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おばけ係  作者: ホロ
2/2

2話目にしてやっと登場ですか

翌朝、私はいつもと変わらない日常の中登校していた。

カバンには昨日もらったカギをいれながらも、本当に特にいつもと変わらない始まりだった。


しかし、変わらない日常はすぐに終わるのであった。


「おはよう」


朝の下駄箱でよく行われる会話だ。そして、みんな反射的に


「おはよう」


と、返すだろう。だから、私ももちろん声がした方に振り向きながら挨拶をしたのだが、そこには誰もいなかった。

少し、周りを見渡してみたけれど、私を呼んだような人物はいなかった。


気のせいかな。


なんて思いながら、私はその下駄箱を後にしようとした。


「あ、あの」


やっぱり声がする。

おばけ係になったせいなのだろうか。周りを見ても、私に視線を向けるような人はいないのに。


「下です」


もう一度聞こえてきた声で私は我に返り、声の指示通り、下を見た。なぜ、こんなにも落ち着いていられるのかは、声がとても弱弱しく、少女のような印象で恥ずかしがり屋なんだろうなと思えるような声だからである。

下を見ると、そこには今までなかったようなカギのかかった靴箱がひとつだけあった。


こんなのなかったと思うんだけどな。


明らかに、昨日もらったカギを使いなさいというばかりにカギ穴が開いていた。

だから、私はカバンからカギを取りだし、その穴へ差し込んで、回すと、以外にも『カチッ』っといい音がして靴箱が開いた。

しかし、中は空っぽで、いつもの靴箱と同じつくりだった。


カランッ


音がすると、カギが床に落ちていた。あわてて拾い上げると、靴箱の外側にはカギ穴は無くなっていて、そこらじゅうにある靴箱と同じ物に戻っていた。


「あれ」


確かにカギを挿したし、回した感覚があったにも関わらず、その形跡は全くなく、ただ当たり前の靴箱を見つめる形になってしまった。すると、


「ね、ねぇ」


声は後ろから聞こえた。慌てて飛びあがり、自分が朝の登校時間にいかに邪魔だったのかを考えてすぐにどこうとした。


「すいません」


頭を下げ、その場を立ち去ろうとする私に、


「見えてますか」


んっ。とっさのことでよく理解できずに、そこに立っている少女の方を見ていると、


「見えてるんですね」


なんだか、おばけが言いそうな台詞を投げかけられて・・・って、まさか、


「もしかして、おばけ・・・ですか」


私がおそるおそる尋ねてみた。


「たぶん、はい。あっ、でも、なんの力もないんですよ」


慌てて否定する仕草は、本当に普通の少女という感じだった。

その時、私は周りの視線に気が付き、初めて、彼女が私にしか見えないのだと気がついた。あきらかに、どうしたのだろうかっという視線を向けられながら通り過ぎている人たちに赤面して、私は急ぎ足で教室に逃げ込んだ。



しかし、おばけという彼女は当たり前のように私の隣にいた。私から見れば、クラスの誰ひとりと変わらない位はっきりと見えているし、足もある。だから、みんなが見えていないということにただただ違和感を覚えるしかない。しかし、見えていないことは間違えなさそうだった。なぜなら、今はもうお昼なわけで、それまでの授業中ずっと私のそばで立っていたにも関わらず、誰にも何も言われないのだ。しかも、私がノートに間違った答えを書くと、


「そこはね」


なんて、教えてくれたりもする。でも、やっぱり怒られない。


そして、お昼になった今、私は彼女と屋上に来ていた。



「突然ごめんね」


彼女は頭を深々と下げて私に謝った。

謝られても、なにをどうしたらいいのかいまいちよくわかっていないので、とにかく彼女と話してみることにした。



いろいろ聞いてみると、彼女はカナという名前で、もう何十年もここにいるらしい。カギを開けた人にしか、カナの姿を見ることは出来ないし、声も聞くことは出来ないらしい。無論、私も見えるからと言って、カナに触れたりはしない。声は、聞かせたい人には聞かせることが出来るらしいけど、姿を現すことは出来ないらしい。すなわち、今、カナのことが見えているのは私だけということになる。しかし、一番はカナが疲れたり、眠ったり、呼吸をしていることや、空を飛んだり、壁をすり抜けたりといった人間とは違うことが何もないことである。だから、あまり生きていたころと変わりはないのだという。あるとしたら、冬眠のように眠り続け、時を早送りのように過ごすことも出来るそうだ。でないと、何十年もいられないのだろう。

カナについて私が知ったことはだいたいこのようなことだ。



「そうなんだ」


私はカナに同情するように話を聞いていた。「ん~」っと思う気持ちもあるけれど、私に出来ることがわからなくてただ困ってしまった。


「あなたは滝本・・・くみ、さんでいいの」


まだ、自己紹介をしていないことに気がついて、改めて、


「私は滝本久美です。あ、あの、おばけ係です」


なんて自己紹介をすると、カナは満面の笑みで、今にも抱きつかんばかりの笑顔をしていた。

そのカナの笑顔はとても暖かくて、本当に優しい人だったんろうなと思った。



そして、放課後。今日は校長室に呼び出された。

やっと登場しました。

カナはれっきとしたおばけです。ただ、普通の。

とにかく、校長室に呼ばれた訳は何なのでしょうか。

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