洗脳されたリスカの子
カチカチと言う音が静かな部屋に響く。その音の発生源を手に持っている1人の少女は自分の腕にそれを使った。細く赤い線が腕に引かれた。
「…反省の証、でも、もっと痛く抉らないと」
そういう彼女はリストカット中毒だ。自室で1人、ずっと自分の体に傷をつけている。
自分の友達はカッターだけ。ナイフや包丁は殺してしまうから嫌い、自殺も一瞬だから嫌い。リアルもネットも嫌いという環境の中に生きる子供。
それが、私だ。
「痛い…痛い?そんなに?」
最近は無意識に切ってしまう。自傷するときだけは本当に感覚がない。ダメなんだってわかってる。分かってるし親にも怒られるから出来ることなら辞めたい。でも私のトモダチはカッターだけ。辞めることなんてできない。
辞めたら私は気が狂うんじゃない?それくらい。
瞬間、自室の扉が力強く大きな音を立てて開かれた。
「生希!…っアンタまたやって!?」
自分の顔の近くで乾いた音が聞こえてきた。…ビンタされたのかな?ちょっと痛い。
「どれだけ私が心配してると思って…!」
「心配してるなら、出ていって?」
「はっ…?」
「ほら」
あぁ、私がこんなだからダメなんだよね。分かってるのに、分かってるのにこうしちゃうんだ。やめたい、全部辞めたい。でも死にたくもない。
そんなことを考えていたら、私は母に施設に入れられていた。勿論カッターは没収された。でも私は施設のカッターを盗んでトモダチにした。
トモダチと遊んでる時だけは、本当に何も考えなくて済んだ。ただ痛くて、楽しくて。ただ、体が重くなる。
「生希ちゃん、ダメだって言ってるでしょ?その手…一体どこで切ってるの」
「……」
人など信じない。私のトモダチを否定する。キライ、怖い。私に怒る。
私は、私は…。怒るお母さんと、軽蔑するみたいに私を見るあの視線と、…人間が大嫌いだ。
「あぁもう、そんなならもういい、さっさと消えてしまえ」
そんな言葉を言われたのは1度や2度じゃなかった。それを聞く度「私はいらない変なやつ」って自覚が出来る。変な話だよね。適応出来なくて自分の維持の仕方を考えた結果がこれだっただけなのに。みんなおかしいんだ。そうだよ、おかしいんだよ。
「あはっ、いつもの色…」
手を見てそう呟く。そこには多数のトモダチと遊んだ跡。楽しかっ…楽しかった…?そうだよね…?
それからしばらくして、私は施設を移動した。移動したところの人達はみんな私に質問をしてきた。好きなことはとか、トモダチの名前とかそういうのを色々。
沢山の質問の波が終わったあとに私は知らない間に部屋が変えられてた。本当に知らない部屋。ここに入ってからは一度も外に行ってない。今どうなってるのかな?お母さん元気かな。
「ポーサルブレード、あなたの名前は?」
「閖亘生希」
最近は何故かよく名前を聞かれる。私はユりワタふユのでしかないのに。あれ、おかしいな、私ってそんな名前だったっけ?
「もう一度聞くわ、あなたの名前は?」
「おれの、名前…?」
ゎたしって、だれ?ぼくはどんな人?おれはここにいる?
「そう、あなたの名前、分かるかな?」
「オレは……」
どうしてオれはここにいる?どうしてこんな場所に閉じ込められてる…!どうして、どうして!?
「俺は、……ポーサルブレード」




