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12話 勇者アリスVS精霊の妹 『まだ、言いますか!』

 アリスは、シアの怒りを買った。

 その結果、果たし合い的な展開になり、彼女は屋敷の庭へと引きずり出された。

 

「え、え、えぇぇぇぇ」

 

 未だに自分の置かれた状況を理解できないアホな娘のアリスは、周囲を見回しながら混乱している。

 

「あなたを倒して、お兄様の愛を取り戻して見せます」

 

 目に尋常ではない執念を宿した我が妹シア。

 もはや彼女の執念は、怨念といっても良いかもしれない。

 

「お前の言う愛が兄妹愛ならどんなに良かったことか……」

 

 俺は椅子に縄で縛り付けられている。

 どうやら俺は懸賞品扱いらしい。

 

 アリスに勝ち目は100%ない。

 だから隙を見て逃げようと思う。


 縄で縛ってあるだけだから、精霊の姿になれば簡単に解けるだろうしな。

 

(今日ほど、精霊になって良かったと思ったことはなかったな)

 

 勝負の途中で逃げると決めた時点で、俺の心は平常心を取り戻した。

 だから目の前で対峙する2人の姿を見ても、他人事ひとごとのように眺めていられる。

 

「ア、アレクさ~ん」

 

 半泣き状態で俺の方をアリスが見ている。

 そんなことをすればシアの怒りに油を注ぐだけなのにな。

 

 ほら、杖を持つシアの手がワナワナと震えだしている。

 

「……涙目で可愛らしさをアピールですか」

「えっ、そんなつもりじゃ~」

「……先ほどから間延びした口調でお兄様の保護欲を刺激しようと」

「ち、ちがいますよ~。アレクさ~ん」

 

 俺に声をかけるたびに、シアの怒りに油を注いでいるのに気付かないのか。

 まあ仕方ない。アリスはアホな娘だからな。

 

(そろそろシアも限界だろうから、俺も逃げる準備をしておくか)

 

 俺は、いつでも精霊に戻れる準備を開始する。

 やはり俺の予想は正しかったようでシアが切れた。

 

 しばらく会っていなかったとは言え長い付き合いの兄妹だ。

 シアの切れるタイミングを見極められる程度には彼女を知っている。

 

「きゃ~、ちょ、ちょっとやめて下さいよ~」

「観念なさい! 今すぐお兄様に声をかけられなくして差し上げます!」

 

 火球やら氷の欠片やらを魔法で作りだしアリスに強襲をかけるシア。

 やはり最弱の勇者相手では、一方的な展開になった。

 

「アレクさ~ん!」

「まだ、言いますか!」

 

 アホな娘は一層シアの怒りに油を注いだ。

 シアの使っていた魔法はバージョンアップをして、火球は二回りほど大きくなり、氷は一度に3つほど生成されるようになった。

 

 驚いたことにアリスは俊敏に、それらの魔法をかわしている。

 

(あの俊敏さが普段は出せないものかな……と、そろそろ)

 

 アリスが今発揮している俊敏さを、モンスターとの戦いで発揮できれば逃げることぐらいは出来るだろう。

 もっとも武器に魔力を通せないから攻撃も通らず、魔法も使えないアリスではモンスターには決して勝てないだろうが──。

 

 まあ、とりあえず俺は精霊化をした。

 シアの魔法で土埃が上がり、煙幕のようになったからだ。

 妹から俺の姿も確認しずらくなっているハズだ。

 

(さてと……)

 

 俺は屋敷へと、精霊の魔剣を引き取りに向かった。

 

 スライムにすら負けるとはいえ、今の俊敏さがあれば簡単に死ぬことはないだろう。

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