一杯の水パート2
水は貴重だ。世界的に見れば大変貴重なもの。
水資源を巡って戦争まで起きている。
だが日本にいればめったに感じることはない。
それこそ災害時ぐらいだろうか。
蛇口をひねればカルキ臭い水が。
それをおいしそうに飲む味音痴の人々。
普通はろ過して飲むがそれだって臭いも味も申し分ないかと言うとそうではない。
今はスーパーや薬局にコンビニ、自動販売機で百円前後で買うことができる。
そこには天然水をうたったり海外の有名な硬水だったりと水だけで何種類も。
最近は炭酸水が多くのメイカーから発売されている。
「ねえ先輩。本当に大丈夫ですか? 顔色悪いですよ? 」
なぜか俺一人に介抱を任せて他の奴らは三軒目へと。
どうしてこんな面倒臭くて割に合わないことをしなければならないんだ。
先輩の指名なら仕方ないけどね。
「うるせえ! 俺はまだ飲める! 」
酔ってると会話が成立しないから困ってしまう。
「無理しないでください。今駅まで送りますからね」
あと十分。少なくても二十分耐えれば解放される。
駅からどうする? 放っておいていいのか? そんなことは知らない。
周りの迷惑になるので放置できないとかそんなの関係ない。
「ウエー! 気持ち悪い…… 」
「まだここでは吐かないでください。もう少し。あとちょっとで駅ですからね」
肩を貸し歩くこと十五分。ようやく駅が見えて来た。
これで解放される。もう後のことは知らない。
「先輩そろそろ…… 」
「悪いな。ちょっと頼みがあるんだが」
酔いはまだ醒めてないが受け答えは充分出来る。
これならトラブルもなく家に帰れるさ。最後まで面倒見なくたっていい。
「はいはい。トイレならそこですよ」
「違ええよ! 水が飲みてえんだ! 」
どうも酔うと我がままになる。でもこれくらいどってことない。
「分かりました。すぐにでも」
「そうか。だったら一杯水を持ってきてくれ! 」
「一杯ですか? 」
「そうだ! 一杯だ! 」
「良いんですね? 」
「良いも悪いもねえ! 早く持って来い! 」
「ではカードをお借りします」
「うるせいぞ! いいから早く行け! 」
先輩に言われるまま超特急で一杯水を持ってくる。
水? 水っと?
もう持てない。先輩も無茶ばかり言う。酔っ払いだからっていい気になるなよ。
おおちょうどいい具合に籠がある。
先輩のためにたくさん持って行ってあげますか。
「先ぱーい! ほらお水ですよ」
「うげ! 何だこの水の量は? こんなにたくさん飲めるか! 」
「いやあ…… 一杯持って来いって言うから苦労しましたよ」
「嘘だろ…… 」
「どうしたんです先輩? お目当てのものですよ。遠慮せずに」
「馬鹿野郎! 三十本も飲めるかよ! 」
「でも一杯持って来いって言うから。奮発して海外のお水を」
「有名海外シェフの美味しい水って何だ? 一本千円? 」
「はい。店にあるのを全部。お店の人もびっくりしてましたよ。ははは…… 」
「三万円? 」
「いえ…… プラス税です」
先輩は目が覚めたらしい。うん良かった。良かった。
「お前常識ないだろう? 」
「ハイ! 」
<完>