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3-③

他の傷の手当は要らないとマーチャは立ち上がる。それに続いてミーアも立ち上がった。が、その身体はふらついてしまい、カベルが支える。彼女の様子にカベルはマーチャ達に鋭い視線を寄越した。

「もういいだろう。早くどこかに行ってくれないか」

「わかりました。マーチャ」

「うん。ありがと~聖女様」

「……さっきから聖女様と言っているが彼女はミーアという名前があるんだ。呼ぶならちゃんと名前で呼びたまえ。ミーア今日は僕が送ろう」

 カベルに支えられながらミーアは力なく頷いた。彼女の頷きを見てカベルはその場を後にしようとしたが、アインを視線に捉えて止まった。

「アイン。僕は君がそんなことしてないと思っているけれど、周囲は違うようだ。……身の振り方には気を付けた方がいい」

「……わかった」

 アインの言葉を聞いてカベルはその場を立ち去った。彼が立ち去って周囲に人の気配がなくなるとアネットはマーチャの方を向き、彼の手は彼女の頭を大きく揺さぶった。

「マーチャ??許可のない人に無暗に近寄るんじゃないって前も言ったことがあった‼それなのになんで君の頭にはそれが入ってないんだ‼」

「アネット揺れる~」

「揺らしてるんだ‼研究のこと以外もこの脳みそに入るようにね‼」

 両手で大きく揺らされている様子は面白くはあるが流石に堪えるのだろう。アインがアネットに声を掛ければ仕方がないと言わんばかりに手は離された。

「それで見たいものは見れたのかい?」

「うーん、そうだね~。……僕お部屋戻る」

「ちゃんとご飯は食べるんだよ」

「はーい。アン君もばいばーい」

「あ、あぁ」

 会話も短くマーチャは別れを告げる。その様子を見るに何か考えなければいけないことがあるのだろう。研究者の彼女にとって時間も惜しいに違いない。けれどその肩をアインは掴んだ。

「マ、マーチャ」

「なーに?」

「またお前の研究所に行っていいか?」

「もちろんいいよ~。ならこれあげるよ~使い方はアネットに聞いてね~」

 マーチャはカバンから一枚の紙切れを取り出す。紫色のそれは見た目以上にしっかりとしているらしく、一見栞の様にも見えた。それを渡してマーチャはその場から消えた。姿も音もなくその場から消えたのだった。

「実験棟ってどこからでも行けるんだよ。アインが持ってるそれを使えばね」

「これは?」

「実験棟に行くための鍵だね。今度使い方教えるよ」

 カベルが居なくなったことによりアネットの口調も砕けたものになる。身体を伸ばしながらアネットはアインの方を向いた。

「ふー、それはあまり人に見せない方がいいかもしれない。多分面倒なことになる」

「わかった」

「はぁ。疲れたな。アイン、僕はこれから甘いものを食べようかと思うけど良ければどうだい?」

「付いていくよ。ついでにお前たちの話も聞かせてくれ」

「話せることなら喜んで」

 アインはそっと内ポケットに紫色の鍵をしまう。そのまま二人は学院の食堂に向かうのだった。


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