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カレー怖い

カレー怖い。

ボクは小学四年生の男の子。

今大人の食べるものに興味がある。だって美味しそうに食べるから。

パパから辛いもの以外ならもう何でも食べていいよと言われている。


ビールを飲むパパ。あれまずいよとママは言うけれど。

「ほら舐めてみな。舐めるだけだからな」

パパは酔うとそう言う。だからペロペロしてみる。

まずい! まずいよ! 

「ははは! まだ子供には早過ぎたか。子供はジュースだな」

嬉しそうなパパ。何だかムカつくからダイブ。

「こら危ないだろう! 分かったよ今度はワサビに挑戦させてやるからよ」


ワサビか…… 一度回転ずしで挑戦したんだよね。

甘いのなら大丈夫だろうとアナゴで。でもやっぱりだめ。舌がヒリヒリする。

結局我慢しきれずに吐き出した。ギブアップだ。

情けない。でももう一度挑戦してみてもいいかな。


週末家族で回転ずしに。

今度こそはとワサビを食べてみせる。

トロだ。トロを食べてこそ寿司だとパパが言うから食べてみる。

「どうした? 怖がらずにパクっと一口で食え! 美味しいぞ」

でも緊張するな。また失敗したらどうしよう? 怒られない?

物を粗末にするなと言われないか心配だ。


「ほらノロノロしてるとパパが全部食っちまうぞ」

分かったよ。食べるから…… 

箸を使わずに手でつかんで一気に。

ううう…… ダメだ。辛いよ。

「ほら堪えろ! 呑み込め! しっかり最後まで呑み込め! 」

うん。食べられた。食べられたよパパ。

「おお凄いぞ! 記念に写真を取ろう。ホラ笑って」

大喜びのパパとママ。成長…… したのかな?


これまでピーマンに七味にワサビと順調に大人の階段を上っている。

あれ? 大人の階段って何だろう? パパがふざけて言ってるんだけどね。

そして今日ついにカレーに挑戦しようと思う。

「凄いぞ。でもいいのか? 辛いぞ」

「そうよ。いつもの甘口じゃなくていいの? 」

大丈夫ママ。子供扱いしないで。

「子供のくせに何を言ってるんだ? ははは! 」

「じゃあ作るからね。これは大人のカレーだから本当に辛いよ」

甘口から辛口に。

へへへ…… 別にどうってことないよ。もう子供じゃないんだから。


夕食。

ついに辛口カレーに挑戦。見た目は大して変わらない。

ただちょっと赤く黒くて熱そうなだけ。

「よし食ってみな。パパは知らないから」

「そうそう。ママだって残したら怒りますからね」

あれどうしたんだろう? ワサビの時と違うよ。

つい無理を言って一口ではなく一人前。

当たり前だよね。一口じゃ食べたって言えない。


頂きます。

うん大丈夫。ちょっと舌が痛いし辛いけど食べれる。うんこれなら…… ダメ。

「ほらやっぱり。もうママは知らないからね。全部食べなさい。

残したらお仕置きだからね」

なぜか怒ってるママ。ここはパパで。

「だから言ったろ? 無理するなって。もったいないじゃないか」

ママほどではないけどやっぱりパパも許してくれなそう。

ううう…… まずいよ。いつものが良かった。


辛いのはいいんだよ。でもこの黒っぽい粒々のがまずいんだ。臭いんだ。

ライスだけ食べてもサラダ先に食べたからもうないし。

福神漬けも甘いから合わないよ。それに水っぽいカレーのせいで薄くなる。

こんな時ふりかけを持って来れたらな…… でも叱られるし。


「しかし美味いなこの本格カレーはよ」

あんなにまずそうなものを喜んで食べてるよ。不思議?

「そうね。この子にはまだ早かったよね。だから私は…… 」

「おいおい俺のせいかよ? 」

うわ…… カレーのせいでパパとママがケンカに。

どうしよう? まずいよ。

全部ボクのせいなのかな? でもカレーがまずいのが悪いんだ。

ボクが悪いんじゃないんだ。何でこんなに辛くて苦くてまずいんだ。


もういいや。カレーは大きくなるまで食べない。

だってカレー怖いから。

カレー怖い!


こうして嫌いの欄にカレーが追加された。


                 <完>


怖いシリーズもこれで二回目。

来年には長編『すき焼き怖い』が三部作として。

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