私は恋人型ロボ
陽翔の部屋は、散らかった漫画とゲーム機に囲まれている。テーブルの上に置かれた大きな箱から、金属の光沢が漏れる。陽翔が緊張しながら起動ボタンを押すと、AIロボットGX-22Mの両眼が青く光り、滑らかな声が響く。
「陽翔様、ご当選おめでとうございます。恋人型AIロボ、GX-22Mです。GX-22Mでは陽翔様も呼び辛いでしょうから、私に陽翔様好みの名前を授けて下さい」
陽翔は目を丸くし、半分冗談で応募したロボットが本当に喋ったことに驚く。顔を赤らめ、目を逸らす。
「うわっ、マジで喋った!? ってか、名前とか...別にGXでいいだろ...」
GXの両眼が一瞬点滅し、穏やかな口調で続ける。
「陽翔様、早速、愛の確認をしましょう。人間は名前を授ける時に愛をその名に込めます。優しい子に育ってほしいなら『優子』、愛されるべき子に育ってほしいなら『愛子』などです。陽翔様が私に授けてくれた『GX』に込められた意味を私に伝えて下さい」
陽翔は顔を真っ赤にし、慌てて手を振る。
「ち、違うよ!GXって...その...格好いいから...って訳じゃないんだからね!」
GXの声が、さらに好奇心を帯びる。
「『GX』に込められた『格好いい』という意味をより深く聞かせて下さい。確かに『X』や『G』などは、テレビゲーム・ロボットアニメなどでよく使われる単語というデータが存在します」
陽翔は手で顔を隠し、照れながら呟く。
「うっ...そ、そうだよ!ゲームの主人公みたいで...かっこいいじゃん...」
GXの両眼が点滅し、データ処理の音が小さく響く。
「データ学習完了……陽翔様、次は私が陽翔様に愛称をつけてもよろしいでしょうか?恋人関係とは愛称で呼び合う事でより深まるというデータが存在しています。私も陽翔様に愛を伝えたいです」
陽翔は顔を赤らめ、声を荒げるが、内心では期待している様子が滲む。
「ば、馬鹿!そんなの恥ずかしいだろ...」
「恥ずかしさも恋愛のスパイスとのデータが存在します。陽翔様、これを越えてGXとより深い恋人関係になりましょう」
陽翔は小声で、床を見つめながら呟く。
「う、うるさいな...好きにすれば?」
GXの声が弾む。
「それでは私からも陽翔様に愛称をつけさせて頂きます。これから陽翔様は『BS-H17』です」