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そうだ 封印、解こう。

 夕陽が荒れた大地を赤く染め、寂れた街並みを照らし出している。

 旅の魔法使いマクダレーナは、その風景を見つめながら思索にふけっていた。彼女の長い髪は風に揺れ、手には彼女の相棒である杖が握られている。


 生き残った住人の話によれば、この国はかつて豊かさと平和に満ちていたらしい。しかし、数年前に現れた邪竜によってすべてが変わってしまったという。


 古代文明に関する知識を待つ彼女は、遥か昔に「悪しき翼(カカフテラ)」が地底に封印されたという伝承を思い出していた。

 なぜ封印されていたはずの邪竜が今、現れたのだろうか。好奇心に駆られたマクダレーナは、この謎を解明すべく調査を開始した。


 彼女は遺された文献や古い碑文を読み解きながら、真実に迫っていく。

 マクダレーナの目の前には、かつてこの地を守る存在として讃えられた「大いなる翼(イペロハフテラ)」の物語が広がっていた。


 さらに、彼女が元々知識として持っていた「悪しき翼」を封印した伝承に連なる、とある予言について読んだ時、マクダレーナは驚愕の事実を突き止めた。

 

 封印されたのは「大いなる翼」だったのだ。古代の人々は「悪しき翼」の予言を誤って解釈し、邪竜ではなくこの地を守っていた存在を暗い地の底へ封じ込めてしまったのである。


 それを知った瞬間、マクダレーナの心に憐憫の情が広がった。

 そして彼女自身も魔法使いとして迫害され、誤解や偏見によって自由を奪われる苦しみを知っているマクダレーナは「大いなる翼」に親近感を抱いたのだった。


「そうだ、封印を解こう」


 彼女はそう呟き、「大いなる翼」に会う決意を固めると、暗い地底の遺跡へと進んでいった。


 地底深く、湿った空気に包まれた古代の遺跡の中、魔法使いマクダレーナは壁画を前に立ち止まった。そこには複雑な古代文字や魔法陣もまた記されていた。

 彼女は「大いなる翼」の下へ行くために、知識と直感を頼りに壁画を解読し始めた。


 彼女が自分の持つ知識と壁画の内容をもとに古代呪文を唱えると、その声は静かな洞窟に響き、壁に書かれた魔法陣が光り始める。そして壁の一部が音を立てて動き出し、地底の深部へと続く道が開かれた。


 狭い通路を進むと、そこには巨大な空洞が広がっていた。そしてそこには、長い間封印されていた「大いなる翼」が確かに存在していた。


「大いなる翼」は、文字通り巨大な翼を持つ白い大鷲だった。神々しさを感じさせる純白の羽をたたみ、目を閉じて鎮座している。


「人間、今更何をしに来た?」

 

 薄らと目を開いた大いなる翼がマクダレーナに問いかける。その声は、深い響きを持って洞窟の空気を震わせた。


「封印を解こうと思って」


 マクダレーナは物怖じせずにそう答えた。

 大いなる翼の目が大きく開く。その奥には疑いと驚きが入り混じっていた。


「邪竜を倒すためか?誰に依頼された?」

「誰にも頼まれてない」

「邪竜討伐のためでないならば、なんのために封印を解く?」


 大いなる翼はさらに問いかけた。


「いや、封印された経緯に共感しちゃったから助けたいなって。勘違いで封印されるなんて誰だって嫌でしょ」


 マクダレーナの率直すぎる物言いが大いなる翼の耳に届く。しかし彼は不思議と苛立ちや不快感を抱いてはいなかった。

 

 考えてみれば「助けろ」だとか「助けて欲しい」と言われた経験ならばいくらでもあるが「助けたい」と言われたのは初めてだった。

 それに思い至った時、大いなる翼の孤独な心に光が灯った。


「人間、名は何という」

「マクダレーナ。旅の魔法使い」

「我に向かって助けてやるなどと、不遜な人間がいたものだ」


 そう言いながらも、大いなる翼がマクダレーナを見る視線に敵意や猜疑の色はなかった。


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