわたしが請け合います」
そうなのか。
……うん。
たとえそれが、昔のことの非難だったとても……俺はそれを受け取る義務がある気がする。
うん。
よし、決めた。
「神様」
「なんですか?」
俺は神様に、タロのいる世界に送ってくれと頼み込んだ。
◆ ◆ ◆ ◆
その世界には、特に名前のようなものはないらしい。
多種族が混在するファンタジーな世界。科学レベルは中世に毛が生えたくらいだろうか?でも、魔法が存在することで、単に中世レベルと測ることのできない、何か独特の発展を遂げている世界。
そんな世界に、俺はいた。
「シン、いよいよ明日だな」
「うん」
親友のロンとふたり、森の中の見回り中。
まぁ見回りといっても、この森は俺たちのなわばりだ。エルフ族とは住み分けをきちんとしているし、魔物はこんなところには来ない。実にのんびりしたものだった。
ちなみに、明日何があるのかというと。
「それにしても、ちくしょう……うらやましいなぁ」
「そうか?」
「何が『そうか?』だこの野郎、隣村の村長とこの娘だぞ?めちゃめちゃいいメスって有名な!」
「そう言われてもなぁ。会ったこともないんだぜ?」
実は明日、俺は結婚することになっている。
問題はその相手で、なんと隣村の村長の娘だったりする。まぁ末席もいいところの子なんだけど、逆に利用価値がないからこそ、好き放題の婚約が可能になったともいえるわけで。
それにその、なぁ。
「シン、獲物もそろった事だし、そろそろ戻ろうぜ。明日の準備もいるだろ?」
「まぁな」
望まぬ結婚かもしれないが、なに、そもそもこのあたりには恋愛結婚なんて存在しない。
それに俺は……ちょっと理由があって、恋愛で嫁さんをゲットするのは難しいと思っている。
だから、いいんだ。
ふと、水たまりを覗き込んだ。
(……)
そこには。
二本足で立って歩く一匹の柴犬……つまり柴犬っぽい顔のコボルトが、こちらを不安そうに覗き込んでいた。
コボルトは自分たちの村のことをネコットという。集落とかコミュニティとかそういう意味らしい。
彼らをひとことでいえば、それは二本足で歩く犬のぬいぐるみ。
人間でいえば幼児か、せいぜい小学生くらいのサイズでしかない。そして森の中などで暮らす。
え、手触り?いいぞ。
みんな、それぞれに個性的なもふもふでなぁ。
たとえば、ベルベットっぽい短毛。
ブラシが必須な感じの長毛。
俺自身の柴犬もそうだけど、みんないろんな犬種っぽい顔でバラエティに富んでいる。
こんなバラバラでいいのかと思ったけど、実は理由があった。
つまりコボルト族は、犬っぽい外見に反してかなり視力がいいんだよね。
要するに。
これほど顔にバリエーションがあるのも、個体の識別に使ってるからって事もあるらしい。
で、家系によって同じ犬種っぽい顔になったりするんだと。
ふむむ。
まぁなるほどというか何というか、うん。
こんなんでも、実はこの世界で最も繁栄した種族らしい。
神様が「犬族の世界」といったのもつまりそういう事。
この世界をひとことでいえば、わんこ……もとい、コボルト族が多数派という珍しい世界なんだよ。
夜戦などの能力は高いし造り手としての才覚は素晴らしいものがあるんだけど、真正面からガチンコバトルしたらやっぱり強くない。人間という最悪の敵が非常に少なく、めったに出会うこともない世界なんだけど、人間以外の敵だって自然界には多いんだ。油断はできない。
ああ、これでわかっただろう?俺に恋愛は無理だって。
ここは人間の世界じゃない。
そして俺は前世の、つまり人間の記憶を持っている。
この世界のコボルトをとても可愛いと思うが、でも、当たり前だけどエロティックな魅力は感じないんだよね。どうしても可愛いが先にくる。
それでも、エロい状況になると身体はちゃんと反応するあたり、肉体とはすごいもんだなと普通に感心するけど。
ね、わかるだろう?
これじゃあ当たり前だけど、恋愛事は難しいと思うんだよね。
「シン、おかえりー」
「おう!」
ネコットに帰り着くと、何匹かの子供コボルトが迎えてくれた。
うん、ほんと可愛いよ。しっぽふりふりしちゃってまぁ、どうしてくれようか。
「シンは子供好きだよなぁ」
「ん、そうか?」
思わずドキッとしたのを隠して親友に聞き返した。
「なんだ自覚がないのか。おまえ子供みるたびに、かわいくて仕方ないって顔してるぞ?」
「そうか」
すまん親友、それは邪心なんだ。子供かわいいとかって、そんな無垢な感情じゃない。
その気持ちを説明のしようもないって事実もまた、強い罪悪感を呼ぶわけで。
そういえば、タロはどうしたんだろう?
神様はたしか、この世界にタロがいるといった。でも未だに出会っていない。
もしかして、いるというだけで会えるわけじゃなかったのか?
ああ、なんだか切ないなぁ。
コボルトたちが嫌なわけじゃない。みんな可愛いし、いいヤツばかりだ。
一度も会ったことのない婚約者様とやらも、きっといいヤツだろう。
だけど、タロはここにはいない。
俺の知ってるやつも、昔の俺を知るやつも、どこにもいないんだ。
俺はそれが、とてもさびしい。
そんな事を考えていたら、何やらネコットの出口の方が騒がしくなった。
「なんだ?」
「お、どうやらおまえの花嫁さんがついたらしいぜ?」
「そうか」
ついにきたか。
「おい、見に行こうぜ」
「あ、ああ」
言われるままについていった。
問題の婚約者様は、犬種でいえばボルゾイに似た、すらっとしたメスだった。
モノホースという、このあたりにいる魔物のロバもどきに乗っていた。
ネコットにいるコボルトたちは、それぞれにバラバラな顔をしている。一応は血縁により容姿の系統が決まっているらしいんだけど、たとえば、チワワ顔とセントバーナード顔がいたとしても、地球のそれらみたいに極端なサイズ比があるわけではない。つまり、コボルトの大きさというのがだいたい決まっていて、血統によりチワワっぽいやつ、チンっぽいやつ、コリーっぽいやつなんかがいるわけで。
そんな、二本足で立ち上がったモフモフ天国みたいな集団の中に、そのボルゾイ顔のメスはいた。
おー、たしかに美人、いや美犬、いやいや美狼っていうのか?気位も高そうだけどな。
それにしても、なんで誰か探すようにキョロキョロ見ているんだろ?
ありゃ、こっち見たぞ。
ん?なんか、パァァッと急に満面の笑みになったぞ?
「みつけた!」
「へ?」
ボルゾイ嬢はモノホースからスパッと飛び降りると、おつきの者たちが止めるのもきかず、こっちに向かってものすごい速さでダッシュしてきた。
え?
え?え?
なにごと?
「みつけた!」
「うぉわっ!」
あっというまに飛びかかられ、地面に押し倒された。
な、なんだ、なんだなんだ?
思わず反射的に、昔タロにやられた時みたいに首をすこしあげて転んだ。前世で、家の床で後頭部を打っちまった経験からだ。
どういうことだ、何が起きてる?
「おわ、ちょ、ま……」
「みつけた!みつけたみつけたみつけた!!」
すげえ勢いで顔を舐め回された。
ははは、なんか小さい子か、それこそ地球のわんこみたいだな。
それにさっきからこの子ってば「みつけた!」しか言ってない。ほかに語彙がないのか?
いやそれより、なにを「みつけた」なんだ?
ん、まてよ?
その瞬間、俺の中で何かのチャンネルがピタリと合った気がした。
……まさか!
そんなばかなと思った。
だけど、そんな俺の口は勝手に、俺の疑問をカタチにしてしまった。
「……タロ?」
「うん、うん!うん!!」
ビクッとしっぽが反応し、やがて、ビュンビュンとふりまくりだす。
なに?
おいマジか、本当にタロなのか?
なんか……えらい変わりようなんだが?
あの頃は雑種だったのに、なんかボルゾイのお嬢みたいになっちまってる。
どこか懐かしい臭いはあいかわらずなんだけども、ずいぶん美人になったなぁ。
いやま、そもそも二本足で立ってるわけだし、コボルトって時点でアレなんだけどさ。
でも、そもそもコボルト自体が、立って歩くわんこだしなぁ。
え?それより性別違うだろって?
それはちがう、タロはもともとメスだったんだ。
タロなんて名前つけちまったのは前世の親父だよ。性別くらい確認しろよなと。
そうして俺たちは、まわりがワイワイと騒ぎだしてわれに帰るまで、抱きついたままだった。
夜になった。
ネコットはあまり夜に騒がないんだけど、今夜は祭りの前夜祭。あちこちで盛り上がっていた。
俺はタロと、建物のひとつの屋根の上にいた。
ああ、そうそう。
こっちでのタロの名前はルーリというらしい。コボルトではちょっとめずらしい名前なんだけど、何やら古い伝説に出てくる女性の名前らしい。
うん、タロ転じてルーリ。おぼえた。
「いい名前だな」
「うん。まぁ男の子の名前じゃなければ?」
「知ってたんだ」
「あの頃は知らなかったけど。今思うと、そうなのかなって」
タロって語感でなんとなくわかると思うけど、親父は最初タロウって呼んでたんだよな。
動物の名付けのよくある姫太郎や男の娘の悲劇。
よくある話ではあるのだけど……うむ。
動物の場合、なまじ犬猫は名前を覚えてしまうから、性別違うから変更なんてできなかったりするしなぁ。
それにしてもである。
タロ転じてルーリは、モフモフのふわふわだった。
雑種特有の豪快さがなくなり、なんか血統よさげなふわふわの白毛になっていた。手入れの具合もよくて、手触りはまさにお嬢。
そして。
犬からコボルトにかわり外見も違うのに、頭をなでなでした時の幸せそうな顔は変わらないときた。
ああ、うん。やっぱりタロなんだなぁ。
本当にこんな美少女をお嫁さんにしていいんだろうか、なんて悩んでいたのが嘘みたいだ。……まぁ、わんこだけどな。
思わず、もふもふに顔を埋めてしまう。
「ん」
「ん」
お互いに身体をよせあう。
ふわふわと柔らかく暖かく、そして何より安らげる。
人間とその愛犬だった、あの頃。
わんこ……もとい、コボルトに生まれ変わり、許嫁なんて関係になった今。
なんていうか。
人生、いやこれは犬生か?犬生って不思議。
二日後、森の片隅にあるコボルト村で結婚式が行われた。
雨天で一日順延になるという小さなハプニングはあったものの、その翌日には無事、大いに盛り上がった。というのも、彼らの結婚式というのは集落同士の結婚式という意味合いもあり、代表となるカップルを結ばせるほか、適齢期の独身男女全員のお見合いの意味もあったからだ。
特に、今期の代表であるシンとルーリのカップルは初対面のはずだったが、どうやら知った仲だったようで非常に仲睦まじい様子。このおかげで、例年の結婚式の何倍という盛り上がりようだったという。
(おわり)
----(以下、おまけ)
結婚後のある日のことだった。
ふと気になって、俺はルーリに質問してみた。
「なぁ」
「なぁに?」
「おまえ、昔のこととか恨んでないのか?」
「うらむ?」
「ああ」
ふと、ひっかかっていた事を訊いてしまった。
そしたら。
「うらむ?わたしが昔のシンを?なんで?」
「いやだってさ」
飼ってたわけだろ?鎖でつないでさ。
あっちの人と犬の関係って言われればそうだけどさ、そりゃ人間の側の理屈なわけだし。
だけど。
「あっちはあっち、こっちはこっちよ。
だいたい、あっちじゃどこもそうだったじゃないの」
「そりゃまあ、たしかに」
「それにね。つながれてた事で恨むならシン、あんたの両親であってあんたじゃないと思うんだけど」
え?
「どういうことだ?」
「わからない?」
「ああ、マジわからない」
そしたら、呆れたように説明してくれた。
「いいこと、思い出してみなさい。
昔のあんたって、つながれてるわたしを見て何してた?いつも鎖を外してくれたじゃないの?」
「……そういえばそうだったかな?」
「そうよ」
言われてみればまぁ。俺はタロを外につなぐのが嫌いだった。
ひとりで留守番する時は、ひとりになった瞬間にタロの足をふいて家に入れてた。
それに散歩だって。
「そういや散歩の時って、鎖外してたよな?」
どうやって散歩してたのか全然覚えてないんだが。
「ええそうよ。あんた、ほっとくとどこ行くかわかんないから、連れ歩くの大変だったんだからね」
「……ちょっとまてやオイ」
なんかそのセリフ、配役がおかしいぞ。
まるでそれじゃ、おまえが俺を散歩させてたみたいじゃないか。
「え、なに、あんた、わたしを散歩させてるつもりだったの?……あっははははっ!」
「いやそこ、なんで笑う?」
「だって、あはははっ!」
きけば、こういう事だったらしい。
タロが我が家の住人になったのは子犬時代で、俺はその後に生まれた。タロは雑種犬としては神経質な方だったらしいが、俺が妙に懐いたこともあって、弟か子供か、とにかく自分の庇護対象としての認識になっていったらしい。
ところが、好奇心旺盛な俺は這い回るようになると、勝手にどこかに行ってしまうようになって……連れ戻すのはタロの仕事だったらしい。
そしてそれは、俺が歩きだしてからも続いた。
「あんた、わたしといるのを全然嫌がらなかったからね。おでかけする時はわたしが先導することになってたの。
それを見た、あのひとたちがよく笑ってたけど……あれはたぶん、どっちがどっちを散歩させるのかって笑いだったんでしょうね」
「……マジかい」
「マジよ?」
生まれ変わって、はじめて知った事実。
俺が犬を散歩させていたんじゃなくて、犬が俺を散歩させていたらしい。
情けないな俺、おい。
とはいえ、言われてみれば当時の散歩コースとかかすかに覚えてるけど、たしかにそうだよな。
え、どういう意味かって?
つまり、人間の考える散歩コースじゃなかったんだよ。ひとんちの庭を横切り、塀の隙間を抜け……ってね。
たぶんあれ、プロデュースド・バイ・タロの散歩コースだったんだろうなあ。
「でも安心したわ、ホント」
「安心?何が?」
「死んだって言われた時、一番心配したのがあんただったのよ。うちの子で一番マヌケだったし、あんなので幸せに暮らせるのかしらってね」
なんじゃそりゃ。
うちの子って一番マヌケって……おまえ一回だけだが自分の子も産んでるじゃねえか。
まさかと思うが、俺はあの子犬どもよりマヌケだと?
「なに、自覚なかったの?うわぁ……」
ふざけんなオイ。
だけどルーリは聞きもしないで、さらに爆弾を落としやがった。
「実際、あんたの行く末は本当に心配だったの。
だからね、生まれ変わる時に神様にお願いしたの」
「……おねがい?」
「そ」
なんか、嫌な予感がヒシヒシとするんですが?
「まさかと思うが……何を願った?」
「簡単よ。もしあんたが自分の番すらも持てずにマヌケにくたばったら、わたしのとこに送ってちょうだいって」
「……な」
お、おま、おまえが元凶だったのかよ!
だけどルーリは俺の顔を見て怒ることもしないで、
「イヤだった?」
「……なわけねーや」
「……」
「なんだよ?」
ルーリは楽しげに笑うと、俺の頭に顔をスリスリとよせた。
(こんどこそ終わり)
ちなみに「愛犬の散歩」をしているつもりが「愛犬「に」散歩「してもらって」いたのは僕自身の昔話です。
では。