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chapt 1 マゴッタ登場!

こんにちは。kzfactryです。前からやってみたかった小説の投稿を始める事にしました。日本語がおかしかったり乱文が酷かったり(……)と色々ご不満出るかと思いますが、温かい目で見ていただけると嬉しいです。

 そもそもこの作品を作る気になったのは、地方の人口がどんどん減っていってしまっていて折角の日本の文化である“方言“を継承してくれる人も少なくなってしまっているんじゃないか?という気持ちがメインです。百年後の日本人がみんな標準語を喋っているんじゃあまりにも寂しい(大阪弁だけは無くならないと確信してますが)と思い、何かのきっかけにでもなってくれれば、と思ってます。方言についてはある程度調べていますが、地元の方からすると不満だらけのものになると思います(涙)。頑張って調べてるんだなぁ、努力賞、くらいの感じで柔らかく流してください(お願い)。こうした方がいいですよ、と言う意見は大歓迎です。何せ一人で調べながらやっていると本当に発狂しそうになるくらい日本の方言は難しい(私には)。その場合現代の方が使っている表現ではなく、お爺さん、ひいお爺さん(もちろんお婆さんも)が使っていたような昔の表現の方がオリジナリティが高いと私は考えています。今の人はそんな表現使わないよねぇ、とか、爺ちゃんがそんな言い方していたなぁ、などですね。

 それと作品中に地方の名産品や文化などを使っています。中にはマゲッパの様に明らかに違う使い方(被らないよね)をしている物もあります。悪意はないので、話を面白くするために苦労しているんだなぁ、と流していただけると助かります。

 退屈だし暇潰しになるかな?くらいの感じで楽しんでいただけると嬉しいです。よろしくお願いします。


      kzfactry





 つるんとした卵とおにぎりを足して二で割ったような体。パールホワイトに輝いている。それに丸いクッキーの様な顔が。その上に黒い縦長のかりんとうの様な目が二つ。‥コンセントと言うと本人がとっても怒るので内緒だがまさにコンセントそっくりの顔。可愛らしい白いツノのような手が二つ。足は先の方が大きく丸くなっていて白ウサギが丸まっているような形。左の額?のところにオレンジ色の触覚?がある。走っているスピードに流されてオレンジの触覚がヒラヒラたなびいている。すっごく元気。弧を描きながらすごい勢いで走ってくる。


タタタタ!


『こんにちは、僕マゴッタ!妖精さ!!得意なものは…ダンスで〜〜〜〜す!♡』


そう言って可愛らしい足で器用にボックスステップを踏む。その後足をちょこんと上げたかと思うとすごい勢いでおしりでスピンを始める。


くるくるくるくるーーー!


なるほどダンスが得意というだけあってかっこいい。


ピタ!


綺麗にポーズをつけて止まる。本人すごく得意げ。かわいい。


『このダンスでジパンの妖精さん達を応援したいんだ!頑張るからよろしくね♡!』


これは踊るタマゴの妖精マゴッタとその仲間達の物語。


         *


マゴッタはタマサンフリーダムと呼ばれる妖精の国の一角に住んでいる。住処は…と言うとマゴッタそっくりのデザイン。マゴッタをそのまま大きくした感じ。だが流石に腕と足はない。しかしちゃんと左の額にはオレンジの触覚まで付いてる。割とこじんまりした可愛らしいお家。マゴッタよりは少し丸っこいかな?名前はハウスマゴッタ、オシャレな家である。そのハウスマゴッタの中から大きな音が鳴り響いてきた。


デデデ、デンワデンワ デデデ、デンワデンワ


フォンマゴッタ。マゴッタを小さくしたような電話機が歌うように鳴り出す。結構自己主張の強いフォンマゴッタは一生懸命体を左右に振ってアピールしながら歌ってる。微笑ましい。


『は〜〜〜〜い♡』


マゴッタが奥の方から走って来て(この家は見た目より広そうだ)フォンマゴッタを手に取ると


『うぢのポンTAさしったげ困ってら、助げに来てぐれ。バタモチ食わせるがら』


 うろたえるマゴッタ。文字にするとなんとなくわかるような気もするが、フォンマゴッタから聞こえてくるちょっとしわがれたお婆ちゃんの声?ではほとんど意味がわからない。汗がどっと出てくる。


『ちょっと待っててね。WooちゃんWooちゃ〜〜〜ん!』


フォンマゴッタを片手に家の奥に向かって走り出す。誰かを探してるみたい。


          *


 とっても可愛らしいタマゴ?頭の後ろから緑色の小さな輪っかをたくさん繋げ先の方だけ緑の棒の様になっている触覚?腕?……何となく小口ネギを小口切りにして繋いだ様に見えるが。そんな素敵な触覚を二本ひらひらさせたとっても可愛らしいタマゴ。薄いホワイトピンク色の可愛らしい体。愛くるしい瞳の両脇にちょっと濃いめのピンク色のハート模様が付いている。それに後ろのお尻のあたりにもピンクの大きなハート。ズーラWooはとっても可愛いウズラのタマゴの妖精。


クリンクリン


足は無いがお尻を左右に振りながら可愛らしい擬音を出してちょこちょこと歩いている?目をキラキラさせてとっても楽しそうに何かに向かっている…が、その正面にいたのは…


『ダメデス、Wooサンハジブンノブンヲタベテシマッタデショウ』


フリッジマゴッタ。マゴッタそっくりの冷蔵庫。が、迫り来るWooちゃんに対抗している。マゴッタが対Wooちゃん用に開発したデザート防衛機能付きの冷蔵庫だ。しかしそのフリッジマゴッタはWooちゃんを目の前にして震えている様に見える。この可愛らしいタマゴの妖精がそんなに怖いのか?


『ダメー!』


フリッジマゴッタが震えながらも意を結したと言う感じで反撃に出る。顔のデザインの扉部分で噛み付く(挟む?)攻撃に出た。


『イダダダダッ!!』


そこへ丁度フォンマゴッタを持って飛び込んできたマゴッタがWooちゃんの代わりに腕を噛まれた。痛そう。


『ふーーー、痛い』


マゴッタは、噛まれた手を器用にふうふうしながらとっても残念そうに言う。


『フリッジマゴッタ、僕の分をWooちゃんにあげて…』


『イインデスカ?マゴッタ』


フリッジがとってもびっくりした顔で言う。よほど珍しいことなんだろう。フリッジマゴッタが顔の部分を上に向かってオープンする。すると…


プルンプルン


デザインはマゴッタに似ているがイエローのボディにカラメルソースがかかったプリンが現れた。とっても美味しそう。その目の前に愛らしいWooちゃんが。Wooちゃんの影がプリンにかかると気のせいかプリンが冷や汗をかく。


『ウゥゥゥ♡』


Wooちゃんが大きく口を開けるとびっくり。大きな口に鋭くて大きな歯がたくさん。まるでジョーズ!


パクン!


Wooちゃんが口を閉じると跡形もなくプリンは消えていた。…儚い。モッチュモッチュと大きな動きでWooちゃんが口を動かす。すると、


『ウウウウゥゥ♡!』


Wooちゃんは喜びの声をあげながら緑の触覚でハート型を作ってくるくると回り出す。…するとWooちゃんから薄いピンク色の柔らかい光が。その光に包まれると今まで全く分からなかかったフォンマゴッタの相手の言葉が…明瞭にわかる様になった。…Wooちゃんの能力?素晴らしい。やっと、話が通じてホッとした表情のマゴッタ。


『うちのポンTAちゃんがすっかりしょげちゃってるんで、元気を出させて欲しいんだけどねぇ。うちはターキアだよ。お願い』


『すぐみんなで行きますからねー。待ってて!』


そう言って通話を切ると、プリンを食べ終わって満足げなWooちゃんに


『サーメNYANは何処?』


と聞いた。Wooちゃんは愛くるしい仕草ではあるが体を斜めにして


『ウ?』


知らない、と言う表情。それでも愛くるしい。マゴッタはハウスマゴッタの中をキョロキョロしながら走り回る。?外から見ると小さく見えるが中は結構広いようだ。


『サーメNYANサーメNYAN!!』


マゴッタが部屋を覗くと白い丸にちっちゃい大豆のような丸が二つくっついたものが転がってる。ころん、ころん。その白い丸が左に、右に、と揺れながら動いたり止まったり。どうもこれはサーメNYANの寝転がっているお尻の方から見た光景らしい。


『また寝てるの〜?ターキアに困ってる人がいるから出かけるよ』


マゴッタが顔を覗き込む。


『い~やにゃん』


サーメNYANはごろごろしていっこうに起きようとしない。ちょっと太めのドリルの様なライトブラウンの頭。そのドリルのような部分に白い粒のようなものが散りばめられている。その頭が大福だいふくの様な形の顔に乗っかっているのでライトブラウンのターバンを被っている様に見える。大きくてイタズラっぽい印象の目。縦長でまるで猫のような瞳。ピンと上を向いたまつ毛がとっても特徴的。しかし口は丸っこいWの様な形で可愛らしい。とっても存在感抜群のサーメNYANはネコザメのタマゴの妖精。……だが、ひたすらゴロゴロしてる。のんびり屋さんなのかな?


『ターキアにはおいしい食べ物があるって…』 『いーくにゃん!♡』


目を細めたマゴッタが(煽るように)声をかけると食い気味にサーメNYANが返事をする。食いしん坊さんのようだ。サーメNYANは座り直して猫そっくりの瞳をキラリと光らせた。大豆のようなちっちゃい足でピョンコピョンコと歩いてマゴッタについてくる。


『ハウスマゴッターーー!いいよー!フライトモーーード!!』


マゴッタが大きな声で言うと


ハウスマゴッタの頭頂部が開き気球がするするっと出てきて、みるみる膨らんでくる。それと同時に左額のオレンジ色のヤクミ部分が後ろに折れ曲がってスルスル伸びる。その先端がパカッと三つに割れて三枚のプロペラが出来た。凄い!カッコいい♡飛行船みたい。そのまま少しづつハウスマゴッタは空中に浮き出した。


『ターキアまでしゅっぱーーーつ!』


マゴッタが掛け声をかけたまさにその時、空から巨大な影が


『あら、マゴッタちゃんお出かけ?』


巨大な鶴の妖精が上から声をかけてきた。とっても大きな妖精さんでハウスマゴッタが完全に影に隠れてしまうくらい大きい。…しかし体に似合わず羽はものすごく小さい。パタパタさせてる。どうやって飛ぶの?よく見ると足が見えない。その巨大な鶴妖精がゆっくりとハウスマゴッタの隣に降りる。大きな体からは想像できないくらい柔らかく着地した。足は無いようだ。お腹を地面にくっつけている。長ーい首を起こしてキュルンとした愛らしい瞳でマゴッタを見てくる。


『あ、CHOタンさん、こんにちは。ターキアまでお出かけなの』


ターキアと聞くとタンと呼ばれた巨大な鶴はびっくりした顔で、


『ターキアは遠いわよ。いいわ、丁度カイドウキングダムまで行く途中だったから運んであげる。その代わりこの子たちをおうちに入れてくれる?スピードが出せなくて困ってたの』


そうタンさんが言うと背中から…シマエナガ?の妖精さんが三羽顔を出した。先頭の一羽は五角形の星形がついたおしゃれなバックルがついたベルトをしてる。


 三羽がそろってこちらを覗き込む姿はとても愛らし……い?マゴッタがほわっとしかけたその時


『てめー何見てんだ!このたくらんけっっっ!!』


顔に怒りマークをたくさん浮き出した五角形の星形のバックルを付けた一羽のシマエナガがマゴッタをつつきながら追い回す。


 『いたたたたた、痛い痛い!』 


マゴッタが右往左往して逃げ回る。あらららら。が、サーメNYANの前まで来てシマエナガが急ブレーキをかける。サーメNYANの鋭い眼光がキラリ。…鋭いのは眼光だけだが。相変わらずゴロゴロしている。


『う……、できる…』 


冷や汗を出してシマエナガがたじろぐ。そこでタンさんが声をかけた。


『だめよ、いたずらしちゃ。一緒に乗せてもらえないとスピードが出せないからね』


タンさんはそういうといつの間にかハウスマゴッタが気球の代わりに出していたフックを首にかけて


フワリ


巨体とは思えない柔らかさで宙に浮く。…小さい羽根をパタパタさせて。飛び立ってからは早かった。


びゅん!!


ものすごいスピード。あっという間に高度を上げる。下を見下ろすと、妖精の国らしく一つ一つの国がまるでクッキーで型取ったようなモコモコした形。…どこかで見たことあるな。まるで日本そっくり。巨大鶴のタンさんは迷わず北を目指す。マゴッタ達が居るタマサンフリーダムからターキアは北の方角にあるらしい。タンさんは幾つかのクッキーの上をすごいスピードで飛んで行く。…小さい羽で。


ハウスマゴッタの中では三羽の小さな客様が何やら相談を…


『オヤビン、エガナンのオヤビン。なまらすごかったでやすね、都会の連中』 


一羽のシマエナガの妖精がエガナンと呼んだシマエナガにこそこそ相談する。このシマエナガはベルトのバックルに…カニの爪?を型どったものがついてる。もうもう一羽のシマエナガのバックルにはどう見てもジャガイモを型どった物が。三羽揃っておしゃれさんのようだ。


『はんかくさい事言ってんでね!ワシらの楽勝じゃ!なんつってもワシらはセカイセーフクを目指すんだべさ!』


『はわわわわわ、わやカッコいい♡』


カニのバックルの方がシーマ、ジャガイモのバックルはマーシという名前。二羽とも憧れの眼差しで五角形の星形のバックルのシマエナガを見ている。名前はエガナン。…なぜわかったかと言うとベルトの横にカタカナで名前が書いてある。大事なベルトなのね。それにしてもセカイセーフクとは怖いことを言う。


『セカイセーフクってなんすか?』


カニのバックルのシーマが首を捻りながらとっても純真な顔でエガナンに聞く。エガナンは一瞬たじろいだが


『セカイセーフクはな…すごいんじゃ!』


少し冷や汗をかきながら胸を張るエガナン。…どうもカッコいい言葉だと思っているらしいが意味は知らないようだ。ちょっとホッとする。それでも二羽はさすがオヤビンと体を震わせて感動しながら納得していた。仲良しなのね。


『カイドウキングダムに戻ったらしっかり練習じゃーーー!』『『おおーー!!!』』


エガナンがかけ声をかけると二羽も勢いよく答える。練習?何かはわからないけど大乗り気。


          *


 ターキアに入った途端一面真っ白の銀世界。少し前まで雪が降っていた感じがあるが今は雪も止んで明るい日差しが雪面を照らして、キラキラと輝いている。素晴らしい景色だ。平原の多いのんびりした感じのところだが山の方にはかなり高い木や竹林などもある。ハウスマゴッタは上空でCHOタンさんに切り離してもらい、フライトモードでのんびり飛行中。


『『わ〜〜〜♡』』


マゴッタとWooちゃんはすっかりターキアの景色に魅了されてしまった。……何故かサーメNYANは目を細めて不満げな顔だ。三人はフライトモードのハウスマゴッタで上空からターキアの景色を見ている。ハウスマゴッタの顔に見える部分はゲートになっていて、さらに目の様なデザインの部分は透明な窓になっている。部屋の中にいながら外の景色がばっちり見える。なんて素晴らしい機能。


ぷるぷるぷる


のんびりしたプロペラ音を響かせながらハウスマゴッタが下降していき、山ぎわの平らな部分に着陸する。ハウスマゴッタは着陸すると、顔の形をしたハッチをオープンさせる。上部から外に向かってハッチのように開くので、少しくだりながら外に出られる感じ。ハッチを開くことによってキラキラときらめく白銀の光がハウスマゴッタの部屋の中まで入ってくる。それと共に


ぴゅう


とっても冷たい空気も入ってくる。


『さーむにゃん!』


そう言ってサーメNYANは部屋の奥まで引っ込んでしまった。さらに特徴的なターバンの様な形をした頭の中に体を引っ込めてしまう。ちっちゃい体なのでスポンと簡単に入ってしまう。そして目だけを出しながら、嫌でーすという感じでマゴッタを見てくる。寒いのが好きでは無いらしい。マゴッタのコンセントのような目が八の字の様になり、ザンネーンとばかりにシオシオした。対してWooちゃんは嬉しそうに雪面に転がり出る(まさに転がって)。その勢いで雪の中をピョンコピョンコ跳ねながら雪にWooちゃん型の丸い跡をいくつも付けている。丸い跡の中にもしっかりハートマークが入ってる。さすがWooちゃん。とっても嬉しそう。


『ウー!!♡』


跡をつけながら山の方までピョンコピョンコ進んでく。


『Wooちゃん、あまり遠くまで言っちゃダメだよー』


マゴッタがWooちゃんを追っかけていくとその山の方から…


ゴリンゴリン!バキバキバキ!!ガリゴリガリ!!!


とんでもない音が聞こえてきた。マゴッタが慌ててそちらの方を見てみると…。竹林の中に、鹿?の妖精さんかな。二本足で立ってぐるぐるメガネをかけている。お髭もたくさん。お爺さんかな。ちょっとオシャレな和服の様なものを着ている。水戸黄門様みたいな野袴?丈は膝までしかなくだいぶ短い。マゴッタとWooちゃんがお爺さん鹿の方を見ていると気付いたようだ。手には竹を持っている。…先っちょには齧った様な跡が。


『おや、めんけごと。どこのわらしだ?』


鹿のお爺ちゃんは手に持った竹をゴリゴリ噛み砕きながら言う。さっきの大きな音はこの音だったのね。それにしても物凄い歯。それを不思議そうに見ていたWooちゃんがおもむろに口をぱかっと開けて生えている竹に横向きにかぶり付いた。さすがWooちゃん噛みついたところだけ竹が綺麗に無くなる。


ゴリンゴリン…Wooちゃんは口の中で噛もうとしていたが顔をしかめて


『ぷっwoooo!』


と竹を吐き出す。と言うより吐き飛ばす。物凄い勢いで山の裏の方まで竹が飛んでいった。


『ぎゃ』


ん?なんか遠くで声がしたような…。気のせいか。その様子を見ていたお爺さん鹿は微笑みながら。


『まだわらしには笹は早かったけな』


鹿爺さんはニコニコしてる。笹?齧っているのは竹だけど…


『お爺さん、ポンTA君知ってる?』


竹を齧りながら帰ろうとする鹿爺さんにマゴッタが尋ねる。するとお爺さんはちょっとびっくりした顔で。


『おお、あんだポンTAの知り合いけ。ポンTAならこの裏でポンGとポンBarの手伝いをしとる。へばな』


そう言うと鹿爺さんは竹をボリボリ齧りながら去って行った。鹿爺さんの迫力に押されてマゴッタとWooちゃんはほーっと見てるだけだった。


           *


 Bワグーンは大きなツキノワグマの妖精さん。黒くて毛がモフモフの巨体に胸に三日月型のカッコいいプレート、それに四角くて横長のサングラス。カッコいいけど怖そう。…だが今は痛そうにしてお尻をさすってる。とっても苦手な鹿爺さんがいたので木陰から様子を見ていたのだ。大きい体だが気が小さいようだ。そしたら竹がものすごい勢いで飛んで来てBワグーンのお尻にぶすーっ!思わず悲鳴を上げてしまった。


『ぎゃっ!』


叫んでから思わず口を塞ぐ。そばにあの怖い鹿爺さんが居るからだ。最初の出会いが最悪だった。この鹿爺さんが居ると怖くてしょうがない。なんだかよく分からない言葉で、


『ごっつぉみっげ!ん?この松茸しねな』


などとよく分からない言葉で尻尾をゴリゴリ噛まれた。危うくエサにされるところだったのだ。怖い。この熊の妖精は見かけと違い、だいぶ臆病なよう。サングラスを取って冷や汗を拭ったら、キュルン♡といったさくらんぼのような可愛らしい目をしている。…どうも、馬鹿にされない様にわざと怖そうなサングラスをしているらしい。結構苦労しているようだ。そもそもワグーンはターキアの出身ではない。もっと南の方に暮らしていたのだが怖い奴が来て追い出されてしまったのだ。逃げているうちにいつの間にかターキアまで来てしまったと言うところ。苦労人(熊)なのね。言葉もよくワカランし、いきなり尻尾は噛まれるし。それは鹿爺さんを恐れるわけである。しかしワグーンはお腹が空いている。悲しいくらい。そこで怖い鹿爺さんがちゃんといなくなったのを確認すると、残ったたまご?二つがとっても美味しそうに見えた。


『たまご、んめかな…』


恐る恐る大きな木の影に隠れながらマゴッタとWooちゃんをみる。


がさっ


ふと後ろの方から物音がした。そちらに目をやると…。キランと鋭く光る目。がワグーンの方をじっと見てる。はわわ。よくみると頭がドリルの様になっていてとっても強そう。目力も強い。怖い。取りあえず逃げよう。ワグーンはダッシュした。…しかしお腹は減っている。


(たまご食べでえ…)


ワグーンはやっと熊の狩猟本能を思い出したようにマゴッタ達の方向に向かって駆け出した。


            *


 サーメNYANはハウスマゴッタでまだゴロゴロしていた。相変わらずお尻の方からのアングルでコロコロしている。それがピタッと止まる。よく見るとその足の角度が丁度午後三時。……どうもこれはお尻時計になっているらしい。サーメNYANのにとっての腹時計ならぬお尻時計なのだ。


くぅぅぅ


お腹の虫が小さく鳴った。サーメNYANの頬がちょっと赤くなっている。誰も見ていないのに恥ずかしそう。


『にゃん♡』


一声出すと表にトコトコとお出かけ。丸い大豆のような小さい足の割に軽やかな足取り。ステップステップ。得意の嗅覚でマゴッタとWooちゃんの臭いの痕跡をたどって行く。鼻は見当たらないが嗅覚は鋭いみたい。時折プルっと震えるが、寒さに対して好きでは無いというだけでまるっきりダメというわけでは無いらしい。さすが妖精さん。雪の上を滑らかに進んでいく。

 サーメNYANは二人の臭いのあとを追いながら山の裾野のあたりまできた。すると、大きな熊の妖精さんが木のかげにいるのを見つけた。サーメNYANは結構人見知りで恥ずかしがり屋さんだ。大きな熊さんにマゴッタ達のことを聞こうか迷っていた。すると、サーメNYANの方をチラッと見た大きな熊の妖精さんが、


ピューーー!!


ものすごい勢いで走っていってしまった。あらら、聞き損っちゃった。


          *


 ポンTAはきりたんぽの妖精。丸い縦長の体に赤いほっぺ。可愛らしい。それに青のチェック柄の半纏を着ている。頭には…横に縞模様が入ってる木の帽子をかぶっている。きりたんぽの妖精さんの割に小さめなのはまだ子供だからか?ちょこまかと動く様はとても愛くるしいのだが、今は膝を抱えてしょんぼりしている。


『おら全然でぎねぇ…へじね…』


あらら、落ち込んでしまっているようだ。クリクリした目に涙がじわっと、可哀想。しょんぼりしているポンTAの向かいから


タタタッ、クルクルクル


軽やかな擬音を立てながらタマゴが走ってきた。走りながら回ったりしている。とっても元気。


『こんにちは〜、君がポンTA君?マゴッタでーす!』


くるくるっと回ってピタッとポーズをつけて止まる。その後ろからちっちゃいたまごがピョンコピョンコとお尻を振りながらついてくる。こちらは緑の触覚?がとても綺麗で顔にハートの模様までついている。


『あれなしてタマゴさん? ……二人ともタマゴの妖精さんなの?』


Wooちゃんがきた途端きりたんぽの妖精であるポンTAの言葉がわかりやすくなった。…とっても助かる。


『僕、ポンGとポンBarの手伝いをしたいんだけど全然うまくいかないんだ…トロくて不器用だから…』


ポンTAはすっかりしょげて落ち込んでいる。これはマゴッタの出番だ。


『ポンTA君、最初から上手くできることなんてないよ。みんな努力してちょっとずつできる様になっていくんだ。マゴッタだって今はこーんなに…』


そう言いながらマゴッタは得意のボックスステップからヒップスピンのコンボをポンTAの前で披露する。最後はピタッと止まった。とっても得意げなマゴッタ。横で見ているWooちゃんが緑の触覚で器用に拍手する。二人はとっても仲良し。


『すご〜〜い♡』


キラキラしたポンTAの素直な称賛の視線が。マゴッタは鼻は無いけどかわりに左の額についているオレンジのヤクミがぴーんと立っている。オレンジのヤクミはマゴッタの心のバロメーターらしい。まだ伸びてる。


『うまくダンスできる様になったけど最初は転んでばかりだったんだ』


そう言いながらマゴッタはマゴッタはポンTAの手を取る。二人の間にもう友情が芽生え出してる。マゴッタはとってもフレンドリーなのだ。


『一緒に手伝ってあげるからポンGとポンBarのところに連れて行って』


           *


大きな切り株の上にちょこんときりたんぽの妖精さんが二人。二人共背が少し丸まってかなりのお年のようだ。二人共持っていた湯呑みでお茶をずずず。完璧な動作のシンクロ具合が二人の一緒にいた年月を物語っている。とっても微笑ましい。


『おいの漬げだブリガコく?』


『おお、ポンBarの漬げだブリガコはんめぁからの、嬉しぇの♡』


そう言うとポンGはポンBarから竹皮(笹でできた包)を受け取ってそれを開く。中からは、木?…に見えてしまう大根の漬物が現れた。それをつまんでポリポリ。ポンBarも同じくコリコリ。何とも微笑ましい光景。


ポリポリポリポリ


コリコリコリコリ ズズズ、ズー


ポリポリコリコリポリコリコリ


コリコリコリコリポリコリコリ、ポリポリポリポリポリポリポリポリコリポリポリ、ズズズ、ズズ、ズズ〜ズズ、コリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリコリポリポリ


……最後はお茶を啜る音も混じって、ラップミュージックに聞こえてきた。仲が良くて微笑ましくて才気あふれる妖精さんのようだ。


『ポンBar、マゲッパ何個ぐれぁ作るようべがなぁ?』


ポンBarはちょっと目を細めて考えた後


『丁度在庫も無ぐなったで、とう程作ればえべかなぁ?』


『ん…』


そこでポンGがふと気がついてポンBarに聞く。


『そごのおおぎなふろしぎ何入ってらの?』


見ると二人が座っている切り株の後ろには大きな風呂敷が。大きい。ポンGとポンBar二人共入れるくらいの大きさだ。……ポンBarはどうやって持ってきたのだろうか?と言うくらいの大きさだ。知らない人が見たら夜逃げの途中かな?と思うくらいの大きさだ。ポンBarはひょっと目を大きくしたあと後を見て、思い出したと言うように


『これがらポンTAのこどでマゴッタさん来てけるんでおやづたがいでぎだ』


『おお、そりゃえがった。ポンTAさこごんとご元気ねがったからの』


『ん〜ん〜、したがらマゴッタさんさ助げでもらうべおもっでぇ』


『ん、そりゃえごどだぁ』


ポンGがうんうんと大きく頷く。……意味は全然わからないが何やら非常に重要な会議らしい。すると二人がビジネス会議(?)を開いている時に三人の子供の妖精が現れた。ポンTAに先導されてマゴッタとWooちゃんがわらわらとやってきた。


『こんにちは〜〜〜♡マゴッタが来たよ〜〜〜!』


            *


『あれま、もう来てくれたの?びっくりした!ありがとうね』


ポンBarが驚いたと言う感じで三人を見ながら大きな声を出した。…急に言葉がわかるようになった。とっても助かる。Wooちゃんがニコニコしているからか?Wooちゃんのラブリーパワーなのか?……しかし、そのWooちゃんが鼻は無いけどスンスンと匂いを嗅ぐような仕草をする。すると


ぎゅWoooooううううぅぅぅぅ!


と物凄い音が。Wooちゃんの表情が急に寂しげになる。それを見たポンBarが


『あれ、めんこいわらしじゃ。はらへってらんっだか?ばたもぢけ』


そのままポンBarは風呂敷のところまで行って包みを開けて何かを取り出す。…そう言えば、またきりたんぽの妖精達の言葉がわからなくなってしまった。どうもWooちゃんの体調(腹具合?)に関係ありそうだ。…ちなみに妖精の世界の話なので方言に関するクレームは一切受け付けません(業務連絡)。とにかくポンBarはニコニコしながら風呂敷から出した竹皮で包まれたものを開く。中から黄色くて細長い長方形のおもち?の様なものが出てくる。ほのかにバターの香りがしてとっても美味しそう。Wooちゃんは目をキラキラさせると


『う〜〜〜♡』


と言ってジョーズの様な口をパカッ!っと。危ない、ポンBarごと食べられてしまいそう!


ばくん!!


Wooちゃんが口を閉じると……ほ、ポンBarは無事だった。それどころかポンBarの持っていた竹皮もそのままで、バタモチだけが綺麗になくなっていた。どうやって食べたのかしら?


モッチャモッチャ


『う〜〜〜♡!!』


Wooちゃんは豪快に咀嚼すると、とっても気に入ったみたいで緑の触覚でハートマークを作ってくるくるくるくる回る。淡いピンク色の光がWooちゃんから漏れ出す


『あらあら、よかったねぇ。気に入ってくれたのかい?』


ポンBarもとっても嬉しそう。まだたくさんあるバターもちを四人でわいわいと食べ出す。とっとも微笑ましい光景だ。


           *


 …しかしそれを見ている黒い大きな影が。Bワグーンだ。虎視眈々とマゴッタとWooちゃんを狙っているのか?二人がピンチ?しかし


『こ、怖え…』


ガタガタ震えてサングラスがずれてしまっている。可愛らしいさくらんぼの様な目が涙目に。鼻水まで垂らしてる。どうやら今のWooちゃんの食事(捕食?)シーンを見てしまったようだ。恐ろしい。一番小さくて食べ頃なたまごだと思っていたぶんショックも大きかったようだ。あのジョーズのような口で噛まれたら…考えただけでもゾッとする。でもお腹は減っている。仕方なくワグーンはマゴッタを目標に変更。怖いジョーズの様なWooちゃんがマゴッタから離れることをじっと待つことにした。


           *


バタモチを食べ終えたポンTAがポンGとポンBarの前にちょこんと座ると


『ポンG、ポンBarうまくマゲッパ作れなくてごめんね…』


ポンTAはそうシュンとしながら言う。マゴッタのダンスで元気をとり戻せたのか、しょげているが最初に見た時よりは多少元気が戻ったようだ。それでも下を向いている。ポンGがそんな様子のポンTAに対して


『慌てることはないよ。のんびり覚えればいいんじゃから』


そう言いながらポンGは被っていたマゲッパをとる。円柱状の丸い頭のてっぺんに一回り小さい穴が。ちくわにそっくり。その頭をマゴッタとWooちゃんに見せる。


『私らきりたんぽの妖精には頭に丸い穴が空いてての、ここに水や雪が溜まっちゃうんじゃよ。そうすると体の具合が悪くなっちゃうんだ。だからこのマゲッパはきりたんぽの妖精の必需品なんじゃよ。無いととても困るんで昔から作っとる』


そうのんびり答えるポンGの横でポンBarもニコニコしながら、


『そうだよう、ひと月に一つか二つくらいしか売れないけど無いとみんなが困るんじゃ』


とっても三人とも仲がいい。わざわざ遠くからマゴッタが来るほどのトラブルではなかったか?でも美味しいバタモチが食べられたからいいのか?旅行を楽しんだ感じ?


『せっかく来たんだし、作るところを見ていくかい?』


ポンGはそう言うとよっこらしょとばかりに起き上がる。ポンBarと一緒で少し腰が曲がっている。こう見ると普通におじいちゃん。横に置いてあった鎌を二本手に持った…ら、


ガキーーーーーン!!!


急に空気が変わった。ポンGからものすごい勢いでオーラが巻きたつ。眼光が猛烈に鋭い。


フシュゥゥ


ポンGの身体中から湯気まで立ち昇っている。こ、怖い。それに呼応するようにポンBarも立ち上がる。ポンGのオーラが乗り移ったみたいに二人でシンクロし出した。ポンBarはいつの間にか口に木の細い紐のようなものを何本も咥えている。左手にはハケ。右手には先が細くなったヘラ。少し斜に構えて立っている。か、かっこいい。


ダッッッ!タタタッッッ!!


ポンGが猛然とダッシュ。一本の大きな杉の木に向かった。そのままの勢いで垂直に木の表面を駆け上がる。だいぶ高いところにまで駆け上がると、右手の鎌で横一閃。そのまま両手に持っている鎌を二本とも杉の木に突き立てる。


シュンッ!ガッッッ!!カーーー!!!


 ものすごい勢いで切り下ろしてくる。根元近くまで切り下ろすと、クルクルッと両手の鎌をキラめかせながら回転する。あっという間に薄い木の板が十枚ほどできた。両端の方にちっちゃい穴のようなものをあける。これは座ってちまちまあけていた。ちょっと可愛らしい。しかしマゴッタとWooちゃんはあまりの迫力にボー然。その頃にはポンBarも行動を開始していた。クルクル舞うように回りながら板の両端にハケでのりを塗っていく。そのまま流れるような動きで自分のマゲッパを頭から脱ぐと板の端を自分の額に当てて、クルクルッと一回転。頭の前で綺麗に合わせると、口に咥えていた木の細い紐で器用に縫い留めていく。ここはやはりポンBarもチクチクちまちま。可愛い。それにしても二人ともとてつもない技量だ。マゴッタなどはボー然とし過ぎて口の部分がカタカナで(アワワワワ)となるくらい衝撃を受けてる。いつの間にかポンGが丸く切り抜いた木の板をフリスビーのようにポンBarに向けて投げる。ポンBarはそれをノールックで綺麗にキャッチ。そのまま自分が作った木の輪っかに貼り付ける。二人の作業であれよあれよと言うまに十個のマゲッパができた。


『こんな感じじゃな』


ポンGがニコニコしながら言うと、ポンTAとマゴッタが声を揃えて


『できな〜〜〜〜い!!』


         *


『むむむむむ、よっこいしょ』


『イタタタタ』


マゴッタとポンTAの声。ポンTAの頭に板を押さえてひとまわり回そうとしている。なかなか板が丸くなってくれない。そばでWooちゃんが触覚でハケを持ち(とっても器用)板の端の方にのりを塗っている。三人とも一生懸命。


ぐぐぐぐ、パン!


丸まるのを嫌がった板が(?)弾けるようにまっすぐになった。


『『わーーー!』』


三人三様に吹き飛ばされる。きりたんぽとタマゴの妖精なのでそれはそれは見事に転がっていく。こんなことがもう何回も続いていた。さすがにポンBarは心配なのかオロオロして見ている。すると、


すりすりすり


ポンBarの足元に何かが。ポンBarから見るとサザエが置いてあるように見えた。おっきいサザエ。それが動いて足に擦り付いてくる。


『おや、まあ!』


ポンBarが驚いて声を出すとサザエが見上げてきた。おっきな目と太いまつ毛。それに縦長のきらりと光る目。サーメNYANだ。人見知りだがサーメNYANには優しい人を見分ける能力がある。おもむろに


『お腹すいたにゃん♡』


とポンBarにすりすりする。…まるで猫。ポンBarから見るとサザエだが。


『おや、あんたも可愛いね。あの子達のお友達かな?』


サーメNYANがコックリと頷くとポンBarはまだたくさん残っているバタモチ(どれだけ持ってきたの?)を出すと、サーメNYANは少し匂いをクンクン嗅いでからゆっくり首を横に振った。違う方の包みを指差す。


『?これはお茶うけに持ってきたブリガコだけど甘くないよ?』


ポンBarはそう言いつつも包みを解くとマゲッパが出てきた。上下大きさの違うのを合わせて蓋をしてあり、弁当箱の様になっている。マゲッパってこう言う使い方もできるのね。それをサーメNYANに渡す。それをサーメNYANが小さい手で器用に開けると、中からは木の棒?にしか見えない物が何本か横たわっている。よく見るとその木の棒は薄切りにスライスしてあった。サーメNYANはそれをひとつまみ取るとWが丸い形になった様な可愛らしい口で


ポリポリポリ


すると急に目が輝き出す。


『うーまにゃん!♡』


満面の笑み。とっても嬉しそう。すると、頭のドリルの部分が(ポンBarから見るとサザエ)くるくると回り出す。ドリルの部分についていた十二個の粒々が光だし、やがて一つだけ強く光った。あら不思議、サーメNYANの頭の上に立体映像が。…カニ?どう見てもカニ…それもリアルなカニではなくデフォルメされた可愛らしいカニが現れた。するとちっちゃくて可愛かったサーメNYANの腕が両腕ともカニのハサミに。びっくり。ポンBarも目をまんまるにして驚いている。


『あら、まあ!凄いね!』


サーメNYANはそのままタタタ、と三人の方に走っていく。丸っこい小さい足で。そのままカニのハサミで板の両端をつまみ、丸めて輪っか状にしてからそのまま挟んでとめる。凄い。そのままじー、と持ってる。じーぃぃぃと持ってる。…どうやらサーメNYANがやるのはここまでのようだ。それでも三人の顔がパーっと明るくなって、ポンTAはサーメNYANがカニバサミで挟んでいる間にある穴に木の紐を通し出した。これもなかなか難しいみたい。Wooちゃんは丸く切ってある板にのりを塗り出す。ポンGとポンBarもやっと安心して見ていられると木の切り株に腰をかけた。ポンTAとサーメNYAN、Wooちゃんが三人で和気あいあいとマゲッパを作っている。マゴッタはその三人の後ろでダンス。華麗なボックスステップとマゴッタスピンを披露。


『頑張れー!!』 クルクルクル


ポンGとポンBarも手を叩いて喜ぶ。マゴッタも勢いにのってきたらしくスピンしながら大きな円を描いていく。


『出来たー!!♡』  パクッ!


嬉しそうなポンTAの声。…だいぶ出来は悪いが、確かにマゲッパは完成した。三人とも飛び跳ねて嬉しそう。ピョンコピョンコしてる。……しかし三人のいる方とは違う方で変な音が…。何かあったのだろうか?


            *


 Bワグーンは相変わらず陰から様子を窺っていたが、あまりにも空腹。目が回ってきた。そこへきてマゴッタの強烈なスピンを見続けたものだから余計にくらくら。しかし彼は本能で近づいてきたマゴッタ目掛けて…


パクッ!


大きな口を開けてマゴッタを咥える。見事頭から丁度マゴッタのお顔の辺りまで…ていうかマゴッタピンチ!


『ん?』


マゴッタは急に目の前が真っ暗になってキョトンとしてる。しかしその瞬間


『『ぎゃーーー!カライカライカライカライ!!!』』


物凄い悲鳴を上げたのはワグーンだった。目と口から火を噴いて転げ回ってる。何が起こった?ワグーンの口の周りにはオレンジの液体がついている。…どうやらマゴッタの左額についているヤクミに秘密がありそうだ。とにかくマゴッタは助かった…?


バタバタバタ…きゅう…


暴れまわった挙句ワグーンは気絶してしまった。頭から顔までワグーンの唾液でベトベトしているマゴッタも何が起こったかわからなくて呆けている。みんながマゴッタと気絶しているワグーンのそばに寄ってきた。いつの間にかその輪の中にさっき会った鹿のお爺さんもいる。鹿のお爺さんはメガネを支えながらワグーンを指さして


『あー!こいつじゃ、ワシの松茸とったクマは!!』


そう叫ぶとワグーンの体をキョロキョロと見渡す。すると、ワグーンの尻尾を見て、


『あった!わしの松茸!!』


そう言って、ワグーンの尻尾を掴もうとする。するとポンBarが慌てて、


『Cカァ爺さん、それはそのクマの尻尾だよ。また間違えてメガネを反対につけてるね!』


そう言ってCカァ(おしゃれな名前)のツルのない鼻メガネをくるっとひっくり返してつけてあげた。しばしキョトンとするCカァ爺さん。


『あれ、ポンBarじゃないか』


そう言ってキョロキョロ周りを見渡す。どうも鼻メガネでツルがないからこのお爺さん反対向きでかけてしまう事があるらしい。うっかりお爺さんのようだ。


『ありゃりゃ、面目ない』


カァ爺さんは頭をコリコリかきながら赤くなった。可愛い。


          *


ワグーンは意識が戻ってきた。いい匂いがする。ふっと目を覚ますと。


『腹減ってんのか?バタモチ食べる?』


どこまでも優しいポンBar。クマのワグーンは怖くないらしい。…そばに二本鎌を持ったポンGがいるからか?考えすぎか。ワグーンも毒気を抜かれた様な顔をしていたが、甘い匂いの誘惑には勝てずバタモチを食べ出す。モッチャモッチャ。


『おいしーーーい!♡』


そう言ってワグーンは本格的に食べ出す。よっぽどお腹が減っていたのだろう、さくらんぼうのような可愛らしい目をうるうるさせながら食べている。いつの間にか他のみんなもワグーンを囲んでほんわかした目で食べるのを見ていた。ポンBarの風呂敷に入っていた大量のバタモチもワグーンの活躍(?)により綺麗に無くなった。


『ふー、美味しかった♡ごちそうさま』


そう素直にワグーンが言うと申し訳なさそうに話し出した。ワグーンはもっと南の方にあるマクシーフに住んでいたのだが、さらに南の方からやってきたヤツに追い出されてしまったらしい。ワグーンは体は大きいけれどとても臆病なのですぐ逃げ出してしまったのだそうだ。平和主義なのね。


『立ち上がって爪を剥き出しで脅かしてくるんだ、もう怖くて怖くて…』


ワグーンはしょんぼりしながら言う。こうなると体の大きなクマでも可哀想に見えてくる。ポンBarもそう思ったのか、


『んじゃこっちでバタモチ作るの手伝うかい?みんな歳とって餅をついたりこねたりするのがしんどくなってきてねぇ、アンタみたいに力持ちがいると助かるんじゃ。…そうそうニナニうどんを作ってるのも若い者が減って困っていると言っとった。あれも力がいるからの』


ポンBarは世話好きみたいで色々な提案をしてくれる。本当に優しい。ワグーンはしばしキョトンとしていたが、そのうち目がキラキラし出す。


『この美味しいお餅を作るの手伝えるの?』


うんうん、ポンBarが頷く。わあっ!とばかりにみんなが喜ぶ。…取り敢えずワグーンがマゴッタを食べようとしたのは忘れてしまったらしい。マゴッタもすっかり忘れたようでまた得意のボックスステップとマゴッタスピンで場を盛り上げる。するとポンBarが


『そんなハイカラなダンスを見せてもらったんだからこっちもターキアダンスでお返ししなきゃの』


そう言ってポンBarはマゲッパを脱いで手拭いを頭に巻く。それに合わせるようにポンGが懐から竹の笛を出して横向きに咥えて吹き出す。二人とも見事な仕草。すごく手慣れたコンビ。


ピーピーピーヒャララ♬


結構アップテンポでノリノいい曲だ。曲が流れ出すとポンBarはその曲に合わせて手をくねらせながら前後させる。器用。さらにその動作をしながら膝を曲げながら片足だち。しかも上げた方の足も曲げて、そのまま止まったりする。とっても器用。物凄いダンスをみんなの前で披露し出した。


『しゅ、しゅごい!』


マゴッタはかりんとうのような目をまん丸にして大感動。涙目になってる。楽しそうにわちゃわちゃしてるWooちゃんやサーメNYANと違って食い入るようにポンBarのダンスを見る。


『なんて凄いダンスなの。ゆっくり簡単そうに見えて体のバランスの取り方がハンパない。動いている途中でピタッと止まれるの?すごすぎる!』


そのまま魅入られるようにポンBarを見る。ポンBarもギャラリーが沢山いるので乗ってきたようだ。キレッキレのダンスを披露する。ダンス好きのマゴッタは新しいダンスを見ると大興奮してしまうらしい。本当にダンスが好きなのね。


『相変わらずポンBarのターキアダンスは冴えとるの』 ボリンボリン


そうCカァ爺さんがポンBarに声をかける。何かを食べながらダンスショーを見る。すごく贅沢な時間。…が、よく見るとCカァ爺さんが手に持って齧っているのはポンBarが脱いだばかりのマゲッパだった。あらららマゴッタが気付いた。


『Cカァお爺さんそれ違うよ!』


『?とっても美味しいぞ。ワシもだいぶ歯が弱っているんでこのくらいの硬さがちょうどいいの。香りもいいし』


そのままポンBarのマゲッパを全部食べてしまった。……Cカァ爺さんが一番の大食漢かもしれない。


『あらあら、Cカァ爺さんはしょうがないねぇ』


ターキアダンスを踊り終えたポンBarはちょっと困ったような顔をしたが、ふと思いついたと言う表情で出来立てほやほやのポンTAが作ったマゲッパを被る。出来はイマイチのマゲッパだがちょっと得意そう。帽子を食べられちゃっても怒らないなんてほんとポンBarは優しい。するとCカァ爺さんが


『ポンBar、ワシはこれすごく気に入ったぞ♡毎日食べたいから月に三十個作ってくれ。他の鹿の妖精にも教えてあげるから、頑張ってな』


そう興奮したように言う。よっぽどマゲッパを気に入ったらしい。…よくみたらまたメガネが反対のようだ。それでマゲッパを食べちゃったのね。しかしそれを聞いていたポンBarはしばしほけっとしていたが…


キラーーーン!


ポンBarの目が鋭く光った。光った後に目がお金のマーク(¥)になっている。その目がスロットマシーンのように回転!


ガチャガチャガチャガチャ、チーン!!


ビジネスチャーンス!


『今まで月ひとつ売れればいい方だったのに、一人月三十個!十人で月三百個!!百人いたら…』


凄い勢いで頭の中で計算をしだす。さっきまでの優しかったお婆ちゃんの影は微塵も無い。ポンBarの目はずっと¥マークのままだ。


『ポンTA!いつまでチンタラしてるんだい!!ポンGものんびりしてないでマゲッパ作るよ!!!』


鬼の形相で(!)二人を急かしてマゲッパを作り出す。


『『ひぇぇぇ!!』』


あまりの迫力にポンTAとポンGは震えながらも慌ててマゲッパ製作を始める。…こうなった時のポンBarの恐ろしさをよく知っているらしい、凄い勢いで二人とも働き出す。Bワグーンとマゴッタ達三人はそろりそろりと忍び足でその場所を離れる。マゴッタは危険を察知する能力もあるのだ。距離をとってから


ピューーー!


大汗かきながら脱兎のごとくかけ出す。それでもターキアでの思い出はとても楽しいものになったようだ。また次回の冒険も楽しみ。


            *


“マゴッタ”読んでいただけたでょうか?こんな感じで柔らかく呑気なお話を投稿していきたいと思っています。バトルが無い!退屈!と思われる方もたくさんいるかと思います(涙)。自分でも表現が足りないな、とかちょっとこの日本語変だぞ?と思うところもあるので急に加筆したり編集したりするかもしれません。のんびりお付き合いいただければ幸いです。


      kzfactry



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