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タピオカ怖い

俺の好物はタピオカだ。

あのプチプチした食感が堪らない。

近くのショッピングモールに行くとつい手が出てしまう。

あれば買ってしまうのでこれはもう一種の習慣。

タピオカブームも去り誰も見向きもしなくなったけど俺は毎週のように。

暑くなればほぼ一日置きで飲んでいる。

タピオカって飲み物? 食べ物? それもよく分からない。

謎のタピオカ。タピオカ部なんてものが存在したらなと思うこともある。


「先輩はスイーツは苦手ですよね? 」

仕事終わりの一杯。

気を利かせて買ってくれるのは嬉しいがどうも俺の好みと合わない。

ただ違うと言えば角が立つし悪い気もする。

「そうだね。甘過ぎるとやっぱりきついかな」

後輩の手前あまり好きだとは言えない。抵抗感がある。

「そうだと思いました。でははい」

炭酸水を渡してきやがる。せめてコーヒーにしてくれよ。

最悪お茶だっていい。高級茶葉などどうでもいいから何とか飲めるものが欲しい。

まだ水なら飲めるんだ。この炭酸水は美味しくない上に飲みづらい。

何らかの罰ゲームかとさえ思う。これなら思いっきり甘ったるいおしるこでいい。

冬の甘い缶コーヒーと同じぐらい魅力的。夏は売ってないので買いようがないが。

それにしても全国の炭酸水愛好家の皆さんは本気なのか?

慣れれば飲めたりするの?


「そうだ。タピオカなんかどうです? 今度買って来ましょうか? 」

甘いものが苦手で通ってるのでこんなおかしな会話になってる。

でも俺は本当はタピオカ好きなんだぜ。一日に三杯も四杯も飲んでも飽きない。

それがタピオカ。俺はタピオカ党さ。でもそれが言えない。

「悪い。それだけはやめてくれ! 俺苦手なんだ。

タピオカが嫌いなんだ。大の苦手なんだ。怖いとさえ思っている」

大げさに言ってみる。

ちょっと残念だけど職場でタピオカは断ってもいいさ。

帰りに好きなだけ飲めるんだからさ。ここは格好をつける時。


こうして翌日から職場内ではタピオカが苦手な人として認識される。

「タピオカ嫌いなんですか? 」

新人の女の子にまで心配される。

そんな訳ないだろう? どうかしてるぜ。

「ははは…… 苦手なんだよねこれが。君は? 」

「だらしない男の人! 」

何か違う気もするがまあいいか。人それぞれだからな。


それから数日後。

「おい何をやってるんだお前たち! そうじゃないだろう? きちんとしろ! 」

ミスをしたので厳しく叱りつける。

一時間近く説教をしてどうにか解放。ちょっとやり過ぎたかな?

「いいか。遅れた分は残業してでも取り戻せ! もちろん残業代は請求するなよ」

厳しく叱責。皆嫌な顔一つせずに上を向く。

あーあこれで完全に嫌われたかな? 損な役回りだ。


「あの先輩…… 飲み物を買って来ましょうか? 」

叱られたのをどうにか取り戻そうと必死。だがそんな甘くはない。

「喉が渇いた。何でもいいから買ってこい! 早くしろ! 」

つい我慢できずに怒りを爆発させる。

あーあやっちゃった。仕方ないよね。


こうして買ってきたのはいつもの炭酸水。

そうじゃないだろう? 俺はタピオカが飲みたいんだ!

頭を使い過ぎて甘いものが欲しいのさ。炭酸水は逆に拷問だって。

「他には? 」

「ああタピオカドリンク。でも先輩は苦手でしたよね。いる人? 」

何ていい奴なんだろう? 

あれだけ叱られて嫌味も言われてもめげずに炭酸水を買って来る。

普通こう言う時は嫌がらせでタピオカを渡すべきだろう? 

そうすれば腹の虫も収まるはず。

うんいい奴だ。でも結果的には拷問となってしまった。

恥ずかしいからってタピオカ嫌いなんて言わなければよかった。


隣で美味そうに飲む後輩。いいな。羨ましい。

やっぱり炭酸水怖い。

違った。ここはタピオカ怖いだな。


               <完>

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