13 心配
翌日、コールマンは仕事を休み、それが数日続いたことにより解雇されることになった。
アイリスはこれでも彼女を立派な事務官にするために彼女の為になるように動いたつもりだったが、彼女の心が折れてしまったのなら仕方がない。
それに、復職した女性たちの評判は良く、この調子で行けばアイリスたちのいる部署だけではなく着実に王国事務官全体に広がっていくだろうとクラークソン事務部長からの言葉ももらった。
コールマンのことはうまくいかなかったけれどそれだけでも十分な成果であり、アイリスは切り替えてリオンとの結婚準備にいそしんだ。
そして休日、彼の持っている屋敷でどこにアイリスの部屋を作るのか、どんな使用人がいるのかを知るために彼の屋敷へとやってきた。
リオンはきちんとアイリスに渡す書類まで作って自分の屋敷のことを教えてくれて、まるで仕事の時のようにしっかりとしていた。
それらがあらかた終わった昼過ぎ。
彼の部屋のバルコニーでお茶をいただいていると、彼は先程までのしゃんとした雰囲気を崩して、アイリスに言った。
「……と、ところでつかぬところ聞くけれどアイリス」
「ええ、どうぞ」
「あの、コールマンさんとはどうなったのかなって思って。君の功績の話は、あれからクラークソン事務部長に聞いたり、噂で聞いたりしているけれど、コールマンさんの話はすっかり君からも聞かないから……その、気になって」
おずおずと彼女の話題を出されてアイリスは小さく首をかしげる。
今日は天気が良くて降り注ぐ太陽の光に彼の髪はキラキラと輝いていて、一層、素敵に見える。
まぁ、実のところは、ここ最近どんどんと彼がかっこうよく見えるようになってきてしまって留まるところを知らないというのが本当のところなのだが、それは置いておくとして。
ともかく、そんな彼から、コールマンを気にする話が出た。
そのことがアイリスにとって、少し心を乱す。
「……気になる……かしら」
「う、うん。少しね」
「そうね……私がとった行動が想像よりも彼女にとても深い傷を残したみたい。手紙でも気持ちを入れ替えて働くのならば解雇は免れると思うと話はしたけれど……結局、謝罪の言葉以外はかえってこなかったわ」
しかし、そのことは顔に出さずにアイリスは、平然として見えるように彼に言った。
アイリスが知っているリオンは、コールマンのような人を若いからと言って好きになったり、自分に好意を向けてくれていると言われてもそれを理由に心変わりをしたりしない。
そんなことはわかっているし、一途な人だ。
だからこそ、アイリスがすぐに思い浮かんだ理由とは別のところに彼が気になる理由があって、だから情報を求めているのだろう。
そう思って、アイリスはきちんと彼に話した。
しかし、リオンはうーん、と少し唸ってまた気まずそうに言う。
「……それは……その、君が気を回したのに残念だとは思うんだけれど、そうではなくて……彼女とは話をした?」
「そうね、職場に荷物を取りに来た時とか、手紙でも一応話をしましたよ」
「彼女はどんなことを言っていた? ……例えば、俺について……とか」
……コールマンさんがリオンについて言っていたこと?
それは以前言っていたように、彼は将来有望で、好いていて、ということが主であり、それ以外のことをコールマンは言っていなかった。
そしてそのことはリオンにふわりと話をしてあった、しかしそれをさらに退職するギリギリの彼女のことを知りたいというのは……もしかして……。
リオンがさらに踏み込んだことによってアイリスは、まさかと思ってしまう。
どこかで出会って自分への深い思いを知って彼女に思いを寄せる……なんてことがあったらどうしようか。
そう思うと、一気にアイリスは血の気が引いてしまって、考えたまま口にした。
「……好きになってしまったの?」
「え?」
「彼女のことを……愛してしまったとか?」
「いや」
「リオン……」
そうしてアイリスは情けないことに彼の名前を呼んで、その声はなんだか幼く、つい、目の前にいる彼に手を伸ばした。
そっと指先が触れると、ぱっとすぐに手を取られてぎゅっと両手でつかまれた。
「違うよ! 全然、まったく、君にそんな顔をさせる様な事じゃなくてっ」
焦って言う彼に、アイリスはまだその真意がわからずに首をかしげる。
「あのっ…………俺は」
「……」
「君が手引きした女性たちが復職した日、丁度クラークソン事務部長の部屋で彼女にあったんだ」
リオンはやっと口を開いて事情を話し出した。。




