第5話
「村の歯車がいつもすぐに壊れる理由が分かりました!」
今日も顔を輝かせてリーゼロッテの下にやってきたソアラ。
最近のソアラは魔法に関することだけでなく、普段の生活におけることに関してまでいろいろなことが閃くようになっている。
もちろんこれも賢さが異常な数値になっているからだろう。
「歯車がすぐに壊れて困るっていう話をよく聞いてましたから、ずっとどうにかしたいと思ってたんです。そしたらあることに気づいて!」
興奮気味にしゃべるソアラは紙に歯車の絵を描き始めた。
絵の上手さは本人の賢さと全く関係ないのか、稚拙で年相応のものだった。そのことになぜかリーゼロッテは安堵を覚える。
「組み合わせた二つの歯車において、いつも同じ歯同士が当たると、そこだけどんどん摩耗していっちゃうんですよ! だから歯の数が互いに素になるように作る必要があるんです!」
リーゼロッテは先ほどの安堵をあっさり取り消したい気持ちになった。
――互いに素ってなに?
そんな疑問を抱く先生の前で、生徒は下手な絵を完成させた。喜色満面の表情で二枚の歯車が描かれたそれを見せつけてくる。
「見てください。二つの歯車の歯の数が、互いに素になってますよね? こうすることで全体が均一的に摩耗していきますから、一部の歯だけ極端に摩耗することなく、ゆがみなども発生しなくなるわけです!」
「そ、そうですか……」
シャレのつもりで言ったわけではないのだが、こんな返事しかできないリーゼロッテ。
だけどもソアラの話を聞いているうちに、歯車が壊れにくくなるということだけはなんとなく理解することが出来た。
さすがに子供の言うことは参考にしないだろうということで、リーゼロッテが歯車についての説明を村人たちに行うことにする。
村人たちは半信半疑だったものの、村一番の魔法使いが言うことだからとその指示に従い、今までと違う歯車を作って取り付けた。
しばらくして歯車が壊れずに動き続けることが判明し、リーゼロッテは村人たちから感謝され、村一番の魔法使いは知識も最高峰だと褒められたが、彼女自身は複雑な気持ちになっていた。