4話 勇者アリスは逃げる 『アレクさんの変態!!』
アリスは今日もスライムに負けた。
「うぅ~~なんでですか!!」
俺とアリスは酒場にいた。
アリスは飲み干したコップをテーブルに勢いよくおいた。
「コップが割れるぞ」
「うぅ アイツらが強すぎるんですよ」
「スライムは最弱に分類されるんだぞ」
「うぅ~~~~~あっ オレンジジュースの御代りお願いします」
近くを通った店員に対して一瞬で泣き顔から笑顔に変えて注文した。
器用なヤツだな。
「最弱の勇者だから仕方ないんじゃないか?」
「その呼び名はやめてください!」
アリスは『最弱の勇者』と呼ばれている。
もちろん彼女には最弱たる理由が存在する。
「魔法を使えない」
「うっ」
「武器に魔力を通せない」
「うぐっ」
「剣技は並み以下」
「あうっ」
「最弱以外に呼び方なんて思いつかないのだがな」
「はうぅぅっ」
アリスはテーブルに額を押し付けるかのように伏した。
「酷いです……そこまで言わなくても……」
「辛いが現実だ」
彼女は精神に相当なダメージを受けたようだ。
「アレクさんの鬼……馬鹿……人でなし……」
「はいはい」
アリスはテーブルに額を押し付けたまま悪口を言っている。
「すかぽんたん……巨乳好き……」
「悪口以外はやめなさい」
アリスは悪口を言い慣れておらずボキャブラリーが少ない。
だが厄介なことに、悪口のボキャブラリーが尽きるとおかしなことを言い出す。
「……アレクさんの変態!!」
「おい」
アリスは突如として立ちあがり大声で俺を変態と言って去って行った。
周囲からはヒソヒソと声が聞こえる。
ガタイの良い冒険者や街人、兵士などがヒソヒソと何か言っていた。
『あんな可愛い子に何をしたんだ』
『そうとう酷いことをしたんだろうな』
『巨乳好きだってさ』
『いい男(野太い声)』
俺は嫌な汗が出て急いで酒場から出ようとした。
「ご会計お願いします」
「は、はい」
急いで立ち上がったら店員に呼び止められた。
食い逃げするとでも思われたのだろうか?
俺は代金を支払い……あいつジュースを何杯飲んだんだっけ?
凄い金額となった代金を支払い店の出口に向かった。
「止まれ!」
なぜか兵士に呼び止められた。
「なんでしょうか?」
俺は内心焦りながらも兵士に返答した。
「少し来てもらおう」
「なんで!」
「少女に乱暴をして逃げられたらしいな」
「何もして……(アリスか!)」
アリスが俺を変態と言って逃げた。
そのことで誰かが警備兵を呼んだのかもしれない。
いや、先ほどの店員が時間稼ぎに俺を呼びとめた可能性が高い。
「俺は何も……」
「話は詰所で聞こう」
俺は両腕をがっちりした体格の兵士に掴まれ連行される。
その後、3時間ほど事情を説明してやっと解放された。