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毒水

俺は何でこんなところにいるのだろう。

優勝賞金一億円に釣られて訳の分からない会場まで来てしまった。

後悔? してるよ。でも許してくれない。

優勝賞金はもういらないと言ってるのに帰らせてくれない。


「では戦ってください! 」

興奮した全身毛むくじゃらな男が銃を取り出した。

そして銃口を自らの頭に。汗を大量に掻いた手でぶっ放す。

イカレテルがこれがゲームである以上仕方がない。


セーフ! 

男は大喜び。これで勝敗は決したがなぜ俺も一発撃たねばならない。

それがルールだから仕方ない。

銃口を頭につけ考える。

今俺たちがやってるゲームはロシアンルーレット。

一発だけ弾が入っている。

確率は五分の一。さあ頭を吹っ飛ばして見せましょうか。

強い精神力でこの危機を乗り切るぞ。


緊張した場面にスタッフが駆け付けた。

「ごめんなさい。間違えて弾を三発入れた恐れが。どうぞお気をつけて」

あちらの都合だと言うのに中止せずに無茶な要求をする。


「スキップ! 」

第三ステージのロシアンルーレットをスキップする。

このゲームでは二回までスキップが許されている。

もしもの時のために残しておいたおかげで命拾い。

「では第四ステージお進みください」

ちなみにスタッフ調べで二射目は空砲だったそう。

スタッフのミスも含めてのデスゲームだと開き直る主催者側。


結局獲得賞金は現在のまま。一万千円。

ここではステージごとに一桁上がっていく。

第四ステージはギロチン二択問題。

ここを取ると百万。百一万一千円となる。

ギロチン台に上げられ執行の瞬間を待つ挑戦者だか犯罪者だか。

答えを選んだ瞬間に刑が執行される究極のデスゲーム。


うぎゃああ!

スキップを使い果たした者からギロチンの餌食となり断末魔があちこちで。

これはもはやゲームなんかじゃない。ただの人殺しだ。

もちろんそんなこと言って解放してくれるほど甘くない。


ついに順番が回ってきた。

上には生き血を吸ったばかりのブツが。間もなく俺の首を刎ねるだろう。

設置完了。問題に移る。


「1+1=? 」

とてもシンプルな問題が出る。これならば答えられる。

答えれば百万ゲット。さあAの2を。

だがその時再びスタッフが機器のトラブルを報告する。

「馬鹿野郎! 誤作動を起こすって何だ? 構わない続行だ! 」

とんでもない状況。答えは分かってるのに選べない。誤作動で間違えばギロチン。

上を見るととてもとても。そもそも選ぶこと自体がギロチン二択では不可能だ。


ここはセーフティーに。

「スキップ! 」

最後のスキップを使い最終問題へと進む。

ちなみに答えはAの2だそう。知ってたけどね。

ギロチンの餌食にならずに生還しただけいいか。


最終問題へ。

ここで正解すれば夢の一億円だ。

スキップも使い果たした。どの道正解するしかない。

「最終問題はシンプルに二択です」

最終ステージには紙コップが。液体が注がれている。

うん? 飲めってこと?

だがもちろん一切の質問を受け付けない。

早くしろと急かす。しかし最終問題。もっとゆっくりでもいい気がする。


Aの紙コップには緑色の液体が。

Bの紙コップには黄色の液体が。

「ではヒントを差し上げます。どちらかには毒水がもう片方にはただの汚水が」

毒水はそのままお亡くなりになるそうだ。

汚水は多少汚いが腹を壊すほどではないそう。

「ではお飲みください」

制限時間は五分。それを過ぎると同時に無理やり飲まされるそうだ。

即ち生還はあり得ない。スキップも使い果たした。

そもそも最終問題なのでできないのだが。

ここは覚悟を決めるか? でもまたスタッフのミスが発覚するかもしれない。

だから最後まで見極める。


ただ今回は色が違うからな。

緑は怪しい。毒物の可能性が極めて高い。

黄色はそのまま汚水を想像するし。

セオリーで行けばBだ。だがそれはあまりに単純。

最終問題がそんなに簡単なはずはない。だから逆にAが……

ダメだ。やはり掴めない。飲み干せない。


残り二分のところで三つ目のコップが投入される。

「主催者によるお情けです。賞金を放棄すれば三日三晩苦しむだけの地獄水を。

ではお飲みください」

ついに三つ目のCが運ばれてくる。

どうする? やはりここは安全策で行こう。三日三晩苦しむのは嫌だが仕方ない。

こうしてCの紙コップを手にする。


口をつけようとした刹那閃く。果たして奴らの言ってるのは正しいのか?

本当に信じていいのか? 信じ切れるのか?

残り一分を切った。そして案の定スタッフが飛び出してきた。

何か揉めている。だがもう続行でいいと話しだした。

くそ! 畜生! 飲んでやる!

カウントダウンで煽られて紙コップを手にする。

さあ果たして結果はどうなった?


後日談。

どうやら最初はAが毒水でBは汚水だったよう。

しかしスタッフのミスでAとCがすり替わっていたらしい。

こう言うことは人間だからよくあること。

ヒューマンエラーと言ったところだろうか?

怪しい団体だから報告はなくもみ消されるだろう。

だがこれは重大なインシデントに違いない。


苦しい! 誰か助けてくれ!

もう三日もこの状態だ! 死にそうだ!

そう男は生還したのだった。


                  <完>


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