第61回 17-3
立ち上がってあらためて両軍のようすを見渡していると、張苞がこちら側の布陣を、手折った枝で指しながら教えてくれた。
いま作業をしている最前線が陳式と高翔の軍。
その後ろに張飛、馬超、黄権の軍。
増援軍五千の大半はここに編入され、しばらく特訓を受けることになるという。黄権の軍はともかく、ほかの二将軍の軍に入れられる兵はなんだか気の毒な気がした。
その後ろが劉備の陣で、山腹に散らばっている。
いくつか名前をあげられた中に孟達の名があった。
わたしはいそいで劉禅にいった。
「孟達? どこです」
「ふむ。どうした」
「もう一度、場所を聞いてみてください」
劉禅が張苞に聞いた。
「孟達はどこといったかな」
「裨将軍ですか。ここからくだったところです。来るときにも横を通りましたよ」
わたしは劉禅にささやいた。
「会いにいきましょう」
「知りあいか」
「そんなわけはないでしょう。とても重要な話があるのです」
「そうか。しかしわたしは趙雲どのに会いたいのだが」
おお。それはそうだ。
趙雲だけではなく、張飛にも会いたい。
なんといっても三国志のメインキャストだ。
自国の中をちょっと移動するだけでもこれだけ大変なのだから、この機会を逃すと、ほんとうに二度と会えないかもしれない。
昔の人が一期一会といった意味がよくわかる。
携帯もテレビも写真もないので、一度会う機会を逃したら、二度と顔を見たり、声を聴きいたりする機会がないのだ。
手紙という手はあるが、確実に届くかどうかはわからない。いつになるかもわからない。
この機会に、馬超や法正とも話をしておきたい。
とくに馬超は、まもなく病死するのではなかったか。 法正の寿命もあまりない。
劉備が漢中王を戴冠するさいに、成都の宮中で会えるのかもしれないが、先のことはわからない。これだけ有名人が集まっているのだから、逃す手はない。
しかしまず孟達だ。しかも一番近いところにいるようだ。
劉禅から皆に伝えてもらって、孟達の幕舎に向かうことにした。




