化け者交流会談記ES3.5
番外編:霊能太郎と決着~ギャグバージョン~
ここは地獄の大荒野。繰り広げられる最終決戦の場面。
霊能、蘇我、小次郎、ゴンザレス、ツキミ、くっちー、闇倉らがハデスと対峙している。
彼らはハデスの攻撃を何度も受け、いつ倒れてもおかしくないほど傷ついていた。
今まで登場したキャラたちが遠方の丘に集い、荒野に立ちすくむ霊能らを見つめている。
『は、ハデス! お前は何故そこまでして人間を滅ぼそうとするんだ!』
((知れたこと。人間とは強欲に満ちた罪深い生き物だ。罪ある者は裁かねばならん))
『だ、誰もが罪深いわけじゃないどすえ! 優しい人間だっているどす!!』
((ふ、ふははは。優しい人間? 罪深くない人間、だと? ふっ、痴れ者が! 人間という種族に生まれてきた時点で罪なのだ! 故に全ての人間は裁きの対象だ!))
「そ、そんな、横暴っですよ! 人間が何をしたって言うんっですか!」
((小娘が。舐めた口を聞くな!))
ハデスが右手を振るった瞬間、その下の地面がえぐりとられ、大量の砂や岩石が雪崩のようにツキミを襲った。
「ツキミーッ!!」
ゴンザレスがツキミをかばうように横に跳び、間一髪のところで雪崩をかわす。
((ふははは、上手く避けたな。見上げた兄妹愛だが、所詮は見かけ倒し。人間とは元来、己のことしか眼中にない非情な生き物だ))
『ち、違うでござるよ。少なくとも拙者の知り合いにそんな人間は一人もいないでござる!』
『そうだぎゃ! 霊能みたいな良い人間だって沢山いるんだぎゃ!!』
((ほほう。ならば問おう。そこの人間))
「え、え、俺?」
ハデスが霊能を指差す。
((貴様は、2006年の大事件について何か行動を起こしたか? 貴様の答えによっては、考えを変えてやらんこともない))
「え、え、何? 2006年の大事件? んなこと急に言われても、俺ニュースとかあんま見ねぇし。分かんねぇよ」
((ふ、これだからゆとり教育世代は困る。特別に相談する時間をやろう))
「お、おう……。悪いな……」
霊能たちは傷ついた体を引きずりながらも一ヶ所に集まり、円を組んでに相談に入った。
「おい、突然なんか政治的な問題出されたぞ。誰か分かる奴いるか? ゴンザレスは?」
「すまぬ。某は義務教育しか受けておらぬゆえ、知識的な話になると少しも力になれぬ」
「ある意味、ゴンザレスの唯一の弱点かもな。蘇我は?」
『僕政治とか全く興味ないんだよね。政治家が全員小学生の女の子に代わるなら別だけど』
「お前に聞いた俺がバカだったよ。ツキミ分かるか? てか大丈夫か?」
「体は大丈夫っです。それよりも政治的な問題ってのは正しいんですか? ハデスは大事件としか言ってなかったっですよ?」
「確かにそうだな……んじゃ他に大事件っていったら……災害とかか?」
((災害ではない))ボソ
「あ、災害じゃねぇってよ」
『ヒントくれちゃったよ! ハデスさんヒント出して来たよ!?』
「災害じゃねぇならやっぱ政治問題じゃね?」
((政治問題でもない))
「違うのか……じゃあ何だ?」
『いやそれ以前にツッコもうよ! 明らかにおかしいよ!!』
「なぁそれは日本限定の事件か?」
『ついに質問しちゃったよ!! てか答えてくれるわけないじゃん! あくまでも敵同士なんだよ!?』
((愚かな人間よ。敵に助けを乞うとは、恥を知れ!!))
『ほら、さすがはハデスさん。悪役らしいこと言――』
((だが今回だけは特別に教えてやろう。もっとグローバルな視点で考えるのだ))
『って答えるのかよ!! もう全然悪役っぽくないよ!!!』
「グローバルな視点て言われてもな……」
「グローバルのぉ。グローバルとは地球全体という意味。すなわち惑星、つまり宇宙人との外交問題というわけかの!」
『うんゴンザレスさん! ゆとり世代中卒は黙ってて!』
((独り言だが、惑星という着眼点は間違っていない))
『間違ってないのかよ!! どこまでヒントくれるの!? もう答え言っちゃっえよ!!』
「惑星と2006年か……。何かあったような無かったような」
『そう言えば、冥王星が惑星から外されたのも2006年だったわよね』
『ああ! 確か2006年の夏の出来事だったきがするぎゃ!』
『いやいや、だから何? って話だよ。だいたいそれ事件じゃなくない?』
『そう言えば、冥王星の英語名プルトーは、ローマ神話の神プルトーから来ているという話を聞いたことがあるでござる』
『それがどう関係するんだぎゃ?』
『聞くところによると、何でもプルトーとハデスは同一の神だとか……』
その瞬間全員の視線がハデスに集中する。
「いやいやいやいやそれはねぇ。それはねぇって」
『そうね。考え直しましょう』
『いや、僕は合ってると思う……』
「他の事件っですか……う~ん難しいっですね」
「某はいつまで黙っておればよいのだ?」
『ねぇ聞いて。これで合ってるって。あの人、自分の名前が付けられた惑星が準惑星に降格した腹癒せに人間滅ぼすとか言ってるだけだって』
『蘇我はん。詳しいことはよく分かんないどすが、何から何まで疑ってかかるのは良くないと思うどすえ。ハデスはん、変なこと言ってごめんなさいどす』
((…………))
『おい何か言えよ!!! 何で沈黙!? 図星だろ! 図星だから黙ってるんだろ!?』
((……違う))
『目を逸らすな! こっちを見ろ!』
「蘇我! もう止めろ! 俺たちが間違ってたんだよ……」
『ねぇ何で? 何でそんな頑なに認めたがらないの?』
『ハデスは冥界の神よ。そんなこと気にするような神じゃないわ』
『いやそれが気にしてたんだよ! 僕も最初は半信半疑だったけどさ! 沈黙のくだりで疑心が確信に変わったよ!』
「ハデスはそんな小さい男じゃねぇ!」
『いや小さいよ? 冥王星の大きさ以前にハデスの器が小さいよ?』
((貴様! 冥王星を愚弄する気か! 見かけで人を判断する! それが人間の欠点だ!!))
『いや、いい感じに人間悪者にして事をうやむやにしないでくれません? 冥王星は大きいんですよ、あなたの器が小さいって言ってるんです』
((我が輩のどこが小さいというのだ! 百歩譲って我が輩が小さいとしてもだ、だからといって冥王星を準惑星にする理由になるというのか!?))
『もう何から何まで認めてんじゃん。ほら霊能、ハデスさん認めたよ。これが現実なんだよ』
「いや俺は認めない!」
『何でだよ!!』
((大体にして被害を被ったのは我が輩だけではないのだぞ。某宇宙戦艦ファンがどれだけ悲しんだと思っているのだ!))
『いや知らないですけど……え? ハデスさん人間嫌いなんですよね? もしかしてですけど、ヤマト世代ですか?』
((何を世迷い言を! これ以上我が輩を愚弄すると、例え人外であろうと許さんぞ!))
『……そ、そうですか。失礼なこと言ってすみません。ところで実写版見ました? あれって何か腑に落ちない結末ですよね』
((ああ、あれはイスカンダル編とさらばとの間の子だったからな。熱狂的なファンにとっては少し物足りないものに見えたのだろう。だが我が輩はそれなりに感動したぞ。最後ヤマトが自沈する名場面ではハンカチが離せなかった。実写の良し悪しは役者の演技力で決まるといわれるが、中でも真田志郎役の…………我が輩はアニメなど見ぬ!!!))
『いや遅ぇよ!! めちゃくちゃ見込んでんなオイ!! おい霊能! ハデスさん絶対人間殺さないよ!? この人意外と人間好きだよ!? 典型的なツンデレタイプだよ!?』
「止めろ蘇我! ハデスが見てないって言ってんだから見てないんだよ!」
『そうよ蘇我君。疑心暗鬼になる気持ちも分かるけど、神様っていうのは信じることから始まるのよ?』
『いや何で!? 何でさっきからやたらにハデスさんの肩持つの!? 敵でしょ!?』
『世界を敵と見方だけに分けたら、すべてを焼き尽くすことになっちゃうんどすえ』
『うんごめん、さっちんに対してだけど言わせてもらうね。最近ナウシカ見たでしょ!!!』
((ハデス。我が名はハデス! 調停者にして裁定者なり!))
『あんた本当にサブカル好きだな!! 結構見てるな!! すげぇマニアックなシーンチョイスしてくるな!』
『おお~感動どすえ~。ハデスはん、朝までジブリについて語り合おうどすえ!』
((よかろう!))
『いいの!? 地上侵略は!? 人類殲滅計画は!!?』
((人類は我が輩の助けなしでも滅びる。貴様らはその朝をこえることはできん))
『それはこの星が決めることどすえ!!』
『ああ駄目だ! 微妙に違うけど完全にあっちの世界に入っちゃってる!!』
こうしてハデスの人間殲滅計画は静かに幕を下ろしたのであった。
完