ライバルの戦い
黄金の雨のように突き出される攻撃をセリカは剣で受け流していく。うなりを上げて叩き付けられてくる槍を受け止め、放たれてくる蹴りを下がって避ける。
セリカは苦戦していた。だが、そこには先程までの情けない少女の姿はどこにもなかった。
二人の戦いを見て、国王の隣へと歩みを進めたデュランは軽い口笛を吹いた。
「ヒュー、あのレディ達はあんなにも強かったのかい」
「あの子達は昔からそうじゃった。会った時からお互いを敵と認めあい、ともに負けまいと力を尽くしてきたのじゃ」
「だが、そんな関係は長続きはしないだろう? この世界にはもっといろんなことがいっぱいある。いつか外に目を向けざるを得ない時は必ず来るものさ」
「今はこれでいいのじゃ。あの子達があんなに幸せそうなのなら、それでいい」
二人は暖かい眼差しで戦い合う二人の少女を見守っていた。
防戦一方になりながらセリカは考える。何とか反撃の糸口を掴むことを。
「反撃・・・・・・?」
そこでセリカははたと立ち止まった。反撃ではクリスに勝つことは出来ない。クリスに勝つためには攻勢に出ないと駄目だったのだ。
「頭がお留守ですわよ!」
突き出される槍の攻撃をセリカは上空に跳躍してかわした。まぶしい太陽に目を細め、クリスは見上げる。セリカは見下ろし、落下の速度を利用して剣を振り下ろした。
クリスは槍で受け止める。剣と槍が力任せにせめぎ合う。クリスはその力を受け流し、槍を引いた。
「ここだ!!」
今までのセリカはクリスの攻撃に対し、防戦に回ることが多かった。相手の方が実力が上なのだからそれは当然のことだった。だが、あえて前に出る。
クリスが攻撃するよりも先に剣を振る。クリスはそれを受け止めた。
「少しはやるようになったではありませんか」
「わたしはもうお前に負けない!」
セリカは積極的に前に出る。クリスは受け止めながら後方へ下がっていく。
「浅はかな猿知恵ですわね」
セリカの視界の中で一瞬の光がきらめいた。攻撃に出るということはそれだけ隙も生まれるということだ。それを見逃すクリスではなかった。突撃し、駆け抜ける光の衝撃でセリカの体は吹っ飛ばされた。
セリカの体は大空高く舞い上げられる。その目に光が映し出される。
「太陽・・・・・・」
手を伸ばそうとして止め、その手の剣を強く握る。
「わたしの太陽は・・・・・・」
セリカは身を翻して着地した。クリスは驚いた顔をして振り返った。
「クリス!!」
セリカの振る剣をクリスは受け止める。その顔に苦し気な表情が宿る。セリカの剣が重いのだ。だが、それすらもクリスの槍は跳ね除ける。
「セリカー!!」
振るわれる槍をセリカの剣が受け止める。
「前へ出る。わたしはもっと前へ!」
強い意志を瞳に宿し、セリカの剣はクリスの槍を押し返していく。クリスは力任せに頼っただけのような勝負は挑まない。槍を引いて再び黄金の閃光が嵐となって突き出される。
「ここだ!」
セリカはその攻撃を見切った。黄金の閃光の中のわずか一本を叩き伏せる。クリスは驚いた顔を見せた。セリカは前へ出る。
「もっと前へ。届くまで!!」
セリカの剣が避けようとするクリスに向かって伸びていく。その切っ先が以前の戦いでセリカの付けた服の胸元の切り口へと迫り、そこの周囲の布を大きく切り裂いていった。
「キャアアアアア!!」
クリスが悲鳴を上げる。そして、セリカは自分の剣が彼女に届いたことを理解した。
だが、そこまでだった。
何故か手で胸元を抑え涙目になって顔を赤くしたクリスが片手で槍を振ってくる。
「このお猿ーーー!」
その軌道はあまりに純粋で真っ直ぐで乱暴だった。
無理な体勢で前に出ていたセリカはその攻撃を避けられなかった。頭に衝撃を感じ、セリカの意識は闇に沈んでいった。
気づいた時、時刻はすでに夕方だった。
窓の外には茜色の空が広がり、優しい風が吹いている。
セリカはベッドの上で体を起こした。
「頭は大丈夫ですか、お姫様」
すぐ隣では椅子に座ってクリスが微笑んでいた。彼女はすでに元のドレスに着替えていた。
「うん、わたしは大丈夫よ」
セリカはまた自分が負けたことを理解していたが、不思議とその心は満ち足りていた。




