竜宮城へ! しつこいカメの恩返し
真夏のビーチ。
カンカン照りの中気持ちよさそうに甲羅干しをする一匹の大きなカメ。
「おいおい鈍いのがいるぜ! 」
いつの間にか近所の悪ガキどもに囲まれてしまい逃げるに逃げれない状況。
ただ首を引っ込めて過ぎ去るのを待つだけ。
だが当然悪ガキどもはすべてお見通し。
「ほら出てこい! 」
無理矢理引きずり出そうとする。
カメはどうにか堪えるが今度は転がされてしまう。
「おいどけって! 俺が退治してやる! この悪人面のカメが! 」
憂さ晴らしに近所の悪ガキが決まってイタズラしようとする。
今日は木の棒で悪さするつもりらしい。
「おいそこの子供たち。カメをいじめるのはよしなさい」
救世主出現! 現れたのは釣り竿とクラ―ボックスを抱えたおかしな男。
「うるせいよおっさん! 人間のくせにカメの味方をする気かよ! 」
口の悪い生意気なガキは反省するどころか開き直る。
「おいまずいって! そいつは伝説の海人」
釣り名人で何でも釣ってしまう伝説の海人とは彼のことである。
「サインください」
「ははは…… いいが。もうカメをいじめないと約束してくれるな」
「おお! なあ皆? 」
こうしてカメは近所のクソガキから目をつけられることはなくなった。
海に…… ビーチに平和が戻った。
「ありがとうございます。ぜひお礼を」
「いいよ。大したことしてないから。今度からは気をつけるんだぞ」
伝説の海人はカメのお礼を辞退する。
「ですが気持ちが…… 」
「ありがたいんだけどほらクーラーボックス一杯だから。また今度ね」
こうして立派な海人は去って行った。
翌日。
ビーチで埋まって困っているカメの姿があった。
これは自ら埋まったのか? それともまた子供たちにイタズラされたか?
「大丈夫か? ほらお家に帰りな」
伝説の海人が再び通りかかった。
今日はサーフボードを抱えている。
「ありがとうございます。助かりました。昨日も今日もお助け頂いて。
ぜひお礼がしたいのですが」
二日連続の善行。これは断れないか?
「悪い。ビッグウェーブでもうクタクタなんだ。悪いけどまた今度お願い」
さらに翌日。
動かなくなったカメを心配して騒ぎになる。
「誰か。カメが…… 」
「どうしました? 」
伝説の海人が騒ぎを聞きつけカメを助けに。
「あなたは…… 」
「大丈夫か? 俺が動かしてやるからな」
「いえ問題ありません。あなたが来るのを首を長くして待っていただけです」
カメは元気らしい。
「心配させるなよ」
「ぜひお礼を…… 」
しつこく迫るカメ。
伝説の海人もクーラーボックスもサーフボードもなければ断り辛い。
「しかし…… 」
「ぜひぜひお礼を! どうぞ竜宮城へお越しください」
「仕方ないな。ちょっとだけだぞ」
伝説の海人は折れる。カメの背に乗って海へ。
「ちょっと待ってくれ! 竜宮城って海の中? 」
「ご心配なく。すぐに着きますので」
こうして伝説の海人はカメの背に乗って竜宮城へ。
竜宮城。
「乙姫様! 例のシャイな恩人です。伝説の海人だそうです」
「何と素晴らしい。ではさっそく歓迎の支度をしなければ。皆頼みましたよ」
竜宮城では恩人の歓迎で大忙し。
「さっきから無口ですがどうかされたんですか? 」
「元々がシャイな方ですから。あれ…… 」
「またですか? 仕方ありませんね。人間は不便でいけません」
「申し訳ありません」
「すぐに処分なさい! 歓迎会は中止! 玉手箱もなしです」
カメの背に乗った伝説の海人はそのまま息を引き取り本物の伝説となった。
<完>